軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百七十六話 少し拗ねお兄ちゃん

『な、なに、これ! なんなの、この揺れ! どうして? 魔法使えないんじゃないの? どうして、ゴドラ、どうして!』

――ジャミング正常作動中

『正常? 何が!? 全然動いてないじゃない! 嘘つき! ウソツキウソツキウソツキ! みんなそうやって私に酷いことをするんだ!』

マクラは激しく取り乱す。

もともと自分でも知らなかった機能だったが、ソレの作動によって自分は優位に立てた。

だからこそ、ソレが無くなってしまっていることで、また自分が危機に陥ることに怒りを剥き出しにした。

だが、マクラは分かっていない。

ゴドラのジャミングは正常に作動している。

それでも足元が揺れるのは、ジャミングの射程範囲外からのエスピの能力で大地を激しく揺らされているだけで、その余波でゴドラの足元も連動して揺れ動いているだけなのだ。

「うっは、すごいことになっちゃってるよ、私の力!」

そんなマクラと対照的に、エスピは高揚していた。

自分の能力のスケールのデカさに。

「モノどころじゃない! 私は、大地を、大陸を……ううん、世界を掴んでる!」

落ちている岩や石やガラクタを浮かせたりするレベルではない。

「これが私の、ふわふわ 世界(ヴェルト) 革命(レヴォルツィオーン) !」

文字通り世界を掌握し、ひっくり返すことすらできる力。

「倒れちゃえーっ! ふわふわアースクエイク!」

激しく揺れる大地にバランスを崩すゴドラ。

だが、その巨体ゆえに重心はしっかりしている。

倒れそうになるも、何とか保ち、堪えている。

しかしそこで……

「なら、落ちたらどーお? ふわふわアースマントル!」

激しく揺れる大地が、やがて巨大な地割れを起こす。

それは、ゴドラをも飲み込んで―――

『だめえ、逃げて、動きなさいよぉ、ゴドラッ!』

――異常事態発生。コレヨリ 自動運転(オート) モードニキリカワリマス

『は? な、わ、わあ?!』

いや、そこでゴドラはバランスを崩しながらも無理やり踏ん張って、地の底へ落そうとする地割れから逃れるように飛び退く。

もう少しというところで舌打ちするエスピだが、その表情は笑っている。

「うおお、お、おお、す、すげーぞ、エスピ! トレイナ、あんたはエスピがここまでできるって分かってたのか!?」

『……できるのは分かっていたが、ヤリすぎだ……まあ、構わぬが』

妹分の見せる更に進化した力に興奮するアースと、少し苦笑いのトレイナ。

だが、そんなアースの興奮にムッとするのが……

「お兄さん! ほら、僕だって作業中だよ? さ、トレイナさん、どうだい? 僕は、どうだい?」

自分もいるんだ。自分も見ろ! そんな拗ねた顔のスレイヤ。

そんなスレイヤの作業とは、エスピが大地を引っぺがして地中から浮かび上がらせる大量の土だの岩だの石だのの中で発掘されている砂鉄を魔法で引き寄せている。

「おお、スレイヤも、で、デカ!? おま、どうやってこんなに集めたんだ?!」

『ふむ』

慌てふためくゴドラと躍動するエスピに気を取られ、隣でスレイヤがやっている作業に気づいていなかったアースは驚く。

なんと、スレイヤの頭上に、いつの間にかゴドラの頭部を上回るほどの巨大な鉄球が出来上がっていた。

「っていうか、砂鉄を集めろとかって、そもそもこんな石とか土とかばかりの中からどうやって分別してこんなに?!」

「ん? ああ、イメージをしただけさ。僕は造鉄魔法使い。加工も可能。素材に命じることも可能。なんだかそうやってイメージしていたら、こうやって鉄だけが選別されて集まったのさ。……砂金は無理だったけど」

