軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百三十五話 参戦者続出

「い、いや、待て待て、クロン。流石にアブねーよ。いや、俺らも勝つ気満々ではあるけど、お前に何かあったら―――」

「行きます」

「いや、だ、だから―――」

「私もアースの故郷を守ります」

「い、いやいや、別に守るとかそういうとこでもなくて、ほら、俺はけっこう故郷の奴らにムカついてるし―――」

「でも、それでもアースが生まれてアースが育った地です。アースの原点を私も見たいし、守りたいのです」

クロンの参戦宣言はアースを慌てさせるが、一歩も引かない。

だが、さすがにこれはヤミディレも血相を変えて止めに入る。

「ななな、なにを仰るのですか、クロン様! いくら何でも危険すぎます! ドクシングルの言っていることが本当なら、相手はハクキ率いる精鋭中の伝説的な猛者たちですぞ! もともと、ハクキは暁光眼を狙っていました……そんなところにクロン様が行ってしまえば……」

それはもはや誰がどう見ても、愛する娘を危険な目に合わせてはならないという母の想いが滲み出ての言葉だ。

だが、その愛する娘は母が思うよりもずっと逞しくなっている。

「だからこそ、そんな危険なところに、ましてやアースの故郷の危機に駆け付けないなど、お嫁さんになる身としてはありえないことなのです」

「ク、クロン様……」

「私は夫が外に仕事に出ているのをお家でお留守番しているだけの妻にはなりません。隣に並び立つものとして相応しくありたいのです」

クロンは胸張って「ふん、ふん」と、ドンドン気合が入っている様子。

こうなってはもうどうしようもないと理解してしまったヤミディレは……

「仕方ありませんね……」

「お母さん?」

「はぁ……この私が……かつて六覇と言われて人類滅亡のために戦ったこの私が……まさか帝国を守るために戦うことになるとは……」

「お母さん!」

ヤミディレは溜息吐きながら、観念したように頷いた。

「どちらにせよ、ハクキが存在する限りクロン様の身に対する懸念は消えぬ……それに、クロン様の夫となる男をもし死なせてしまったら、私も孫を抱けな―――ごほん、御子様! 御子様! 御子様も誕生せず、クロン様も未亡人になってしまうので、ここは私もアース・ラガンに力を貸すこととしましょう」

