軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百五十五話 ヒーロー見参

闇夜を背負い、大衆の面前で大立ち回りをするゴクウ。

空は『曇って』いて、今日は星も見えずにかなり暗い。

そんな中、ゴクウは国王のウマシカを堂々と攫い、その追っ手を皆の目の前で蹴散らしていく。

「どうしたー! 俺様に勝てる奴はいないのかー!」

野性味あふれる好戦的な笑みを浮かべて、逃げずに足を止めて「かかってこい」とジャポーネの戦士たちを煽るゴクウ。

本来なら「国王誘拐」などとんでもない大事なのだが、ウマシカ自身がまったく世論から支持されていなかったことや、ゴクウのあまりにも堂々とした様子に、集まっている国民からは怒号などは飛ばなかった。

「くそ……こいつ、何者だ? 魔族?」

「ゴクウなどとふざけた名前を名乗りおって……」

「し、しかし……強い……圧倒的でござる」

コジローやミカドなどジャポーネを代表する大戦力がいなくても、世界に名を馳せるジャポーネの侍戦士や忍者戦士たちが束になってもゴクウには敵わない。

その強さは本物であると理解した戦士たちは迂闊に飛び掛かれずにいた。

「どうしたどうした~? ビビってるのかー、本当に攫っちゃうぞ攫っちゃうぞー、国王攫っちゃうぞー!」

一方で、ゴクウもまたいつでも追っ手を振り切って逃げられる状況だというのに、その場に留まったままである。

それは全てこれから行う……

「待ちなさい、下郎! 国王の誘拐はこの私が許さないわー!」

茶番のためである。

「ぬぬ、なにやつだー!」

「「「「「え……?」」」」」

突如響いた女の声。その声に戦士や民たちも一斉に振り返る。

すると、ゴクウの前方の屋根に一人の女が……シノブが現れたのだ。

「え!? シノブ!?」

「あれは、シノブ・ストーク!?」

「な、何故ここに?」

「昼間目撃情報があったが……」

「いや、待て……そもそもストーク家は国王の命令で……取り押さえるようにと……」

ジャポーネでも有名人であるシノブが登場。

その姿に民たちも戦士たちも驚く。

昼間、アース、シノブ、エスピ、ゴクウたちが会っている場面を見ていた民たちも居るのだが、彼らもシノブたちが何をやろうとしているかまでは分かっていなかったので戸惑っている様子。

すると……

「おうおう、現在国王のウマシカの弟であるオウテイの娘で、今回家族共々逆賊とされている、シノブ・ストークが何の用だー! そもそも何でお前が邪魔をする? お前ら家族にとっては、こいつが攫われていなくなった方がありがたいんじゃないのかー? ああん?」

ゴクウが若干説明臭い言葉をシノブにぶつける。

対してシノブは……

「そうね……その人が私たち家族にした行いや、これまでのこと……ミカド様やコジロー様に関してのことも分かっているわ……個人的な意見を言わせてもらうなら、批判だけでは済まない思いがあるわ。だけれど……それでもその人は…………その人は……」

ちょっと大げさに感情的な姿を見せながら、本当は欠片も思っていないこと―――

「私の叔父さんなの!(気持ち悪い……何を言っているのかしら、私は)」

と、自分でも鳥肌立つようなことを涙交じりで叫んだのだった。

「ふはははは、叔父さんだとぉ? こいつがそんなこと思っているかなぁ? おら、起きろぉ、ウマシカ、起きろぉ!」

そんなシノブの叫びに、ゴクウは笑みを浮かべて気絶しているウマシカの頭を小突いた。

そして、ピクリと身体を震わせて、ウマシカがゆっくりと目を覚まし、辺りをキョロキョロ見渡して……

「ん~、う、な、なんにゃもか? あえ? わ、なな、なんでおじゃるかぁ!?」

自分の置かれている状況を理解できずに混乱して叫んだ。

「はっはっは、よう、ウマシカ。お前を攫いにきたぜ」

「ほわ?! なんでおじゃるか、貴様ぁ! 獣? 下賤な獣が朕に触れるなでおじゃる! 朕を誰と心得るかぁ!」

ゴクウの姿を見て、汚く罵って暴れるウマシカ。しかし、ゴクウに押さえつけられてどうしようもない。

「ええい、そこの戦士共、何をしているでおじゃるか! 下級国民共も何をしているでおじゃる! 朕を救うでおじゃる! 貴様ら、朕を救ええええ!」

「はっはっはっは、戦士たちも民たちも俺様の力を臆して誰もかかってこないようだぜぇ?」

「ぬぬぬぬ、何を言うでおじゃる! 朕は至高の存在でおじゃる! 貴様らの何千倍以上も価値ある存在でおじゃる! 何をしているでおじゃるか、屑共ォ!」

「おお……そうそう。だけど、そんな中で一人だけこの俺様に立ち向かおうとしてる奇特な奴がいるぜぇ?」

「ぬ? あ……シノブ!?」

ウマシカの叫びに戦士や国民たちが眉をしかめる中、ゴクウに指さされた先に立つシノブに、ウマシカも気づいた。

「叔父さんを、返してもらうわ!」

「シノブぅ、こ、このゴミが、どの面下げて朕の……いや、今はさっさと朕を救うでおじゃる! 少しぐらいは朕の役に立つでおじゃる! そうすれば貴様もオウテイもカゲロウも、少しぐらいは減刑についてを考えてやらんでもないでおじゃる!」

「…………」

「ほら、さっさとするでおじゃる! この役立たずの無能め! 昔からブスっとして可愛くないだけじゃなく、本当に生意気で、しかも役にも立たぬ無能でおじゃる!」

それを聞いて心がざわつかない戦士、国民はこの場にいなかった。

ウマシカの言葉はそれほどまでに酷く、ジャポーネ中に轟いた……本当はリアルタイムで世界中に流れているのだが、そのことをこの場にいる誰もが分かっていないのだが、いずれにせよ……

