軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百三十三話 一件落着?

「ワイは……ッ!?」

意識が戻り、視界に広がるのは青い空。

一瞬状況が理解できなかったが、すぐにハッとして体を起こして身構えるタツミヤ。

だが、そこにはもう完全に戦闘態勢を解いてリラックスするアースたち。

「よぉ」

「……オドレ……そうか……」

アースを見て色々と思い出すタツミヤ。

「負けたんやったな……ワイは。いや、勝負すらさせてもらえんかったか?」

起きて意識が戻り、同時に体に刻まれた痛み屈辱を実感しながら、タツミヤは切なそうに苦笑する。

「勝負はしたろーが。お前の望む形ではなかったけどな」

「ちゃうやろ。全ッ然歯が立たんかったやないかい」

「どこか! 見てみろよ、頭割れるは拳もイテーはで散々だったよ」

後先考えない、ただ馬鹿になってお互い全力で正面から殴り合う熱い戦いがしたい……というタツミヤをあしらったアース。

とはいえ、アース自身もちゃんとそれなりに怪我をしており、今も治療を受けている。

タツミヤがどう思おうと、アースもタツミヤの天然に備わっていた才能のようなものにはウンザリさせられていたこともあり、別に全く楽勝だったわけではなかったのだ。

しかし、それでも屈辱はタツミヤの方が大きかった。

「なんやショックやなぁ……ゴウダも、アオニーも……せやせや、バサラも……そこのクロンの嬢ちゃんと二人でバサラに立ち向かってた時……アレも熱かった……今よりずっと弱かったが、バサラはホンマに楽しそうやった……ワイだけ仲間外れや」

天空世界へ殴り込むときに、アースがクロンと一緒にバサラを召喚して立ち向かった時の話。

かつて、バサラとも喧嘩していたというタツミヤにとっては「そういうのを自分もやりたかった」という気持ちだったのだろう。

だが、

「そう言うなよ。あんたに対して勝ち方にこだわらなかった……言ってみれば、なりふり構わず勝ちたかったということで、あんたはあんたで俺にとって特別だった……そういう解釈で納得してくれよ」

「……はっ、物は言いようやな」

アースの屁理屈だった。だが、それでもアースなりにタツミヤは強かったという称賛している言葉であり、今のタツミヤにはこれ以上を得ることはできなかった。

「まあ、ええ。次こそや」

「あ?」

「オドレが男として、ワイと男比べの殴り合いをしたいと思えるように、どーにかするわ」

「いやいやいやいや、勘弁してくれ。俺をターゲットにするんじゃなくて、他にもツエーのいるんだから、バサラとかハクキとかそこら辺と殴り合ってろよ」

この場はもうこれ以上戦う気はないという空気を出しながらも、まだこれからもアースに挑みに行くというような口ぶりのタツミヤに、アースはほとほと迷惑そうな顔をして拒否しようとしていた。

だが、タツミヤはそれを楽しみにすることに決めたかのように勝手に笑い、そして……

「せやから、オツ。仕切り直ししようや」

「ッ……」

「いつまでイジメられて泣いとるんやないでぇ? 負けは負け。さっさとこいつらに返すもん返して詫び入れようや」

タツミヤがそう言うと、これまで蹲って無言だったオツが体を震わせた。

あらゆる手が潰され、さらにはヤミディレ、エスピ、スレイヤにプレッシャーをかけられ、そしてトドメに恋する幸せいっぱいなクロンの純粋な姿を見せつけられた。

戦力となる味方も既に白旗を上げている現状、オツにはもうどうすることもできないのは明白だった。

そんな中で……

「ちょっと待て。返すもん……って、別に俺らは取られたもんなんてねーぞ?」

そう、もともとアースたちがジャポーネからここまで駆け付けたのは、クロンの危機を救うため。

ソレが叶った以上は

「ん? そんなことないやろ。ほれ、ヨーセイとか、ジャポーネとかべトレイアルの国王―――」

「ああ、それはいらんいらん……って言っていいのか? 放置していいんだっけ?」

そう、 深海族たちは自分たちの技術を使って、かつての愛した者たちとの再会に利用しようとした。

そのため、ソレに必要な素材として各地から人材を攫った。

だが、その攫われた素材自体はアースの大切な存在……というわけではない。

だから、攫われていたソレら事態についてはアースはあまり頭になく、どういうものだったかと皆の反応を伺った。

すると……

「あー、私はべトレイアルの国王とかどーでもいいや」

「ジャポーネの件は正直攫われた国王が居ない方がまとまるんじゃないかな? シノブたちに聞いてみたらどうだい?」

と、エスピは即拒否し、スレイヤも特に答えを持ち合わせていなかった。

すると……

「天空王のハゲはガアルに任せればよいだろう……今は色々と話をしていることだろう……あのハゲがそれでももう天空世界に戻る気はないのであればそれでも構わん……だが……」

アースに回復魔法を駆使して治療していたヤミディレが、攫われた者たちをどうすればいいのかについて、クロンに危害を加える存在は全て許さないがモットーのヤミディレが珍しく……

「ヨーセイたちについてはどうにかならんか?」

と、どこか慈悲深く、切なそうに問いかけた。

「お母さん……」

「おいおいおいおい、まさにあの余計に変になっちまった野郎を、あんたが今更救おうとしてんのか?」

ヤミディレの言葉を意外に思ったのか、クロンも、そしてアースも驚いた顔を浮かべた。

すると、ヤミディレは……

「各国の王族連中……攫われたというよりは、自己判断で改造を受け入れたようだ……たとえそれが贄になるために言いくるめられたものであろうと、そんなものいい大人が騙される方が悪い。だが……言い包められたのが……まだ若い子供だったら……言い包められたというより、『それ以外』の選択肢がなかったもの……それ以外の選択肢がないほどに追い詰められ、その元凶が私だった場合……」

