軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百九十二話 私はもう

「だだだだ、大将軍! 来てくれたんですか!」

「クロンちゃん!」

「ぬぅ……あ、あのヤミディレがワシらを……」

クロンたちの登場に嬉しそうにしながら驚くショジョヴィーチやセイソたち。

もと人類連合の将として複雑な表情をしているマルハーゲン。

そして……

「うお、お、おおお……おおおお……ヤミさん!? ええええ? いや、ええええ? なんで? えええええ!?」

人型亀やブロの登場で興奮していたドクシングルも、

「暗黒戦乙女ヤミディレ……これまたとんでもない大物カメ……そして……あれが女神クロン……なるほど、似てないようで、やはりどこか面影が……」

頭をひっこめていたゲンブも、流石に六覇ヤミディレの登場には驚くしかなかった。そして同時にクロンにも関心を見せた。

「全員そこまで深い付き合いではないのだが、しかし知っている顔がこれだけ並ぶと感慨深い……こんな同窓会になるとはな……」

「ヤミさん……そして、あっちが噂の……鑑賞会で見ていたけど……最後に会ったのは赤ん坊だったか? ここまで大きくなるとは……わっちも……んぎゃああおおおおお、年取ったとかそんな、誰が行き遅れなお局鬼天烈だってのぉぉおおお!」

「本当に変わらないな……貴様は。まぁ、もっとも――――」

ドクシングルの反応に思わず笑みを浮かべるヤミディレ。

だが、その笑みはゲンブを見てすぐに嘲笑へと代わり……

「過去を捨てられずに固執し妄執する者も居るわけだが―――――」

「いや、お前が言うなカメ! いやいやいやいや、お前が一番ブーメランとやらカメ!」

「ぬっ!? い、いや、私は未来を見ているぞ……」

「いやいやいやいや、鑑賞会で明らかにトレイナに未練タラタラだったカメ! アレ、つい最近の話カメ!」

「ち、違うぞ! わ、私は過去に囚われず未来を見ているぞ! クロン様とアースラガンの結婚後に開店するカリー屋の経営についてとか……」

「そして今では思いっきり別方向に振り切れているカメ!? 極端から極端にいきすぎカメ!」

ゲンブ達を「過去に囚われた者たち」と皮肉を言おうとしたヤミディレだが、ヤミディレこそが過去にクロンを作った原因などその他もろもろがまさに「過去に囚われた者」の極みであることは鑑賞会で把握されており、ゲンブは「お前が言うな」と強く返した。

そして……

「そう、鑑賞会は見ていたカメ。お前が力を封じられていることも知っているカメ」

「……」

「言っておくが、瞳も魔力も封じられた貴様など、ただの羽の生えた女でしかないカメ」

当然、今のヤミディレの状態も知っていた。

だからこそ、その名とかつての力はそれこそ世界最強クラスであっても、今のヤミディレでは自分の敵ではないと断言した。

「懐かしい顔であれ、昔話をして談笑するような仲でも無いカメ……こっちも仕事で来ている以上、容赦もせずにさっさと行くカメ」

「ふん……ドジでのろまな亀というのが口癖の貴様が急ぐなど、らしくもない」

「まとめて散るカメ! 飛べ! カメーズ、ブルー! レッド! オレンジ! パープル!」

ゲンブが命じた瞬間、四体の亀分身が四方へ飛ぶ。

しかも、各々が剣などの武器を所持。

「おらああああ! いきなり師範を狙ってんじゃねえ! 魔極真胴廻し回転蹴りぃぃぃ!」

だが、構わずブロが先陣きって迎撃。

豪快な回転蹴りでブルーの亀分身を蹴り飛ばす。

「おほぉ、やるじゃねーか、ヤンキー小僧! そんなにわっちの前でカッコいいところを見せたいとか、照れる~! んどりゃァ!」

ブロの姿にモジモジしながら、ドクシングルはレッドの亀分身をハンマーで叩き潰す。

「おお、すっげーな鬼の姉さん」

「え!? 一緒の墓に入ってくれ?」

「いらねえかもだが、助太刀すんぜ! それと、トウロウ! スケヴァーンも! 何でいるか知らねえけど、一緒にヤルぞぉ! あと、墓には入らねえ」

「は!? 一緒にヤルって、初夜をすっとばしていきなり、ら、らんこ……ったく、スケベな男に惚れられちまったもんだぜ……でも、初めては海の見える部屋で夜景を眺めながら一緒に腹筋したりスクワットしたりして身体を火照らせてから二人きりで……」