イメージしただけ。自分でもあまりよく分かっていなそうなスレイヤに、トレイナはほくそ笑んだ。

『ふははははは、そうか……本当は鉄も金も選別せずにまずは集めるところ……によって、どういう成長をさせるかを見極めようとしたのだが、コッチになったわけか……錬金の力はいずれだな……』

機嫌よさそうではあるが、トレイナにとっては予想の範囲内といった様子。

それは……

『童よ、スレイヤは鉄を具現化したり、自在に操ったり、そして加工することが可能。その過程でもう一つの力を無意識に発現させたのだ……『磁力』……』

「うぇえ!? もう一つの……スレイヤの力? じりょく? ……磁力!?」

「え? ……え? 磁力?」

『実は造鉄魔法使いなどの系統の魔法使いは、触れているものだけでなく、手で触れていないもの……遠隔で周囲にある鉄すらも操ることができる。その鉄を加工したり、一つに集めたりする過程の現象で、造鉄魔法の応用でスレイヤには自然と磁器誘導する力を身に着けている……そして、鉄が磁力を帯びたらどうなるか……ためしに、その球体をエスピの力でゴドラの真上にもっていき、そのまま落としてみろ』

「いや、あ、あっ、えっと、ちょ、ゆっくり! 通訳できねえから、もうちょいゆっくり! あ~、スレイヤ! その球体をとにかくあのゴドラの頭の上に、エスピ!」

「磁力って、僕の力……僕にそんな……」

トレイナにとって予想通りでも、それでも興奮は抑えきれないのか、少し早口になってる。

元々エスピとスレイヤ、共に「神童」と呼ばれるほどの才能を持っているのだ。

その二人を自分の力でさらに引き上げることは、トレイナにとってもたまらないものであった。

「え~? このまま私が倒しちゃってもいいのに……えっと、この鉄のガラクタを?」

「む、いいから持っていきたまえ。お兄さんが尊敬しているトレイナさんからの指示なんだ。僕はお兄さんを信じているから、ちゃんとトレイナさんの言うことを聞くけど、君は聞かないんだね?」

「は?! 聞くし! 私の方がお兄ちゃん信じてるから、トレイナ信じるしィ!」

と、少し定番の口論、そこにトレイナの名前を交えながら、エスピとスレイヤがトレイナの指示通りに動く。

「こんな感じ? でも、アレ落としても魔法は解除されるんじゃ……」

『かまわん。あと少し……右……』

「ん? いいってさ。あと少し右……だってよ」

「こう?」

『そこだ。ちょうどいい』

「いいってさ」

エスピの能力でスレイヤが作った巨大な鉄球をゴドラの頭上に持っていき……しかも、位置を細かく指定し……

「ふわふわコメットッ!!」

浮遊を解除し、ゴドラの頭上から巨大な鉄球を落とす。

確かにそのまま鉄球が直撃すればゴドラとてただでは済まないだろう。

だが、ゴドラにはジャミング機能がある。

スレイヤの鉄球は「魔法」で象ったものである。

つまり、ジャミングの射程範囲内に鉄球が近づけば……

「あっ……、あれ!?」

「僕の鉄球が……なぜ?! あの鉄球は僕の造鉄魔法で丸めただけ……だから、奴の範囲内に入れば球体は解除されてバラバラになるはずが……」

「解除されてバラバラに……ならねえ!? って、トレイナ!」

そう、この機能がある限り、エスピのように「余波」ならまだしも、直接の魔法攻撃は無効……のはずだった。

だが、そうはならない。

『ふははは、こういうことだ!』

巨大な鉄球はそのまま彼方まで響き渡るほどの轟音響かせて、グシャッと音を立ててゴドラの頭部をへこませ、そのままゴドラは激しく転倒した。

『わ、な、なに?! 痛い、体が、っ、ゴドラが、どうなっ、うそ、なんで?! でも、これぐらいじゃ壊れないよね? ゴドラ!』

――頭部損傷。ジャミング装置破損。

『は!? も、もうっ! なんで? 本当に動かないよぉお、なんで!? しかも、鉄球が……ゴドラにくっついて離れない!?』

転倒し、ゴドラの体内で上下左右が分からなくなるほど揺れ、マクラも激しく体を痛める。

『確かにそのデカブツのボディは硬い……だが、むき出しのジャミング装置はそうではあるまい? 余の瞳は誤魔化せぬ……その位置……ソコからジャミングの波動が出ている……ピンポイントに破壊させてもらった』

