軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百三十六話 闇の賢人無双

「さあ、行こうぜ皆! 古よりこういう言葉がある! ワンフォーオール・オールフォーワン! オレたちの力が合わされば怖いものなんてねーさ、ひはははははははは!」

とても爽やかな笑み浮かべるも、この場にいる誰一人としてその男の言葉を信用できない。

「「「「「「「…………………………」」」」」」」

その言葉に、世界に轟く新星や、歴史に名を残す伝説たちも同じ顔をして絶句している。

そして、数秒の沈黙の後……

「な、なんで、お、お前が……」

アースが震える口でそう言い始めた直後……

「「「「「なんで、お前がここに居るんだぁ嗚呼ああああああああ!!!???」」」」」

と、一斉に叫んだ。

「ちょ、なんで、パリピが! 実物!? 本物!? お兄ちゃん、こいつぶっとばしちゃっていい!?」

「お兄さん、下がって! お兄さんに近寄らせないぞ!」

「わ、あ、っ、パリピ! 何故ここにいるのです! お母さんにもアースにも手出しさせません! あと、鑑賞会のアレ、ください!」

「クロン様、私の後ろに……そして、殺してやる! 殺してやるぞ、パリピッ!」

「んあぁあああああ、来たのん来たのん、おっかないのが来たのん!?」

「わわ、鑑賞会で出てきたパリピって人だ……アース様とすごい戦いをした……本当にアース様の子分になったんだ……」

「いやいや、アミクス、そのようにワクワクした目をするな……。小生すら手に汗を握っている……伝説の六覇、パリピ大将軍……」

「パリピ……き、君は何食わぬ顔で何故ここに……僕たち天空族を……ダディを……何をしたか、忘れたのかい?」

「うおぉ……婚活中のわっちでも、テメエだけは死んでもお断りなクソ野郎じゃねえかぁぁあああ!」

エスピが、スレイヤが、クロンが、ヤミディレが、ヒルアが、アミクスが、ラルウァイフが、ガアルが、ドクシングルが大騒ぎし……

「なんや、おどれらは繋がって連携しとったわけやないんか……」

「ウキー、アースの子分になったからてっきり作戦で別行動だと思ってた……」

「……おのれ……闇の賢人……」

一方で、パリピが暗躍していることを知っていたタツミヤやゴクウはアースたちの反応を意外な様子で、オツに関しては憎々しい目で睨んでいる。

いずれにせよ、この場の誰からも評判最悪の存在がこうして現れたのである。

「パリピ……テメエ……よくも今まで……」

「ん? どうしたんだよ、ボス~」

「どうしたもこうしたもあるか! あの鑑賞会……よくも人を世界の晒し物にしやがったなぁ!」

「ひははははは、何言ってんだ。ボスの伝説を世界が知らない……そんなの勿体ねーじゃ~ん?」

アースがパリピに詰め寄る。色々と言うべきことはあるが、まずはソレである。

この数日の間に起こった、世界全土、魔界も天空世界も巻き込んでの同時鑑賞会。

アースの戦いや出会いや別れの全てを世界中に流した行為。

それは、アースにとっては知られたくないものや恥ずかしいことも含めて流されたこともあり、のたうち回りたくなるようなものだった。

しかし、パリピは当然悪びれない。

「ひはははは、でもそのおかげでもう世界の誰もが言わないだろ~?」

「ああ?」

「ボスのことを……流石は勇者の息子って♪」

「ッ!? 大きなお世話だこの野郎ッ! ぶっとばすぅううううう!」

右拳を繰り出すアース。ただ、そんな感情任せの雑なパンチがパリピに当たるわけもなく、笑いながら高速の動きでその場から離脱。

「お兄ちゃん、私も手伝うよ!」

そこでエスピも飛び出す。

かつて、七勇者と六覇という宿敵同士。

過去の因縁も交えてここでケリをつけてやるという勢いで、エスピが力を振るおうとする。

しかし……

「おーっと、エスピ~……ひははははは、その思い出のリボン、まだ大事にしてくれてるんだな~?」

「ぬっ……」

攻撃を受ける前に、パリピはエスピに笑う。

その発せられた言葉に、エスピも思わず停止し……

「大好きなお兄ちゃんからもらったそのリボン……実際は~、俺からボスにあげたリボンだったんだよね~、つまり俺からあげたリボンを七勇者のエスピが大事にしてくれてるとは嬉しいね~」

