軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百八十五話 準備

ジャポーネ王都は新たなる伝説とジャポーネの今後に関する王やら行く末やらで大騒ぎであった。

本来なら、ジャポーネの主要人物であったコジローもその場に立ち会うのは当然であったが、別の役目のためにその中心から外れ、別行動をしていた。

「王と妃と宮女以外は入れない施設に、こんな地下空間があるとは思わなかったじゃない。鉄や金属の匂いに囲まれてるじゃない……あのカラクリ人形の匂いも」

『ふぉふぉふぉ、ワシもそこには入ったことはないし入れぬからのぉ……確かに隠し場所としては絶好じゃったな』

『それと、ただその地下に置いていたわけじゃない。作業用の『機械』を使って地下を拡張して、文字通り秘密基地を作ったってのが見てとれるんで……あ~、『機械』ってのは、マジックアイテムみたいのね』

連絡用の魔水晶を手に持ち、集落に居る族長とミカドと連絡を取りながらコジローが訪れたのは、マクラが大量に出現させたターミニーチャンたちがどこに帰ったかを確認するため。

かつてジャポーネの最高位の将であったミカドやコジローですら、立ち入ることはできない宮中に、ターミニーチャンたちは隠されていた。

そしてそこは「隠し倉庫」というには壮大な空間であり、停止したターミニーチャンたちが大量に並び、その空間内には他にも多数の設備が備わっており、まさに「秘密のアジト」のような空間となっていた。

そして、それらは目の見えないコジローにとっては、今まで感じたことのない異質な物質のみで構成された空間であり、どうも落ち着かなかった。

「古代人の技術は恐るべし……というところだが、あの嬢ちゃん一人で誰にも気づかれずにこれだけのものを掘り起こせるはずがないじゃない。協力者がいるじゃない」

『うむ。それが、例のシテナイ……そして、ハクキなのだろうのう……』

『あの連中に手渡っていたと思うと怖いんで。まぁ、使いこなせるかどうかは別だけど……』

マクラ一人ではない。ミカドやコジローを権力から遠ざけるように画策したり、秘密裏にこれだけのものを掘り起こして作り出す。

その全てに自分たちの宿敵であるハクキや、ここにきてたびたびその名を聞くようになったシテナイ。

暴れたのがマクラだけだったのは、むしろ幸運だったかもしれなかった。

だが、そこでコジローは不可解に感じた。

「これだけのものを掘り起こすなら、そーとー銭も人手もかかるじゃない? その割にはあいつら、今回の件にも参戦しなかったり、コレをオイラたちがそのまま没収したり、破壊したりしたらどうするじゃない? もったいなすぎじゃない?」

『たしかに……そうじゃのう……となると……これから回収しに来るか……もしくは……』

そう、今回はマクラが勝手な行動を起こしたとはいえ、これだけの古代人の遺物を掘り起こすことに協力しながら、これを放置している状況はおかしかった。

パリピの手によって、今回の騒動や、古代人の遺物が世界中に知れ渡ってしまった。

それなのに、今のところハクキやシテナイが動いてくる気配を感じない。

シテナイも以前のトラブルの際に「ジャポーネの騒動には関わらない」と明言したが、だからと言ってコレを手放すのは決して安くはないはず。

それなのにどうして?

それは……

『もしくは……奴らはもっと、『別のモノ』が目当てであり、このターミニーチャンも巨大デカブツも、オマケみたいなものだった……だから別にコレはいらない……とか?』

「『ッッ!!??』」

その族長の呟きこそが、もっとも可能性が高く、そしてもっとも恐ろしいものであり、コジローもミカドもゾッとした。

もうすでに、奴らは欲しいものは手に入れた後であれば、一部のオーガたちがジャポーネで自警団のような形で残っていたはずなのにアッサリとジャポーネから撤退したのも、シテナイの息のかかったハンターやチンピラたちも関わって来ないのも、今回の騒動にも静観していたというのも、もはやジャポーネもマクラも用済みと判断したというのも納得できた。

しかしそうなると……

「こんなカラクリや、あんなデカブツすら別にいらないと思えるぐらいのモノ……奴らは何を手にしたじゃない?」

重要なのは、何を掘り起こされたのか。

だが、族長はコジローやミカドと違い落ち着いていた。

「大丈夫。マスターキーもなしで入れるような施設……遺跡にそこまでヤバいものがあるわけがないんで……ざっと見たところ、あのデカブツは別にして、ターミニーチャンシリーズもプロトタイプだし……あんがい、目当てのものが特に無いから手を引いただけかもしれないし……」