そして同時に、ゴドラの体内でマクラも知らない単語が色々飛び、その上でゴドラの体内が赤く点灯して異常を告げる。

それはもうマクラにはどうしようもないことであった。

『ふはははは、鉄球そのものは魔法で象られたため、魔法無効化やジャミングされたら本来は解除される……だが、スレイヤの磁器誘導によって集められた鉄は、そのまま鉄自身も磁力を持って磁石となってしまった……魔法は解除されても、磁石と化した鉄の『磁力』はそのまま残るということだ』

「あ~、ようするに……トレイナが言ってるのは……炎の魔法で攻撃し、炎を魔法無効化で消し去っても、炎で燃えた焼け跡や火傷の傷までは消えない……魔法は消えても、魔法によって生じてしまった現象までは消せない……ってことか?」

『うむ。こういうとき、童はヒイロやマアムと違って賢いので話が早い』

「おお、そうなんだ……だってよ、スレイヤ」

全てがトレイナの思惑通りだった。

「す、すごい、こんな戦い方が……トレイナすご……私たち、七勇者でもう一回戦ったら絶対負けてたかも……ってか、ヒイロがチート使わなければ負けてたよ……」

「僕たちですら初見のあの相手を……トレイナさんは、僕たちの能力やそれに伴って生じる力も見抜いて……トレイナさん、すごい!」

こうなっては、エスピもスレイヤも、素直にトレイナの力に脱帽するしかなかった。

そしてトレイナも……

『ふっ、だが、余が見込んだ通りの才能があったればこそだ……やはり二人は傑物だと、伝えてやれ。童』

「ああ。トレイナが、二人の才能を認め、二人は傑物だ……二人が自分の見込んだとおりだったからこそだってよ」

「「おおぉ~~~~!!」」

アースを通して自分たちもトレイナに褒められる。

それが二人とも嬉しいと思うようになり、素直に照れた様子を見せる。

一方で……

「……ちぇっ」

アースは逆に少し拗ねてた。

(トレイナの奴、こんなに興奮して……そりゃーさ、エスピとスレイヤはスゲーよ……でも、俺だって……)

いつも自分を見てくれていたトレイナ。自分だけのトレイナ。

その視線が今、エスピとスレイヤに向けられ、自分を介して導き、そしてトレイナの期待以上の成長と成果をアッサリ見せた。

そのことに「スゴイ」と素直に思うと同時に、嬉しそうなトレイナを見て、少し拗ねた。

だが……

『さあ、童。最後は貴様だ』

「え?」

『あのジャミング機能は破壊した。あとは貴様が魅せろ……やはり……あ~……そのぉ……』

笑みを浮かべながらも少し照れくさそうな様子のトレイナ。

そしてアースはウッカリ頭から抜けていた。

アースが頭の中で思っていることは、全てトレイナには筒抜けであるということを……

『余のとっておきは、やはり最後の最後に出すに限るからな!』

「ッ!?」

そして、そんな拗ねたアースを一発で奮い立たせる言葉をトレイナは送る。

エスピとスレイヤがいれど、それでもやはりトレイナにとっての特別は自分なのだというのが、何だか胸を高鳴らせた。

「押忍ッ!! 言ってくれ、トレイナ! 俺は……何でもやるッ!! 何でもできる! 何でもやって、応えてみせるぜ!」

そして、自分も負けてたまるかと唸った。