軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百六十六話 巨大な足音

世界が色々とアースやシノブのことで声を上げたり、キャッキャしたりしている時……

「ムカつく……本当にムカつくな……シノブちゃんたちまで今更何しに来たか分からないけど……全部潰れちゃえばいいんだ……」

一人の少女の狂気が動き出そうとしていた。

「そうだ……みんな潰れて壊れて燃え尽きちゃえばいいんだ!」

それは自分の気に入らないもの、例え誰であろうと全てを消し去らんとするかのように。

「なぬなのじゃ!? 婿殿、聞いていないのじゃ! こやつがどうして……しかも、なんか鑑賞会で見たものより魔改造されとるのじゃ!」

「あ、あの人……アース様、どうして?」

ノジャとアミクスの二人は知らなかった。

ここ数日天空世界がジャポーネ上空を行き来していたのは知っていたが、まさかここで王子自らが出てくるとは思わなかった。

しかもその王子は、まさに王子と呼ばれる格好ではなく、まさに艶のある「女」の姿で現れたのだ。

「きゃああ、王子様ぁよぉおーー!」

「ガアルちゃん……美人で、美形かと思えば……か、かわいい」

「あ、ああ、色っぽさもあって……」

王子が女らしさを見せることで何が変わるか?

それまで圧倒的に女性人気が高かったところ、それに男性人気までプラスされて余計にファンが増えた。

「どうなっちまうんだ?」

「もう……メチャクチャだわ」

アースとシノブは頭を抱えて項垂れた。

元々今回のことは全てシナリオが決まっていた。

テキトーにアースとゴクウでやり合って、タイミングを見計らってゴクウが国王ウマシカを連れて逃げ切る。

あとに残されたアースとシノブで「体勢を立て直して探しに行こうぜ(探す気ゼロ)」でとりあえず終幕。

そして、その後はシノブの幼馴染でもあり、この国の后となったマクラとシノブが向き合う時間を作って―――

「すまないね、坊や」

「あう?」

「だけど、ちょっとこちらも緊急事態でね」

それなのにアースとゴクウがシナリオ忘れて白熱したことで時間がかかり、その間にゴクウの仲間が駆け付けてしまい、ノジャとアミクスが乱入してしまい、更になぜかシナリオにないガアルがここで登場。

アースも困惑する中、アースの前に降り立ったガアルが、申し訳なさそうに苦笑しながら「ぽんぽん」とアースの頭を撫でた。

ただでさえ美形で、しかも今は女の香りも滲みださせているガアルに、アースも不意打ちのようにまたドキッとする。

「こらー、そこの貴様、婿殿に何をすり寄っているのじゃ! 鑑賞会での貴様は確か女好きだったのではないのかなのじゃ!」

「アース様、お、おっぱいは、わ、私の方がおっきいよぉ!」

「ちょ、おま、お前ら、お、おちちつけ、おちち、おちつけ、ええい、離れろぉ!」

「おやおや、可愛らしい小鳥さんたちだ。相変わらず坊やは人を惹きつけるねぇ」

そんな狼狽えたアースに「ヤバい」と感じたノジャとアミクスが慌ててアースの周りに纏わりつく。

そして……

「シノブちゃん、何やってるの!」

「そうよぉ、シノブちゃん、ボーっとしてると取られるよ!」

「もっと積極的に!」

アースの周りに集まる乙女たちを見て、ジャポーネの女性陣が慌ててシノブを煽る。

「うぇ、え、あ、えっと、その……」

ここで急に背を押されてシノブも戸惑うも、確かに言われてみれば何となく自分が蚊帳の外のような状況にもやもやし……

「え、えっと……ハニー……わ、私だって、嫉妬するのよ?」

「はう、し、シノブ……」

「おやおや、すまないね、シノブレディ」

「おい、シノブ、お前は婿殿と散々デートしてたであろう! 引っ込んでろなのじゃ!」

「あう、シノブちゃんごめんね……だ、大丈夫だから……わ、私は……だって、私なんかじゃ……」

シノブもアースの服の裾をチョンと摘まんで少しだけむくれ顔。

これにより、今何が起こっているか・

アースの周りに、シノブ、ガアル、ノジャ、アミクスの四人の乙女たちがくっついている状況なのである。

そんな光景を見せつけられると……

「アース、お、おま、お前ぇ……モテすぎじゃねえのぉ!? シノブ、王子、……っていうか、そのキツネババアも数に入ってんのか?! しかも、と、とんでもねー、お、おっぱいもいるし……アース、お前、その四人の誰が本命なんだッ!?」

「え?」

ゴクウももうフィアンセイのことが頭から抜け、目の前の見たままの光景に対する質問しかできなかった。

そこには、フィアンセイも、サディスも、そしてクロンすらも入っていない……

『『『…………#』』』

それを、世界各地で聞かれているということを、ゴクウもアースも気づいていなかった。

ただ、そんなキャッキャとした雰囲気ではあったが、頃合いを見計らってガアルがアースから少し離れ……

「さて、こうやって坊やの可愛い反応をいつまでも眺めているのも悪くないが……そうもいかない。鳥レディ。僕のダディがどこに行ったか知っているかい?」

と、改めてセイレーンに問いかけた。

その問いにアースたちもハッとする。

するとセイレーンは少し溜息を吐き……

「たとえパリピに壊されようとも、アレも一度は天空世界の頂点に立った男。居場所も使い道も無いのであれば……さらにはまだ燻っているものがあるなら……ただ、ウチはそう誘っただけだっつーの」

「……なに?」

「こちらは誘っただけ。来たのは彼自身の意思。だから―――」

「それならば君をここで逃がすわけにはいかない」

と、切り替えて、ガアルはセイレーンとゴクウに向けて構えた。

そして、セイレーンのその行動については何も知らなかったアースとシノブは、アイコンタクトも兼ねてゴクウを見る。

――どういうことだ?

