軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百九十八話 今日は解散

「帰ったか……」

「うん。だけど、この場はコレで良かったかもね、お兄ちゃん。あの亀……かなり強かったよね」

「ま、僕とお兄さんがいれば問題なかったかもだけどね」

ゲンブとオツ、ヨーセイが撤退し、先ほどまでとは打って変わって夜の海は静まり返っ―――――

「ぬおおおおお、旧友との再会と結婚の冷やかし羨ましのあれこれやらヤミさんまでいるかと思えば、なかなか熱い兄ちゃんが出てきたり、ボスの宿敵までいるわその弟まで、これが逆ハーレム?! わっちのモテ期降臨やらあれやこれやでえええ……あ、わっちはドクシングル。鬼姫・ドクシングル……子供は九人欲しい。結婚したらわっちが稼ぐから働かなくていい。主夫、いや、もうヒモでも構わん!」

「しっかし、兄弟もナイスタイミングで現れやがってよぉ~」

「んあ~! そうなのそうなのそうなのん! 本当にうれしかったのん!」

「ヤミディレ大将軍……それに、ショジョヴィーチ隊長まで……ドクシングル殿も……」

「わあ、なんか色んな人がいっぱいいるよ~ラル先生ぇ……」

静まり返ることはなく、スレイヤの作った船の甲板で一同が大混乱で大騒ぎであった。

「なあ、ダーリン……あたいら助けてもらっといてアレだけど……もう、メンツヤバすぎね?」

「ぬう……イロイロと複雑だったり驚きだったり……感謝は変わらぬが……礼を言わせてもらえぬぐらい混乱しておるな」

唖然とするマルハーゲンとショジョヴィーチの一家。

もともと、ナンゴークの地をゲンブが襲撃した。

それを二人や、島に住んでいたトウロウやスケヴァーンたち、そして駆け付けたドクシングルが応戦していた。

そこに、クロン、ヤミディレ、ブロ、ヒルアが助っ人で参戦。

そして今では、アース、エスピ、スレイヤ、ガアル、ラルウァイフ、そしてアミクスまで参戦してしまい、味方であっても状況の整理にいっぱいいっぱいであった。

ただ、そんな中で……

「ええい、貴様ら黙らぬか。色々とごっちゃりしてはいるが、アース・ラガンへ群がるのは明日以降に改めろ。この場でアース・ラガンとの時間を最優先にすべきは誰かを考えよ!」

ヤミディレが手を叩いて騒がしい一同を制した。

ただでさえ慌ただしく戦闘中に皆が駆け付けたこともあって、まだ再会やら初めましての挨拶を誰もゆっくりとできていない。

そしてそれはそれとして、アースたちも全員かなりの疲労で本当は今すぐにでもベッドに飛び込みたいぐらい。

しかし、それでも……

「アース」

「……クロン……」

せめてクロンにだけは時間を……という親心秘めた鋭い殺気の籠った眼光でヤミディレは一同を睨みつけ「クロン様の時間を奪う奴はコロス」と威嚇した。

そんなヤミディレの後押しもあり、船の手すりに身体を寄りかからせるアースの側にクロンが立った。

「………………」

「………………」

先ほどまで、再会早々に熱く息を合わせて天を貫く力を見せた二人。

だが、こうして改めてとなると……

「あ~、お兄ちゃん、私たちはちょっと……」

「うんうん」

何となく二人の間に流れる空気に、エスピとスレイヤは後ずさり。

そして他の者たちも……

「わぁ……アース様とクロンちゃんが見つめ合ってる……どきどき……どきどき」

「……無粋だぞ、アミクス」

まるで、舞台を鑑賞するような感覚で、鑑賞会で映っていた天空世界以来の再会の二人をワクワクドキドキしながら見守っていた。

そんな中でついにクロンが……

「……この数日……」

「?」

「アースはお空でいっぱい映っていましたから……ずっとアースの様子を見ていたから……懐かしいと思うのも変な話なのですが……こうして本物のアースが目の前にいるとやっぱり……」

「……ああ……そりゃ、見てたよな、アレ」

「はい。私たちと別れた後もアースは色々なことがいっぱいあって、色々といっぱいいっぱい話したいこと、聞きたいことあるのに……ぎゅ~っとハグしたいのに……今は胸がいっぱいです」

アースとまた会えた。それだけで胸いっぱいだと微笑むクロンに、アースも思わずドキリ。

「そ、そうか……まぁ、お前も元気そうで……そして、なんか皆仲良さそうで安心したぜ」

「はい!」

照れて思わずソッポ向いてしまったアース。

そんなアースに無自覚で追撃するかのようにクロンは……

「毎日が充実して楽しくて……でも、それとはまた違う……ふふふ、アースに会えただけでこんなにドキドキしちゃうのです。みんなのことも大好きなのに、アースに対しては皆と違う好き……やっぱり私はアースのことは恋の大好きなのです♪」