と、『そこまでのものがあるわけがない』と強く否定した。

すると……

『ん? コジローさん……その斜め右……机みたいのがあるけど、それを映してくれる?』

「ん~? ……ここ? なんか……机……その上に……小さそうな物体を感じるじゃない?」

族長が何かに気づいてコジローに指示。

そこに映し出されたのは、確かに執務用の机、そして無造作に散らばっている指一本分のサイズよりも遥かに小さな何かの破片のようなもの。

目が見えないコジローどころか、ミカドもそれを見ても何も分からない。

だが、族長は……

『そう……ん? ん~……それは……『ナノチップ』……しかも複数……?』

それに対し、コジローとミカドには聞きなれない言葉を口にした。

あまりにも小さすぎて、床にでも落としたら探せなくなるようなもの。

普通なら気づきもしないような小さなものに対して、族長はそう言った。

そして……

『コジローさん……もうちょっとアップで……何か表面に書いてある?』

「え? そう? もうオイラにはさっぱりだけど……これでいい?」

『ども。え~………『開発リスト』……わぉ……』

「え? なに? なんて書いてあるじゃない?」

『……あ、気にする必要ないんで。てか、うん……他には……『月次報告書』……ああ~……まぁ、ここら辺は掘り起こしはしたものの、字は読めないだろうから、とりあえず捨てずにただとっておいたって感じか……他には……『セクハウラ氏の研究発表』……おぉ……こっちは……『ターミニーチャンシリーズの自我について:マシン・ロボトのケース』……ッ! へぇ……ははは……俺の元となった遺伝子がザワザワしてくるものばかり……』

それを見て、一人でぶつぶつ呟きながら、そしてどこか懐かしそうにニヤニヤする族長。

その意味を理解できないコジローとミカドだが、今はただ族長に言われたとおりにして様子を見ていた。

そして……

『ふぅ……とりあえず……ここら辺にヤバそうなのはないな……大量破壊兵器とか衛星に関連するものとかあったら危なかったけど……』

ひとしきり眺めて呟いた後、少しホッとした様子で族長からは安堵の息が漏れていた。

「ふはははははは、ノジャめ……随分と酷いことをするではないか。これであの人間の小娘の行方をくらませ、全てを奴らの所為にか……まぁ、もはや吾輩もあの小娘をどうこうする気はないし、あのカラクリももうよい。色々と知らなかったことも分かってきたし、何をすればよいかも分かったからな」

世界の果てで、ハクキが立ち上がった。

機嫌よく笑いながら傍らを見て……

「だが、そのためには、まずは吾輩の立ち位置……下に着くべきか、喰らって上に立つべきか……そろそろ本格的に決める準備をせねばなるまい。身体も疼いてきたからな。『貴様』も『あの御方』と共に見物していればよい」

誰もいない空間に向けて、好戦的な笑みを浮かべて呟くハクキ。

その全身から熱気が溢れていた。

そして……

「おい、『レンラクキ』はいるか!」

アジトの中を進むハクキがそう呼ぶと、奥から一人の小柄なオーガが走ってきた。

「はい……ハクキ親分呼んだー……ですか? 秒で来たから殺さないでよ……くださいませ」

真っ白い髪の前髪で両目が隠れた、弱弱しい細身の鬼が駆け付けて、ハクキの前で片膝をついた。

「真・鬼天烈大百科……全員集めよ。テングもヤシュラも鬼姫らも含めて全員だ」

「え……わお……集めちゃうんだー……ですか……序列上位も全員……別に良くなくない? 勇者ヒイロとマアムに加えてベンリナーフも殺しちゃえば……じゃないですか? それで人類終わりじゃないの、ですか?」

ハクキの指示に対して口元を引きつらせる配下の鬼。

そして、本来であればそれは上策であり、人類の最高戦力でもあるヒイロとマアムとベンリナーフは現在ハクキが捕虜として捕えている。

この三人を今殺してしまえば、もはや人類はそこまで恐れるほどでもないのではないのである。

しかし、ハクキは違う。

「いや、ソレもアリかもしれんが、ソレとは違うものを見てみたくなってな……それに、今の人類はもう別の英雄を立てている。アース・ラガンのアレは貴様も見ているであろう?」

「あー、あの空の……息子の。僕、初日の最初で見るのやめちゃったんで……ま、とりあえず親分が言うのであの人たち呼ぶけどさ……じゃ、ここに集合ってことで……」

あくまで戦をする気満々のハクキに対し、ただその指示に従うしかない若い鬼は少しため息を吐きながら指示に従い、着々とハクキは戦の準備を……

「いや、集合はここではない」

「え? なら、どこ?」

「今まで隠遁生活をしてきた鬼天烈たちにも、少し発散させてやらんといかんからな……ウォーミングアップを兼ねて――――」

そして、ただの準備ではなく、ソレは……

「ディパーチャー帝国に現地集合ということにしようではないか」

いきなり世界を大きく揺るがすことをすることにした。