すると、ゴクウは……

「…………ワリ」

「「ッッ!?」」

気まずそうに苦笑しながら、片手をあげてペコっと頭を軽く下げた。

「ちょ、お、おま(そういうのは全部ちゃんと言えよぉぉぉお!)」

『いや……だから極秘任務なのだろう……しかし、まさか天空王もか……ジャポーネ王だけでなく……戦力の補充にしては良く分からんメンツ……まあ、何か意味はありそうだが……この二人は知らんか………』

トレイナが呆れたようにアースにツッコミ入れる。

だが、それはそれとして何かに思い当たったトレイナは真剣な顔で何かを考えている。

そんな中で……

「まっ、よくわからんが……とりあえず、とっ捕まえる……それでいいのじゃ? 童もこ奴らが目障りであろうしな。嫁としてわらわは働くのじゃ。それにこやつらの裏にいるバカ女にも用があるのじゃ」

「おっ、そこは僕も相違ないよ……狐レディ」

「わ、私だって! あの人たちがアース様の敵だっていうなら……」

最初は微妙な雰囲気ではあったが、とりあえず目の前のセイレーンとゴクウがアースの敵であると判断した三人は横並びになる。

「いやー……アースッちは本当にモテるようになったなァ~。ま、アカデミー時代はフィアンセイ姫が居たからガードされてたってのもあるけど……」

そんなアースや乙女たちの屋根の上での大乱闘を眺めながらシミジミと呟くオウナ。

そして隣をチラッと見て……

「あのさ、俺っち一人でバカみたいだから、返事してくれたらうれしいんだが」

「……………」

「なあってば……てか、お前―――」

パリピと通じる魔水晶を持ったまま俯いて無言を貫く謎の覆面。

しかし謎の覆面は一切質問には答えず黙ったまま。

「やれやれ、あんなスゲーのに囲まれて頑張ってるアースッちに比べて俺っちは~って感じだけど……コマン……お前さ――」

「…………キッ!」

「……おい、『話しかけるな殺意オーラ』みたいなのだけ出して拒絶しないで、せめて言葉でお願い」

ただ、その正体にはもうオウナ自身も気づいているようだが、それでも謎の覆面はオウナを拒絶していた。

『ひはははははは、ほ~んとこの娘は困ったちゃんだねぇ~。別に正体ぐらいいいのに』

「……あなたも黙っててください。殺しますよ?」

『ひはははは、まーいーじゃん。それより……問題はアッチだよね」

魔水晶の向こうで愉快そうに笑うパリピ。それに対してコマンはようやく口を開いてパリピに暴言。

しかし、パリピは構わず続け……

『どうやら何百年も海の底に隠れていたり……十五年ぶりぐらいに地上との干渉……というわけだが、あの鑑賞会で外の世界の状況をあいつらも予習できていたようだね。まぁ……とはいえ、それだけで……』

「ん~?」

『……誰か手引きしてたり、ツアーコンダクターみたいのが居るんだろうけど……』

「ツアーコンダクター? 案内人や情報提供者が?」

と、何か引っかかりのあるようなことを呟くが……

『まっ、どこの誰かってのはだいたい検討がついてるけどね……』

「?」

と、心当たりはあると呟き、そして鼻で笑った。

そしてそれが何かとオウナが尋ねようとした瞬間。

――ガシャン……ガシャン

「「『ッ!?』」」

何かの音が聞こえた。

まるで足音のような音。鉄のようなものが地面を踏むような音。

そしてその振動、音が徐々にこちらに近づいてくる音。

『コマンちゃん』

「今確認しま……私は謎の覆面です……ちっ……」

「あっ、おいおい、ちょっと待てって、俺っちも……」

一体何か? パリピがコマンに確認させようとし、コマンもその場から離脱して、隠れるように移動しながら音のする方向へ。

オウナも慌ててその後を追おうとする。

すると――――

「え?」

「……は?」

いくつもの人影。そしてその最奥から、闇夜を背に近づいてくる建物……いや、山のようなもの。

その足元では悲鳴や建物がつぶれる音。

多くの人々は鑑賞会や、広場でのヒーローショー・ヒロイン大戦争に夢中でまだ気づいていない。

『ひは……は……ひは! うおっほ、なんだアレ!?』

思わずパリピも唸ってしまうもの。

『巨人? なんか宮殿の方から近づいてね? 何アレ! しかもその足元に……人型だけど……人じゃなくね? 人形のような…………何かの遺産!? 人型の髑髏と……巨大な二足歩行の……竜? 鰐? 何だアレ、ひははははは!』

謎の集団と巨大な何かが、ゆっくりと王都の中心へ向かっているのだった。