ブロとドクシングルのインパクトに、あまり感情の変化も見られないトウロウも少し嬉しそうにハシャぐ。

「やる!」

「ちっ、あ、あいつ……急にいなくなったと思ったら、いきなり……しかも女連れで……まあ、鑑賞会で見てたけど……やるよ、トウロウ!」

以前のカンティーダンのときにブロとかかわりのあったスケヴァーンは、ちょっと拗ねたように唇を尖らせながらも、トウロウと共に駆ける。

「ぬぬう……ヤミディレたちに助けられるとは……だが、妻と娘を守るために誰よりも戦うのはワシだァ! 負けられぬぅ!」

「へへ、あたいもやるぜ、ダーリン!」

「うふふふ、なんかすごいことになってきた!」

マルハーゲン一家も守られてばかりではないと攻めをやめない。

そこでクロンが……

「そうです、皆さんは強いのです! なんでもできるのです! 魔瞳術・プラシーボキアイダッ!!」

「「「「オオオオオオオオオオオッ!!!!」」」」

その瞳の力で、ブロたちの潜在的な力をさらに引き出す。

その勢いは、決して弱くはないはずの、ゲンブが生み出したカメーズ四人を圧倒していく。

「……アレが人工的に生み出した暁光眼カメか……」

そんな荒ぶる連中を巨大な甲羅の足場に乗せながら、興味深そうに呟くゲンブ。

すると、ゲンブの頭をひっこめている部分の甲羅の穴の近くにヤミディレが降り立った。

「ゴクウやセイレーンが生きていたのだ……まぁ、貴様が生きているのはおかしなことではなかったな……」

「ヤミディレ……」

かつての因縁。

「……貴様らは他にも生きているのか?」

「……何もなき無の海の中で生きていたカメ……」

「そうか。あの忠犬女のハチや、お姫様あたりも相当に過去に囚われて―――」

「だからお前が言うなカメ……」

「生きていたものの、これまでずっとその海の底に居た貴様ら……ハクキのように裏で動いていたわけでもなかろう……今さら何をする気だ? アース・ラガンの鑑賞会を見て、何かに気づいて企んだか? どうせ、ヒステリックな姫に逆らえずに流されているだけだろうに」

時代が代わり、戦争が終わった世、人間が勝った世界。

両者共に勝者にはなれなかった勢力だが、同じ時代を生きた者同士、少し互いに懐かしさが滲み出ていた。

そんな中でゲンブは……

「再び争いの世を望まぬのであれば……アース・ラガンに頼み……あのエルフの族長に協力してもらいたいカメ……」

「……なに?」

「そして……あの方たちの気の済むようにしてもらえぬだろうか……」

それは、どこか切なそうに漏らしたゲンブの願いであり、本心の言葉だった。

そしてそれだけでヤミディレも大よそのことを理解した。

「エルフの族長……遺跡をかなり知っているようだな……あのエルフを使って、更なる奥深くの遺跡の技術でも使い……死者でも蘇らせる気か?」

「……あのクロンという人形を作ったお前には文句も説教も否定もする資格もないカメ……」

「あ゛?」

「それが本物か偽物か、イリエシマ様たち本人の魂が望んでいるかなどという議論もする気はないカメ……会いたい……どんな形でも……それは私も同じカメ。数か月前までのお前も……大魔王トレイナともう一度……そのつもりでこの十数年あの人形を―――」

「ッ、貴様! 誰が人形だ! クロン様への侮辱は許さんぞ! 殺すぞ!」

ゲンブの言葉を看過できずに声を荒げるヤミディレ。

「そんな力もない癖にイキがるなカメ……今のお前には何もできないカメ」

「貴様……」

「だから何度でも言うカメ。過去に囚われて哀れな人形を作ったお前だけには文句を言われたくないカメ」

だが、そんなヤミディレの言葉を受けても改める気のないゲンブ。

すると……

「何を話しているのです! お母さんが何もできない? 何を言うのです。私にとってのお母さんはそこにいてくれるだけで私は満たされて力になるのです。ソレで十分なのです」

話をしていたヤミディレの元へとクロンが駆け寄って、ゲンブに対して強く胸張って返した。

「クロン様?!」

「ぬっ……」

するとゲンブは少し呆れたようにクロンに対して……

「哀れカメ。所詮はハクキの企み、そしてヤミディレのエゴと妄執のために生まれた不幸な人形が……」

と最大限に皮肉った。

だがクロンは、ゲンブの皮肉を受けても揺らぎもせず。

「顔を出して良く私を見て欲しいです。今の私のどこか哀れで不幸なのでしょうか?」

「……なに?」

「見てください。大好きなお母さんがいます。ブロやヒーちゃん、そして新しいお友達もでき、仕事をして充実した日々を過ごしています。そして、恋もしています。その人を想うだけで胸が熱くなり、そして頑張ろうって思えるほど」

そしてクロンはニッコリと笑みを浮かべ……

「だから私はもう幸せなのです! きっかけや目的は何であろうと、私は生まれてよかったです!」

「ッ!?」

そのあまりにも純粋な本心の言葉が、頭を引っ込めたままのゲンブの心を抉った。

「そして今は更に幸せになる野望があり、それはその好きな人と結ばれて結婚して一緒にお店を経営することです! そして子供も欲しいです!」

そんなゲンブの心の内を知らずにニコニコと続けるクロン。

だが―――――

――ああ……子供を作ろう……クロン……結婚しよう……お前が俺の正妻だ

「え?」

そのとき、その場にはいない誰かの声が聞こえた。

そして、その声の主にクロンとヤミディレは呆け、だがすぐに……

「この声は……まさか!」

「えっと、え? 何故です? あれ? え? あなたとは結婚できませんけど……でも、なぜあなたが……」

その声の主が誰か分かった。

そして……

「ぬっ!? どういうことカメ!? まさか姫は……アレを動かし……まだ改造は途中だというのに!?」

ゲンブもまた少し驚いている様子。

いま間もなくこの場に現れようとしている人物。

そして……

「ひはははは、転移でさっさと来てよかった。いいねぇ~、クロンちゃん。バッチリ撮ってるぜぇ~。しっかし惜しいなぁ……ボスがこの場に居れば撮れ高ヤバいんだが……ま、ピンチになればボスの右腕としてオレが動いてやるけどな」

実は既にちゃっかり最悪の人物も到着していたりした。