軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15

「こうなるかな、とは思ってたんだよな。フレッシュゴーレムの討伐に時間をかけすぎると、こうなる」

こいつらは有核種。チマチマのんびり倒しているのは、生き残った 核(コア) に材料を提供し続けてんのと変わらない。時間をかければコアから伸びた触手が肉を取り込み、巨大な1体になってしまう。

「ちなみに理屈は不明だが、フレッシュゴーレムからタルタルゴーレムになると、肉の鮮度がちょっと良くなる」

マジで意味わからねえけど。時間かけてるんだから、悪くなるのが普通だろうが。

バールを軽く振って握り心地を確かめる。ここからはすっぽ抜けとかしている場合じゃないからな。

向こうから距離を詰められる前に、こちらから詰める。

どうせ背後からも同じようなのが来るんだ。少しでも自分たちが使える空間を広く取りたい。

5歩目を大きく踏み込んだ瞬間、 触腕(しょくわん) たちの振動が止まった。射程に入ったな。

槍のように一斉に伸びてきた触腕に、1歩下がる。その全てが俺に当たるギリギリで止まった。ピンと伸びきったところに、バールを振り回しながら突入した。

千切れた肉片が舞い散る。

「よお」

伸ばした触腕をすべて切り落とされたタルタルゴーレムの目の前でジャンプ。カタツムリ頭に飛び乗った。

有核種は自由自在に動ける。体のパーツだって無限に補充できる。だがな。核と、核から生えている《《触手の総量》》は変わらない。

カタツムリ頭を蹴って宙に舞う。思いっきりバールを振りかぶり、全体重を乗せて甲殻に叩きつけた。骨が砕け、血しぶきが飛ぶ。

核はこの中、命に直接関わってくる一撃。

カタツムリを形作っていた肉が一気に力を失い、ぐずぐずのひき肉になる。そのかわりに、甲殻の隙間から大量の触腕が生えた。

「そうだよなぁ! 恐怖したときほど生き物は攻撃的になる!」

そして、攻撃的になったときに隙は生まれる。

バックステップで触腕の 槍衾(やりぶすま) を軽々と回避。再度、それを 搔(か) い 潜(くぐ) りながら打ち払った。

さらに削られる《《触手》》。

びちゃびちゃと音を立て、甲殻の隙間から赤黒い液体が噴き出した。

ずいぶんと小さくなった甲殻がぴっちりと噛み合い、直径1メートルくらいまで縮んだ。

損切りしてコンパクトに手堅く守りに入る。投資家なら1流の選択肢かもしれねえが――長所を捨てるのは悪手だろ。

バールを前後逆に持ち替えて、深く突き刺した。人骨ごときの耐久で、バールの刺突は防げねえよ。

狙い 過(あやま) たず、核を砕いた感触。ついにタルタルゴーレムは崩壊した。

ひよっこに任せて楽しようと思っていたのに、結局一番汚れたのが俺だ。ついてねえな。

「よーし、お代わりが来る前にさっさと階段行くぞ!」

「うす、兄貴!」

「なんだそりゃ」

俺が小走りで移動開始すると、ひよっこたちも足が汚れるのを 厭(いと) わず、ばちゃばちゃと血肉を踏みながら走ってついてきた。

「兄貴、マジで強いっすね! 2級とか3級レベルはあるんじゃないっすか!?」

「手りゅう弾1個あれば、陸自隊員は全員同じこと出来るぞ」

夢もロマンもないかもしれないが、そんなもんだ。だというのに、なぜか2人とも目をキラキラと輝かせている。

「人間の手足で手りゅう弾と同じことが出来るって考えたらすごいですよ!」

真っすぐ褒められると妙に照れくさい。俺は「そうか」とだけ返した。

それからは適当にひよっこを戦わせたり、手こずるようなら俺が戦ったりしながら、地下15階層まで下りていった。モンスターを倒すたびに振り返る蓮君は、ここまでに4発殴られている。

15階層は拠点を根城に探索する奴らが多いのか、モンスターの姿はない。さっさと拠点に行く。

ダンジョン内に現れた人間の防衛設備に、ひよっこ達は表情を明るくした。初めて見たときはテンション上がるよな。わかるぞ。

見張りをしていた探索者が血みどろの俺たちを見て眉をひそめた。

「フレッシュゴーレムか?」

「そんなところだ」

「もう少し綺麗に仕留められるようになるまで、上の階層で練習した方がいいぞ」

「そうだな。俺もそう思う」

「おい、兄貴はタルタルゴーレムをなぁ!」

俺は噛みつこうとした蓮君を、ビンタで黙らせる。おいおい、ビンタに慣れ過ぎて、自分で頭振って衝撃逃がしたぞ、こいつ。変なところで運動神経いいな。

「純粋な好意で言ってくれてんだ。忠告は素直に受け取れ。事実、お前らの火力が足りねぇせいで、特殊行動起こしてんだぞ」

「うす……すみませんでした」

「お、おう。なんだ、新人の教育でもしていたのか」

「そんなところだ」

そういえば、なんで俺は飯食いにダンジョンに潜ってひよっこの引率してるんだ?

絶対にここの拠点で捨てていこう。ここから先は飛び道具を使ってくるモンスターも少なくない。俺が前衛を張ってやっても、そのうちひょっこり死ぬ。

拠点の中に入ると、ベンチで休んでいる少女たちがいた。見覚えのある装備。あれは――。

「あ、え、あああああ! ナガさん!?」

「よお、久しぶり。スイ」

「え、釈放って、え、 柳(やなぎ) 君に鈴木君!? なんで!?」

俺を指さして悲鳴のような声をあげる。そんな、夜道でピエロに会ったようなリアクションとらなくても。

「あ、あはは、色々あって」

頭を掻いて誤魔化すようなことを言う康太君。対照的に、 蓮君(バカ) はドヤ顔で胸を張った。

「兄貴には弟子入りしたんだ。これで俺たちもあっという間に強くなって、佐藤のこと追い抜いてやるからな!」

バカの後頭部を 叩(はた) く。ぱこーんと頭が前に行き、自動で頭を下げる形になった。

「弟子入りは許可した覚えはないし、お前らはここで休んだら帰れ」

「そ、そんなぁ」

「こいつらが上でコボルトにも苦戦してたからな。ちょっと《《お話》》したら、ここまでついて来たんだよ。ここまでは面倒見てやったが、この先は見きれねぇ。間違いなく死ぬから、ここでお別れ確定だ」

スイとその仲間たちは戸惑っている様子だ。

「大変お世話になりました。おっしゃる通りです。僕らはここで引き返します」

康太君は深々と頭を下げ、馬鹿を連れてシャワー室に向かった。

改めてスイと、他2人の少女に向き直る。