それは、ヤミディレなりに今の堕ちたヨーセイに対しての負い目を感じていることが原因だった。

それまではクロンのため、そして歪んだ野望のためにヨーセイを利用しようとし、その身を野望のために改造し、しかしアースという存在を知った後は興味を失せて放置し、その後は壊れようがどうしようが放置していた。

だが、今のクロンとの幸せな日々を甘受するうちに、自分がかつて一人の少年にしてしまったことを思うようになり、今のヨーセイが自分の所為であるということを認識し、だからこそどうにかできるのならばと考えるようになっていた。

「あー……あの五人の嬢ちゃんと来たっちゅう……オツどないやねん?」

タツミヤもあまりそこの詳細は分かっていないようで、蹲っているオツに振る。だが、オツは……

「……無理だ。人間を改造することはできても、改造した人間を元の構造をする技術までは……」

「……そうか……」

と否定し、ヤミディレもそこは何となく予想していたようで、溜息を吐いた。

「……そうなると……治すなら……あの『医者』を探すしかないか……」

ただ、そう呟いて、何か別の手段を取ろうとしている空気を放っていた。

だが、それをアースたちが深く追求することはできなかった。

何故なら――――

「アース様~~~! いたー! きゃー、アース様ぁ~! 兄さんも姉さんも~、おーい!」

「「「「おっ」」」」

ゲンブの背に乗る一同。

それは、ただ漂っていたわけではない。

同じ時間帯に深海族たちがナンゴークを襲撃していた。既にヤミディレが事前に力づくで解決したこともあり、皆無事だというのは分かっているが、それでも迎えに行ってその目で確かめるまではということもあり……

「アミクス~! 怪我無い~!」

「アミクスッ! どこも痛いところないかい? 体、大丈夫かい?」

浜辺からアースたちに向かってバルンバルンブルンブルン激しくアレを揺らしながら飛び跳ねているアミクス。

アミクスの兄姉を自称しているエスピとスレイヤは同時にゲンブの背から飛び降りて、アミクスへと飛んでいき、心底心配したように抱きしめて体中を確かめていく。

「もぉ、姉さんも兄さんも大丈夫だよ~。みんなで力を合わせて、途中から……ヤミディレさんがすっごく強すぎて相手が気の毒だったけど……」

照れ臭そうにしながら無事をアピールするアミクス。

すると、その後ろには……

「そちらも無事で何より……まぁ、アース・ラガン、エスピ、スレイヤ、この三人がいるだけで何も心配は不要だが……」

ラルウァイフ、さらにはナンゴークに住んでいたマルハーゲン夫妻たち。

さらに……

「うお、おおお、ゲンブの後ろの船……うお、あの青髪のイケメン半魔族! やべ、戦闘で汚れてた! 化粧も、なかなか逞しそうな労働者風の男たちも―――婚活ッ!!!!」

まるで既に仲間かのように当たり前にその一同の中にいるドクシングルは、どういうわけかブロや労働者たちの姿を見つけて慌てて身なりを整えて……

「ダディ……ヤミディレだけでなく、ダディや僕らの人生を変えた坊やたちが来たよ?」

「……ふん」

さらにその後方には、苦笑しているガアルと、その傍らには戦意喪失しているかのように項垂れているディクテイタがいた。

「あっちも無事で何よりだぜ」

「はい! 私たち、み~~~~んな強いですね♪」

今のところアミクスとラルウァイフ含めて皆無事そうだということを確認し、アースもクロンもホッとして笑みを浮かべ、手を上げて応える。

「これで、ひとまずは一件落着か? まぁ、ヤミディレはヨーセイのこととかいろいろあるみたいだけど、とりあえずは……」

とりあえず、これで諸々のトラブルは解決か?

そう思った時……

「あっ、そうだった! すごい大事な、姉さん、兄さん、それに……アースさまぁ~~~! 大変です~~!」

「「え?」」

何かを思い出したかのように、血相を変えてアミクスが大声で飛び跳ねる。

「アミクス? 大変? いや、た、確かに飛び跳ねて大変だけど……うお、ゆ、揺れ……」

「……むぅ……私……揺れるほどないのです……アースがジッと見ています……う~」

大変だと叫ぶアミクス。飛び跳ねてアミクスの両胸が更に激しくあらゆる方向にバルンブルンバルンブルンして、確かに大変なことになっている。それを思わず凝視してしまうアースに、そんなアースを傍らで見て、頬を膨らませながら自分の両胸を揉んで格差に悲しむクロン。

だが、事態はそんな馬鹿なことを気にしている場合ではなく……

「大変です! アース様の故郷……その、あの、嫌な人たちがいっぱいますけど、帝国が悪い鬼の人たちに襲撃されるそうなんです!!」

「「「…………え?」」」

「あー、おいアミクス! それ、わっちの仲間の極秘情報ッ!!」

ドクシングルがハクキの仲間たちと連絡を取り合う場にいたアミクスたち。

それは、ハクキの一味帝国襲撃の情報。

ようやく落ち着いたという状況の中で、アースたちはまたとんでもない情報を知ってしまうことになるのだった。

そして、その情報を受けてアースは―――――