軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百九十一話 ケチな男じゃない

オウナの家を片付けていたアースたちに問題が発生した。

エスピとスレイヤがフル稼働したことで、片付けも修繕もとてつもなく早く終わったのだが、戻って来たオウナが自分のコレクション箱を見てポツリ……

「俺っちのコレクションが二冊ほど減っている」

その箱にあるのは大量の卑猥な本。

しかし、その大量の本をチラッと見ただけでオウナは足りないものがあることに一瞬で気づいた。

その瞬間、エスピとスレイヤはアースを、そしてラルウァイフはアミクスを見た。

「お兄ちゃん! お兄ちゃんにはそういうエッチな本は早いよ! 年齢が許されるまで、だめえええ!」

「お兄さん、そういうものに興味を持つ年頃かもしれない。だけど、人のものを盗んでコソコソと隠れて読んだりするお兄さんを僕は見たくないよ」

「ちょー、待て待て待て待て、俺じゃない! 俺知らんぞ! いや、本当に! これマジで! 俺は盗んでねえ! ほら、ほら、ほら! 身体検査してくれよ!」

エスピとスレイヤはアースが犯人ではないかと疑い、

「アミクス……お前という奴はーーーー!」

「ひいいい、ち、違うよぉ、先生、コレは本当! 私、確かに気になってたし、コッソリ見たりしてたけど、盗んでないもん! 本当に! ほら、私も、ね? 身体検査!」

犯人はアースかアミクス、もしくは二人が結託しているのではないか?

エスピとスレイヤとラルウァイフは目を細めて疑惑を抱く。

「そーお? たしかに、お兄ちゃんが嘘言ってるように見えないけど……お兄ちゃん……ひょっとして庭のどこかに隠してたりしないよね? 後で取りに来ようとか……」

「お兄さん、怒らないから正直に言うんだよ?」

「だから、ちが~~~~~~う! 俺じゃな~~~い! 俺は人の家からエロ本盗んでそれをすっとぼけたりするようなケチな男じゃなーい!」

「アミクス、お前まさかいつの間にか空間魔法を習得し、異次元世界にスケベ本を隠したりとか……」

「そんなスゴイ魔法知らないし、そんなスゴイの覚えてそんなことに使うほど私もおかしくないもん!」

アースとアミクスは必死に否定し、三人も二人が嘘を言っているように見えない……というのは感じた。

「ん~……まあ、いいけどね。欲しけりゃあげるし。俺っちはもう脳裏に焼き付けるぐらいお世話になったし」

とりあえず、二人は認めないし、オウナも無くなったのなら仕方ないと、特に気にする様子もない。

「でも、それならどこいったんだろ……風に飛ばされたかな? 王子は知らない?」

「いや、僕も知らないよ。悩殺ポージングだとか気持ちいい子作りだなんて品のない艶本に心当たりなどあるはずがない」

「そっかぁ……じゃー、仕方ないか」

ずっと黙っているガアルも知らないということで、オウナももういいやと諦めの……

((((((……ん? あれ? 今なにか……))))))

と、そのとき、アース、アミクス、エスピ、スレイヤ、ラルウァイフ、オウナの六人は何かがものすごい引っかかったような気がして首を傾げた。

だが、その過った疑問を……

「あっ、ていうか、こんな話している場合じゃなかった」

「?」

「あのさ、アースッち――――」

気にしている場合ではないと、オウナが口を開いた。

「ブーケが足りねえ、出会いが足りねえ、婚活機会が足りねえぇ、そうだ……わっちは機会がないだけで、機会さえあれば結婚できんだよごらぁぁ! つーか、頭引っ込めんなぁあ! 亀の頭! この、チ〇コ頭がぁぁあ!」

「……やれやれカメ……」

「あ゛? 処女のくせに? 見たことないくせに? テメエぇ、乙女心を傷つけるようなクソだから、テメエは人間にイジメられてたんだよこの亀野郎!」

「言ってないカメ、言ってないカメ……」

海に浮かぶ巨大な亀の甲羅。

その甲羅に向けて巨大なハンマーを何度も叩きつけて荒ぶる、鬼女のドクシングル。

やられているゲンブはダメージがあるわけではないのだが、ただメンドクサそうに溜息ついていた。

そして……

「仕方ない……亀分身の術」

「ああん?」

甲羅の中に手足と頭をひっこめた状態のまま、ゲンブが何かを唱えた。

すると、ゲンブの甲羅の上に、人型サイズ、二足歩行の四体の亀が出現した。

「なんだこりゃ!? 逆ハーレムかあ!? 彼女はいるか? 好きな女のタイプは? 結婚しろ!」

「亀分身……名付けて、ミュータント・カメーズ。その女を始末するカメ」

「うおおおお、これは積極的なアプローチ! モテ期か!? お前ら、年収幾らだ? あ、低くても気にすんな! わっちは家事は苦手だが、そのぶん稼ぐから食わせてやれる!」