「はうっっっ!?」

「来てくれてありがとう、アース。嬉しくて、そして私は幸せです!」

「う、うあ、そ、そう……」

満面のキラキラ輝く微笑で真正面から言われたアースは、夜でも分かるぐらい顔を真っ赤にして頭から湯気を出してその場で蹲ってしまった。

その様子を皆がニヤニヤしたり、ドクシングルは暴れそうになったりと、皆がワチャワチャしている。

「良かったですね、クロン様…………ただ、アース・ラガン……あの辺りは成長なしか」

「あははは、そりゃお兄ちゃんは純情だからね~」

「……エスピ……」

「……やっほ、ヤミディレ……久しぶり……クロンちゃん、かわいいね」

「……無論だ……」

「……うん……」

「…………」

「…………」

そんなアースとクロンの脇で、さらりとこちらも因縁の再会をするヤミディレとエスピ。

七勇者と六覇。

そして何よりも、ヤミディレが魂を捧げるほど信奉したトレイナを――――

「…………まあ、今日はもうよい」

「あ、いいの?」

だが、ヤミディレはこの場で何かをどうすることもなかった。

今はただ……

「今のクロン様の笑顔を歪めるような無粋で空気の読めないことまではせん……あの御方も……きっとそう思われるだろう」

「……そっか……ん、わかった」

ヤミディレはただこの光景を今は壊したくなかった。

そのことからも、やはりヤミディレも変わったのだなと感慨深くなり、エスピも微笑んで頷いた。

「さて、今日はもう遅い。再会のアレコレやら話もまた明日にとしよう。ディクテイタの娘もそれでよいな?」

「ああ……僕ももう今日は疲れているからね……」

そして、色々なことは明日改めよう。

そう言って場をまとめるヤミディレだった。

「他の者たちも良いな? 何故かいるドクシングルも……それともハクキの所へ戻って報告でもするか?」

「え? いやいやいやいや、わっちは今から誰を選ぶかで忙しいから今日は……ショジョヴィーチィ~、家に泊めてくれよぉ~!」

「あ、ああ。そんぐれーなら。んで、ヤミディレ大将軍、色々とありがとうございます。つーか、ラルウァイフも感謝な! あと、さっさとアカさんってのと再会して、あたいとダーリンみたいにラブラブ結婚しろよ?」

「ふぼっ!? だだ、な、ショ、ショジョヴィーチ隊長、なな、なんなにを?!」

「そーだよー、ラル先生ッ! 私たちはみーんなそう思ってるし―! んふふふ……ラブラブかぁ……」

「そうじゃ、なら、ワシらの所で皆泊まってくれい。こんなもので、礼になるとは思っとらんが、それぐらい世話させてくれい」

一同も細かい挨拶や話は明日に改めてというのに同意。

今日はマルハーゲンとショジョヴィーチの家に……

「みんなでお泊り! 楽しそうです……って、思いましたけど、明日のお仕事の準備もありますし……」

「ええ、我々は一度戻りましょう。ただ、クロン様は力を使われたので本日は部屋でお休みください。仕込みの方は私がしておきますので、明日の朝の方にお願いします」

「え、でも、お母さん、私はへっちゃらで夜も朝も一緒に――――」

「というわけだ、アース・ラガン。貴様は我らと来い。私は他にやることがあるのでな、今日の寝泊まりは『私の部屋のベッド』を使え。よもや、クロン様だけ帰らせてここで獣人や鬼やエルフの女たちと楽しくお泊り……ということは考えてないだろうなぁ? さ、コレで決まり。クロン様、アース・ラガンを『部屋』に連れて行ってください」

「まぁ! アースとお泊り! それはとっても素敵です!」

と、クロンにフォローを入れるヤミディレだが、そこでアースたちは首を傾げた。

「おいおい、仕事の準備とか仕込みってなんだ? ってか、クロンたち仕事してんのか?」

「はい! そうです……私、お世話になってる皆さんにもアースのこと紹介したいです! 今のアースはすっっっっごく皆の憧れですから! それに私のお仕事も見て欲しいですし♪」

「ひはははははは……今日はもう終わりか。さーて、オレも隠れるか……と言っても、近くにいすぎると、ボスにもエスピにも……当然、あの御方にもオレの気配がバレちまう……だけど、建物の中でのアレやコレを抑えるには……よし!」

そして……

「ここが~、『ヤミディレの姐御とクロンちゃんの相部屋』~でっと……鍵は針でカチャカチャやって開錠からのお邪魔しま~す……さて……撮影魔水晶小型版を部屋の中に……よし、ここに設置、ここにも設置、ここにも……これで盗撮はバッ……中の様子はバッチリ……おっ、洗濯物。ほうほう、ヤミディレの姐御は紐派か……クロンちゃんは――いやいや、ボスの女のパンツを見るわけにはいかねえ、オレは紳士だぜ」

そんな一同が集うナンゴークの海から少し離れた建設現場に設置されているクロンたちの滞在する家では……

「オレには分かってるぜぇ、ヤミディレの姐御。今日は疲れたから明日に仕切り直しで寝よう……というこの状況下、ただ寝るだけな訳がねえ。ヤミディレの姐御は間違いなくボスとクロンちゃんを二人きりで同じ部屋に押し込んでゆっくりしろ……なんなら一線越えちまえ的に思うはず! つまり、この部屋でボスとクロンちゃんは二人きりで一夜を過ごすッ! さーて、何が起こる? ナニが起こる!? 飲み物に媚薬でも仕込んでおきたいところだが、薬を入れた飲み物はあの御方に見破られるかもしれんから、工作は最低限に……」

クロンとヤミディレが普段寝泊まりする部屋にて、不法侵入している悪魔が……

「……おっ、ノジャちゃんが書いた、『理想の夫婦性生活』……クロンちゃん読んでるのかぁ~おませだねえ……これは元の場所に……そうだ、こんなこともあろうかと用意していたこの『猫耳猫尻尾毛皮ビキニ』と『肉球手袋』は袋に入れて……う~む、部屋の中に置くといくらなんでも変だと思われるから……よし、部屋のドアの前に『プレゼント。労働者一同』とメッセージカード……んで、袋の中にも『今日、街の衣装屋で処分されそうになっていたもの、クロンちゃんに似合いそうだったのでプレゼントだ! これでクロン猫になって彼氏をメロメロにしてゲットだ!』と、それっぽいメモを残してと……」

色々と忙しそうに動いていた。

「ひはははは、今日はもう終わり? 今日の終わりは、夜の始まりってことだぜ!」