『シノブ、このバカ思いっきりぶん殴っていい? 俺様マジでイラついた』

『やめなさい! とりあえずまずはシナリオ通りに!』

シノブとゴクウはアイコンタクトして、まずは始める。

「忍法・岩礫の術!」

「はっはー、俺様には効かねえ!」

シノブが忍術を繰り出す。無数の礫を正面からゴクウに飛ばす。

だが、ゴクウはウマシカを抱えたままジャンプで回避。

「忍法・乱れ四方手裏剣ッ!」

空中に逃れたゴクウにシノブがすかさず手裏剣を飛ばす。

大量の手裏剣を投げ、その手裏剣同士をぶつけ合って軌道を不規則にして相手に先読みさせない技。

だが……

「はっはっはー!」

「おじゃるーー!?」

ゴクウはすさまじい速度の足で「空間を蹴り」その反動で空中を自在に飛び回って全ての手裏剣を回避。

「そ、そんな、私の技が?!」

「ぬるいぜぬるいぜぬるいぜぇ!」

「速い、っ、きゃぁ!?」

そして、そのまま全ての手裏剣を回避してから今度はシノブに向かってツッコむゴクウ。

凄まじい速度の蹴りを直接当てるわけではなく、蹴りによって生じた衝撃波だけでシノブをふっ飛ばし、シノブは屋根の瓦の上を横転していく。

「シノブ!?」

「シノブちゃん!?」

「強い……そして、速い!」

「あのシノブちゃんがあんなにアッサリ……」

一応両者ともに演技ではあるのだが、かなりハイレベルな攻防であることで、戦士や民たちに動揺が走る。

そして……

「こ、こらー、シノブ、何をしてるでおじゃる! さっさと立つでおじゃる、朕を救うでごじゃる、この無能!」

「ッ……う……」

「無能、ゴミ、役立たず、マクラと違って可愛げもない、このクズでおじゃる!」

ゴクウに返り討ちにあって倒れるシノブに、これでもかと罵倒するウマシカ。

それでも歯を食いしばり(演技)、健気に立ち上がり、ウマシカを救おうとするシノブの姿に、誰もが哀れに思い、そして心を揺さぶられた。

「はっはっはっは、哀れだなぁ、シノブ。えっと……お前は王から疎まれ嫌われ家族ごと逆賊扱いされ、もはやこの国にお前の味方なんて一人もいない。それでも何でこの国に現れ、更には王を救おうとする?」

立ち上がろうとするシノブに言葉をぶつける。

「何故? そんなの……どんなに嫌われようとも、この国が私の故郷であり、この国を愛しているからよ! 父さんと母さんと兄さんと過ごし……そして……友との思い出あるこの国を(私と兄さんはジャポーネの未来に嫌気が刺して抜け忍になったのだけれどね……)」

と、かなり臭い感情的な叫びをジャポーネの民たちの前で口にした。

「シノブ……」

「シノブちゃん……」

だが、こういう状況だとその演技もまた単純に信じる者たちばかりであった。

皆が心痛な表情を浮かべ、拳を握りしめ……

「くっ、皆のモノ、シノブと共に戦うぞ!」

「おお、俺たちだってジャポーネの戦士だ!」

「シノブー。駆け付けたでごわす!」

「行くぞ、シノブにだけ戦わせるな!」

そして、戦士たちも一斉に奮起し、シノブと共に戦おうとする。

「うおおお、いけー!」

「俺たちだって、俺たちだってー!」

「シノブちゃん、私は……私たちはシノブちゃんを逆賊だなんて思わない!」

「そうだ、シノブちゃんは、シノブちゃんは俺たちジャポーネの誇りだ!」

「おおおお!」

民たちもまた、その発言が本来であれば国王の前ではタブーだと分かりながらも、もう声を出さずにはいられなかった。

「ぬぬ、何でおじゃる、下級国民共……」

そんな周囲の反応を面白く思わず不愉快そうにするウマシカ。

すると、

「わーはっはっはっはっは、わーはっはっはっは! それまでだ、伝説の戦士ゴクウ! これ以上の行いは許さない!」

その時だった。

「ん? なんだー、この笑いはー(わくわく)」

「だ、誰なのかしら(うきうき♥)」

その場に、新たなる男の声が響き渡った。

「ぬぬ、誰だー、お前はー! 俺様を許さないとは誰だー(うおおお、きたーーー!)」

その男にジャポーネ中(世界中)が注目する。

そして、その姿に誰もが見覚えがあった。

黒いヘルムと黒いマントを身に纏い……

「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ! 乙女の涙を拭えと我を呼ぶ!」

「!」

「私はこの世に涙を流す子供と乙女が居るのなら、たとえ相手が伝説であろうと容赦しない! 良い子と乙女の味方!」

手を天に翳し、熱き口上と共に参上したのは……

「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! あ、あれはあああああ!!!!」」」」」

その瞬間、天地が激しく揺らぐ。

その男の存在を、この世の誰もが知っていた。

「ラガーンマン! 時を越えてただいま見参ッ!!!!」

ビシッと、決めポーズも完璧に。

おとぎ話の伝説の怪物の前に、今最も熱いヒーローが現れた瞬間だった。

『過去の世界でも思ったが、貴様、変装すると性格が変わるのか……?』

そんなラガーンマンの傍らで、師が呆れ顔でツッコミ入れた。

そして一方で……

『にしても、闇夜に紛れて皆が気づいていないが……あの雲……普通の雲ではないのでは? ……天空世界? ガアルを迎えにでも来たのか?』

と、ボソッと呟いた。