「ッッッ!!!???」

エスピの生涯の思い出、アースとの絆の証として十数年以上も大事にしていた自分の宝。

ただ、その真相は……

「ぬわあああああ、やめてええええ、私の思い出ッをおおおおお、うわああああああん、くううう、でもこのリボンはお兄ちゃんとのぉお、うわあああん!」

鑑賞会で明かされた真実。

パリピの精神攻撃にエスピは頭を押さえて、その場で泣きじゃくってしまった。

「エスピィィ、何やられてんだよぉ、お前は!?」

「まったくエスピは……だが僕が居る! お兄さん、安心して! 役に立たないエスピに変わって、僕が――――」

そんなエスピを舌打ちしながら、今度はスレイヤが前へ出ようとする。

だが、パリピはすぐに反応して……

「おお、初めましてスレイヤ君……ボスの弟にしてボスとの最強コンビを披露する男」

「ッ、え……ッ、何を……僕とお兄さんが最強なのは分かり切ったこと」

初対面の二人。パリピの分かりやすいお世辞……なのだが、クールな顔しながらもスレイヤも満更でもない様子。

「ふふふふ、そんな君にお近づきの印を……」

「お近づき? 君のような人から何も受け取る気は……こ、これは?!」

「ふふふ……正義のヒーロー・ラガーンマンの変身セット!」

それは、大戦期の連合騎士の一部が被っていた漆黒のヘルムと漆黒のマント。

だが、それこそがスレイヤの憧れた正義のヒーローのアイテムである。

ジャポーネでゴクウとの茶番をしたときに被っていたような、代用品のヘルムではない。

かつての大戦が終戦してからは、連合軍専用の全く同じヘルムは製造されていなかったのだが、パリピが差し出したのは当時の大戦で使用されていた、ラガーンマン初登場時に被っていた黒ヘルムと同じ型式のものであり、それなりに今は希少となっている。

そのため、スレイヤも流石に反応した。

「ぐわ、あ、ラガーンマンの……グッズが……」

「さらに、ラガーンマンバージョン2に向けて、さっき君とボスが色々と装備を考えていたが……こういうのはどうだい? ドラゴン、悪魔の骨のような形に象った、ボーンマスクというものがあってだねえ……」

「ぬっ、これは彫刻で頭蓋骨のレプリカを……し、しかし、たしかにカッコいい……種類も豊富……な、悩ましい」

「さらに、彫るわけでも刻むわけでもない、付け外し簡単なタトゥーシールというものもあってだね……」

「タトゥーの……ぬっ、この紋様、ああ、こっちも……付け外し簡単……この紋様もそそられ……いや、そんなことで僕は揺るがないぞ!」

懐かしのアイテムや、新しいグッズを前にスレイヤも少し揺らぎかけたが、精神力で跳ねのけて、パリピへの敵意を再び抱く。

だが、そんなスレイヤに追い打ち駆けるかのように、パリピはボソッと……

「……ラガーンマン2号……」

「え……」

「伝説のヒーローラガーンマン……その相棒の2号……新時代にはそういうのがあってもいいんじゃない? しかし、そうなると2号は誰に……ん? おやぁ? オレの目の前には、ボスと組めば最強コンビを披露する男が!」

