軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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本人がワーウルフより頭が悪いパターンは想定していなかった。

ワーウルフの変身は魔法的な能力だ。人知を超えたコピー能力は、網膜パターンや指紋などの生体的なものはもちろん、記憶なんかの領域も 模倣(もほう) する。

ただ、人間に対しての攻撃性を維持するためかは知らないが、価値観や思考能力までは真似できない。

ゲームで例えるなら、アバターとステータスはほぼ一緒だが、技・スキル・プレイヤーの手癖なんかに違いが出てくる感じだな。

「つーわけでだ。だいたいは、トロッコ問題みたいな倫理観のテストだったり、数学や理系のような思考力を試す問題を出すんだが……コレじゃあな」

「ううう、すいません」「もっといい感じの問題お願いしますー」「三平方の定理ならまだいけるかもです!」「三平方の定理ってなんだっけ……」「ていへんかけるたかさわるに!」「それだ!」

マジでうるせえ。バカが5人に増えるな。

「よほどお互いのことを理解していないと難しいかもしれませんね……」

トウカが難しい顔をする。

「もしナガに変身されたら、わからない自信あるよ」

スイも不安そうに俺を見る。大丈夫だ、安心しろ。

「そのときは俺同士で殺しあえばいいんだよ。フィジカルじゃなくて小手先で戦うタイプは、ワーウルフに有利を取りやすいからな」

身体能力をコピーできても、戦闘中の思考はワーウルフ基準だ。知識はあれど、目まぐるしく動く戦況の中で、それを活かしきれる知能はワーウルフにはない。

「ヒルネは素の戦闘力はワーウルフより低いだろうから、その方法はとれねぇんだよな。パワーファイターのトウカも同じだ。ワーウルフ自体がパワーあるモンスターだから、力任せの戦い方は上手い」

スイはよくわかんねぇや。妙に思い切りの良さがあるからな。

「あ、いいこと思いついた」

スイが指を立てた。

「お、なんだ?」

「ちょっと1人ずつと話していい?」

「おう」

俺はドローンからツヴァイハンダーをとり、正座させられているヒルネ達の背後に立つ。気分は処刑人だ。

スイが一人一人の耳元で、コソコソと話し、何かメモのようなものを見せる。全員と話し終えたスイは、俺たちの方を向いた。

「わかったか?」

「うん。本物は……」

「ちょっと待て。外れを2体指名しろ」

当たり1人を示せば、それが本当だった場合に、偽物4体が一斉に暴れだす。外れ2体だった場合、残されたワーウルフは「自分はまだバレていない」と望みを持つから、大人しくしている可能性がある。

「これと、これ」

スイが指をさす。同時に、俺は体をひねりながら遠心力を使い、ツヴァイハンダーを振り抜いた。くるりと回転の勢いを乗せながら踏み込み、もう1発。2つの首が 刎(は) ね飛ばされる。

噴き出す血飛沫の中、ヒルネのようだった体がぐにゃりと歪み、毛むくじゃらの狼のそれに変化した。

「ちょっと! もし私が間違えていたらどうするの!?」

「対応ミスったら死ぬのはダンジョンで当たり前だろ。結果として大当たりじゃねぇか」

スイもトウカも目を閉じて首を振った。あり得ないとでも思っているのかもしれないが、思い切りの良さって大事だぞ。

生き残りのヒルネたちはガクガク震えている。

「1:4で違いが出たんなら、そりゃもう正解なんだよ。いいから言っちまえ」

「え、ええと。これとこれ」

スイが言うが早いか、指された2体が短剣を抜きながら立ち上がろうとした。が、胴体ごと斬り捨てた。ツヴァイハンダー、使いやすいな。重さに引っ張られるようにして動いたら、想像以上に早く移動もできるぞ。

大正解だな。地面に崩れ落ちたのは、両断された狼の死体。

「ひ、ひぇ」

半泣きで腰を抜かしているヒルネには悪いが、こういうので「本当に正解なのかなぁ?」だなんて迷っていると、永遠に踏ん切りがつかなくなる。リスクが怖くて慎重にしか判断できないなら、ダンジョンには潜らない方が良い。

「どうやって判別したんだ?」

一応スイに聞いておく。

「ええと」

ちらりとヒルネを見て、少し躊躇いがちに続ける。

「1+1×5は? って。4人が6って答えて、1人だけ10って答えたから……」

「あー、逆にバカ1人を発見したってことか」

「そういうわけじゃ」

そういうことだろ。うっかりさんと言い換えれば良いのか?

ワーウルフと逆方向で知性の差があれば、それはそれで発見できるってことだな。昔の冒険者たちに教えてやりたい知識だ。

「これも 多摩支部長(えまちゃん) 案件か?」

多摩支部:汎用性に欠けますので……。

:馬鹿発見器

:俺もワーウルフに負ける自信あるわ

:ワーウルフ賢すぎんか?

:北京原人怖すぎだろ

:ヒルネちゃん斬るシーンで配信開いて漏らした

:ワーウルフ判別問題集つくるか

汎用性に欠けるといえばそうか。まぁ、パーティーごとに対策を話し合っておけ、くらいしか言えることはないな。

「さて、そんじゃあヒルネ、集落での報告をくれ」

「少々お待ちください。ナガさんは周囲の索敵をしていただけますか?」

なぜかトウカがテントを広げている。こんな開けた危険地帯でテントだなんて、何考えてんだ?

「何も聞かないで。索敵して」

スイにまで強い口調で言われる。トウカがヒルネの体を隠すように抱き起した。

あー。なるほどな?

「ちょっと離れたとこで草でも結んでるわ」

「そうして」

あー、悪いことしたかもしれん。

後悔はしていないが、反省はした。