ゲンブの指示を受けて一斉にドクシングルに襲い掛かるカメーズ。

興奮と照れとアピールをするドクシングルだが……

「ちょ、おい、あんたこんなときに何ってんだよ! 来るぞォ!」

そんな場合かとショジョヴィーチ達が怒鳴る中、乱戦が始まろうとしていた。

「ぬぬぬ、まずい! トウロウ、ワシらも行くぞ! 妻と娘は死んでも守る!」

「了解」

多勢だと、これまで陸地から援護射撃をしているだけだったトウロウ、そしてその傍らにいたマルハーゲンも武器を持ってゲンブの甲羅へと飛び乗る。

その様子をポカンとしながら見ているクロンたち……

「お母さん、あのおっきい女性とお知り合いですか?」

「……まぁ……あやつは私の軍ではく、ハクキの軍所属だったのですが、戦時中も戦後もそこそこに関りは……」

「ってーと、師範……あいつは元魔王軍?」

「んぁ~……とっても強そうなのん」

ナンゴークに居るマルハーゲンやショジョヴィーチの危機だと思って駆け付けたクロンたち一行だったが、そこにあった光景は意外なものであった。

「この世界でいう、貴族や小国の姫ぐらいの高い血筋のオーガ……その力は魔界のオーガの中でもハクキを除けば最強クラス……」

「まぁ、そんな立派な家の出身の方なのに、あんなにお強いのですね……」

「ええ。魔王軍に入ったばかりのころはそこまで強くはなかったのですが……高身長高学歴高収入な暗黒馬に跨った王子様と結婚するのが夢とか言っていたのですが……当然そんなうまくいかず、徐々にハードルを下げていったのですが、それでもなかなか結婚できず……そしていつしか『結婚するまで死んでたまるか』と過度な筋力トレーニングをするようになり……あっ、ちなみにカクレテールでの筋力トレーニング器具の中にはあやつに相談して設置したものも……」

「え、そうだったのですか?!」

「ええ。ですがそれから何年も会っていなかったのですが……それがまさか……」

過去の戦友の出現に懐かしむ……というよりは、戸惑いの方が大きい様子のヤミディレ。

ドクシングルの様子から、ショジョヴィーチとも戦友のようなので、ゲンブにとっては敵である。

しかし……

「いずれにせよ、あの人はショジョヴィーチさんやセイソたちと一緒に戦ってます! 加勢しましょう、お母さん!」

「……いえ、ですが……あやつは……ハクキの部下でもあります」

そう、ヤミディレにとっての懸念は、ドクシングルが今となっては自分たちにとっては味方とは言えないハクキの部下であるということである。

ヤミディレはかつてのハクキの目的も野望も知っている。

未だにハクキが何をやろうとしているかも知っている。

だからこそ、そのハクキの部下であり、しかもその部下の中でも最強クラスのドクシングルに、この場で加勢してよいのかという懸念があった。

だが……

「それが何だというのですか」

「クロン様?」

クロンは「だからどうした」と強く返した。

「それを言うなら鑑賞会で出てきたあのアオニーという人もオーガであり、ハクキの部下でした。そして何よりも……アースの親友のアカさんという方だってオーガでハクキの部下だったのでしょう?」

「……そ……それは……」

「であるなら、重要なのはその人がどこの所属だとかそういうことではありません! 今この場で需要なのは、私たちの友達であるショジョヴィーチさんやセイソたちと一緒に彼女は戦っているということ! ならば、友達の友達は友達になれるはずですので、重要なのはそこなのです、お母さん!」

「ッ!?」

もしクロンが、今後もこの地上世界で過ごすのであれば、そしてアースと一緒になることを望むのであれば、いずれハクキとアースが対峙したとき――――

「しかし、ハクキはいずれアース・ラガンと――――」

「だから友達の友達を見捨てた方が得だとか損だとか、アースはそんなケチなことを言う男の子じゃありません!」

と、そんな皮算用をしないことをクロンは宣言した。

そんなことを堂々と言い切るクロンに、ヤミディレは内心では同意はできないものの、ただクロンのその心に……

「まったく……本当に強くなられましたね」

「お母さん?」

誇らしく、目頭が熱くなり、気づけば頬がほころんでいた。

「へへ、しゃーねえっすね、師範! 俺たちの調理主任にして看板娘が言ってんだから、俺らもやるっきゃねえっすよ! ま、俺も個人的にトウロウやスケヴァーンとはダチなんで、どっちにしろ俺は戦うっすけどね! つーわけで、行くぜ、ヒルア!」

「んあぁ!? ブロくん、クロンちゃん、行くのん? あの亀さんすっごいデカくて強そうで危ないのん! でも行くのん!?」

「はい! ヒーちゃん、ゴーなのです!」

「クロンちゃんが言うなら行くのん!」

ブロも胸を熱くして猛り、ヒルアも言われたとおりに飛ぶ。

そして……

「おりゃああ、大魔ジャンプキックーーっ!」

「「「「ッッ!!??」」」」

ある程度の距離になったら、ブロはもう待っていられないとばかりにヒルアの背から飛び、飛び蹴りで乱入。

カメーズの一人がブロの蹴りを受けて転がる。

そのままブロはゲンブの甲羅の上に立ち、ドクシングルたちに……

「へへ、助太刀参上! んで、久しぶりだな~、スケヴァーン、トウロウ」

「な、あ、あんたは……」

「アッ……」

ブロの顔を見て驚くスケヴァーンとトウロウ、

「……誰カメ?」

どういうことだと疑問を口にするゲンブ、

「うおおおおおおおおお、出会いのテンプレキター! か弱き乙女を不良っぽい男が救う! 見た目悪だけど実はイイ奴という不良、その不良の優しいところを知っているのはわっちだけ! そして二人はやがてなラブコメぇえええ!」

なんか一人で発狂するドクシングル。

そして……

「やれやれ……それにしても……久しぶりだな……ドクシングル……そして、ゲンブ」

「ブロに続き、助太刀参上なのです~!」

「参上なの~ん!」

「「……え? あ……」」

ヤミディレ、そしてヒルアに跨ったクロンの参上。

特にヤミディレが姿を見せた瞬間、ゲンブ、そして興奮していたドクシングルが同じリアクションして固まった。