「ッ!? ぼ、僕が……僕が……ラガーンマン2号?」

スレイヤのセンスの琴線に触れ、さらにはラガーンマン2号というスレイヤが考えてもいなかったアイディアが出てきたことで、スレイヤは震える。

「おーい、スレイヤァ! お前も何をやってんだよぉ!」

「わぁ、兄さんがラガーンマン2号でアース様ことラガーンマンと……すごい! 見てみたい!」

パリピの口車で行動停止するスレイヤに、アースも叫ぶがスレイヤの耳には届かない。

アミクスはノンキに興奮。

すると……

「むぅ……お二人をどうにかしたって、アースを守る人はたくさんいます! 私もいるのです!」

「おやァ? クロンちゃん……ひはははは、ご機嫌よ~」

今度は勇敢にもクロンが……

「もう、天空世界の時の私とは違います! 今の私は―――――」

「クロンちゃん、ほら、この魔水晶を見て? これには鑑賞会で流した映像を編集して切り抜いている、切り抜き動画を記録している」

「はい? ドーガ?」

「ここに、ボスのカッコいい名シーン……クロンちゃんとボスのラブラブなシーンも―――」

「キャーッ、もう一度見たいと思っていたアースの雄姿なのですぅ! わ、それに、私とアースが手を繋いでバサラに……きゃ~、こ、これ、もらっていいんですか?」

「もちろん。だって、ボスのお嫁さんなんだから」

「わ、嬉しいです! これでいつでも何度でも……♥ うんうん、パリピはどうやら心を入れ替えてイイ人になったようなのです!」

クロンは秒殺された……

「クローン! お、お前、こいつがイイ人になったわけねーだろうがァ!」

「その通りですクロン様……やれやれ……クロン様を誑かすとは……万死!」

だが、ここにはまだ頼もしい存在がいる。

それこそ、かつてパリピと肩を並べた……

「パリピ……この外道が」

「ひはははは、ヤミディレの姐御、力を取り戻したようで何よりだね~」

「ダマレ。天空世界の時は手を出せなかったが、今は違う。クロン様に悪影響を与えると判断し、貴様を殺す」

そう、同じ六覇のヤミディレが力を取り戻した状態でこの場にいるのだ。

そして、かつての仲間とは思えぬほどの殺意。さらには怒気も剥き出しにして、ヤミディレが前へ出る。

「アレぇ? 姐御……なーんか、怒ってる?」

「怒ってる? 殺したいだけだ」

「……ひは! あー、なるほどなるほど……!」

ヤミディレから溢れる怒り。それはクロンに悪影響を及ぼすとか、天空世界でのいざこざでの恨みというだけの理由ではないとパリピには分かっていた。

そしてわざとらしく「なるほど~」と手を叩きながら、懐からまた魔水晶を取り出して……

「ひょっとして、コレ……怒ってる?」

「なに?」

その魔水晶には……

『ヤミディレ! あんた……てーそーたいから……●●●がハミ出てるぞ!!』

『ひゃっ!? きゃっ。え? なななな、んななああ、え?』

かつて、アースとヤミディレが初めて戦った時、アースの心理戦でヤミディレを動揺させたシーン。

そのとき、ヤミディレの貞操帯をドアップにして、ヤミディレが慌てて恥ずかしがる様子を世界中に流したパリピ。

さらに、そのときはそのシーンを色んな角度から何回も繰り返し流したのである。

そんなヤミディレの怒りは……

「ゴロ゛ジデヤ゛ル゛! 殺してやるぞぉおお、このビチクソめがぁぁああああ!!!!」

もはや娘がいるとは思えぬほどの魔人の形相となってパリピを惨殺しようとする。

が……

「ひはははは、姐御、こいつをお納めしてくれよ~」

「聞く耳持た……ッッッ!!??」

そのとき、パリピが跪き、これまた懐から取り出した何かをヤミディレに献上するような形で差し出した。

白い布に包まれた何か。

その布を解くと、中から一振りの刃……いや……

『なっ!? ちょ、ちょっと待て! あ、あれは……』

「え? ……ど、どうした?」

なんと、ソレに真っ先に反応したのはトレイナだった。

トレイナは両目を大きく見開いて驚き……

『あれは余の……マジカルシェフナイフ!』

「ま、マジカル……ナイフ?」

『そう、包丁だ』

「は?」

『余が趣味で料理をしていたときに使っていたもの……それこそカリーの野菜だってアレで……』

「そ、そうなのか? だ、大魔王の包丁……それってメチャクチャ貴重なんじゃ……」

『うーむ、あやつ……どこでアレを? 崩壊したかつての魔王城の瓦礫の中から見つけでもしたのか?』

トレイナが「ぐぬぬぬ」という様子でパリピを睨む。

まさかのかつてのトレイナが使っていた遺品。それをパリピがどうして持っているのかは不明だが、いずれにせよ……

「こ、これは……間違いない……私はかつて、あの御方にカリーを振舞われたとき……見たことがある。あの御方がこの包丁で……」

先ほどまでの怒りの魔人の形相は消え失せる。

ソレが何なのか。そしてソレが本物だということを、トレイナの信奉者でもあるヤミディレが分からないはずがない。

ヤミディレは全身を震わせながらパリピからソレを受け取り……

「もはや使い手のいなくなった包丁。どこかに祀るか博物館にでも展示するかしか使い道のないものだが、使ってやった方があの方は喜ぶだろう。しかし、料理をしないオレが持っていても仕方ないので、ここは将来は娘と婿と、あとは~、生まれてくる孫と一緒にカリー店を営むであろう姐御が持っているのがいいと思ってなー! そして、いつの日かその包丁を成長したクロンちゃんに、孫に、そうやって代々受け継がれていく限り……」

「ッ……あ……嗚呼……」

「あの御方は死なない。あの御方の魂や想いは世代を渡って受け継がれるんだよ、姐御!」

「う、ううう、ああああああ」

愛する存在を亡くした者が、その遺品を抱きしめて涙するというただの乙女になり、ヤミディレも戦意喪失……

『ぬうう、パリピめ……余の愛包丁を勝手に……いや、まあ確かに誰かに大事に使ってもらう方が余としても嬉しいが……ぬう』

「いや、ソレよりも何よりもまず……」

複雑そうなトレイナ。

一方でアースは、のたうち回るエスピ、懐柔されたスレイヤ、クロン、ヤミディレを目の当たりにし、そしてそんな状況下でパリピはアースに向かって……

「てへぺろ♪」

舌出してバカにするかのように笑った。

その瞬間、アースも頭を抱えて……

「だあああ、お前らぁああああ、全員まとめて秒殺されてんじゃねえよぉお!!!!」

ふがいない一同に嘆いたのだった。