「お母さんっ!」

クロンが行くのなら、当然行くしかないということで、ヤミディレも参戦宣言。

すると……

「師範も妹分も行くんだ……当然、手ぇ貸すぜ、兄弟!」

こちらも当然とばかりにブロも。

「絶好の機会じゃないか、坊や」

「え?」

「かつて、僕たち天空世界を救ってくれた君への恩……それを返す日がついに来たということだ」

「ガ、ガアル、おまっ?!」

改造された父を背負いながら、好戦的な笑みを浮かべる天空王子のガアルも前へ出た。

「僕も行こうじゃないか!」

「ま、まじか?」

そう、かつてアースたちの手によって、パリピの手から天空世界を救ってもらったガアルはその恩を返せるこの機に名乗り出ないわけがなかった。

さらに、

「アース様の故郷か~、行こうよお、ラル先生」

「い、や、いやいや、待てアミクス! さすがにお前は足手まといに……」

「やだ~、行こうよ~、先生! 兄さんと姉さんだけ行くのずるいよ……そりゃ、住んでる人たちは嫌いだけど、それでもアース様の故郷だもん」

「し、しかし……」

「それに~、どうせなら、アース様にさ、例のアカさんと過ごした思い出の場所でも紹介してもらおうよ~」

「ふぁ、ば、あ、ばか、お前、な、何を……」

まるで緊張感なく、遊びに行くような感覚のお気楽なアミクスもラルウァイフを連れて無理やり行く気満々。

「は、なんや……そないな面白そうな祭りがあったんかい……ハクキか……ええやんか」

「よし、アース! 結構迷惑かけちまったし、友達として手助けするぜ!」

と、ボロボロのタツミヤとゴクウは何やら面白そうに笑みを浮かべる。

「……い、いやいや、お前ら……一応親父たちとかが居るんだし、さすがに戦力過多というか、もうここまでくると、ハクキの方が可哀想じゃねえか?」

当初は、アース、エスピ、スレイヤだけで行くと考えていたところ、クロンの名乗りから次から次へと伝説たちが参戦を表明してきた。

ここまでくると、アースも引いてしまう。

さらに……

「ちょ、てめえら、一応な~、わっちは鬼天烈の鬼でよぉ、そんなわっちの前で―――」

立場上はハクキの部下であり、まさにこれからアースたちが戦う敵の幹部でもあるドクシングルは怒りの形相を……

「まあまあ、鬼のお姉さん、それよりもホレ。駆けつけてきた労働者諸君の中によ、ほれ、あいつもあいつも……まだ独身だぜ?」

「っっ!?」

「ほら、アレも、アレも、おお、あのイケメンも……彼女、いないっぽいぜ?」

「まぢ!」

「ひはははは、まぢ。ほれ、これは労働者諸君の経歴書。現場事務所にあったんでパクってきた。婚活用の参考資料としてどうぞ」

そのとき、一人の男がドクシングルに近寄って耳打ち。

クロンを救うために船に乗って駆け付けた現場作業員の男たち。面構えも含めて誰もが男らしく、ドクシングルにとってはどれも目移りしてしまうような連中。

その中には、当然既婚者もいるのだが、独身のものや、恋人がいない男も多数いる。そんなもの、ドクシングルからすれば肉食動物のいる草原を全身にバターを塗って歩くようなもの。

「……ほんとか?」

「おう。ただし、無理やりは駄目だぜ? ちゃーんと口説いて親密な関係を築くならいいと思うぜ? いや……むしろ、無理やりもアリだ」

「……どういうこと?」

「わかんねーか? 今この場にいる大戦力たちは帝国へ向かう。逆にあんたがここに残ったらどうなる? あんたが男たちを食い荒らしても、誰も止められない。ひははははは、食い放題♪」

「く、食い放題……ざ、ざけん……わ、わっちは一応、誇り高き鬼天烈の一人で、それこそ太古の時代から人類と戦ってきて、それで――――」

「死ぬかもしれない戦いに身を投じるか、それとも逆ハーレムで男食い放題、結婚選び放題の今を捨てるか? つか、このメンツに挑んで勝てる? むしろ君が敵になるなら、今この場でフルボッコだよ?」

「うっ……」

このまま戦争に参戦して、アースたちと敵対する道を選ぶか、それともこの地に残って婚活をすることを選ぶか……

「……それに、このナンゴーク……実はあんたにとってもスゲー都合がいいんだぜ?」

「え、ど、どういうことだよ……」

「そこにいるマルハーゲンと、あんたの戦友のショジョヴィーチ……異種族同士の結婚、子育ても問題なく……これって実はこの世界では相当レアな環境だぜ?」

「……た、たしかに……」

「もし、参戦しないというのであれば、あのジジイは元帝国兵士……故郷を襲わないという選択をしたお前には、土地を与えて暮らせるようにしてくれるだろ? それこそ、そこの男どもの中の誰かと結婚すれば、新居も―――」

「なに?」

「マルハーゲンの娘たちも半魔族。この地は魔族も亜人も人間も差別はない……子供を育てるにも適してるぞ?」

「っ、こ、子供! わ、わっちがママに!」

それがもはやトドメとなった。

鬼天烈の一人でもある伝説の女魔戦士であるドクシングルは、女としての幸せに傾いてしまった。

「わ、分かった、わっちは……わっちはこの地に残る」

「ひははははははは、おう、幸せになれよ」

と、そこでドクシングルと、その説得に回った男は握手を……

「え?」

「「「「「「「「「「っっっっっっ!!!???」」」」」」」」」」

その瞬間、その場にいた全員の時が止まった。

それは、戦力過多と同時に、「伝説の存在」、「世界最強クラスたち」の存在過多すぎるという本来ならあり得ない濃すぎる環境下だったからこそ、何の前触れもなかったからこそ、皆も普通に気付くのが遅れ、その男も普通にいつの間にか溶け込んでいた。

だが、気づいた瞬間誰もがハッとし、顔を歪め、そして距離を離し……

「て、て、テメエ!? ちょ、な、い、いつの間に、な、なんで……何で!」

「ひはははは、ボス、交渉成立。鬼天烈の一人はここでバイバイ。敵の戦力も削ったことだし、じゃ、行こうぜ、ひははははははははは!」

伝説の鬼をアッサリと懐柔した、伝説の悪魔が……

「ひははははは、それにしてもぉ……エスピは久々、スレイヤくんは直では初めまして、ヤミディレの姐御とクロンちゃんは御無沙汰……えっと、翼の生えた天空族の君たちは誰だっけえ? ひははははは、あとは猿だの竜だの、いい年こいてヒステリック婆姫だのの畜生ども……おひさ~♪」

いつの間にか、当たり前のようにそこにいた。