軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百十八話 最後に爆弾

ノジャは洗脳されていても正気であっても、シリアスな話をする時に場をややこしくしちまう。

ノジャだけでそうなのに、こいつが介入したら……

『……その声……貴様……』

『ひはははは、ご無沙汰~、旦那~』

こいつが生きているということを、六覇の連中は知らなかった。

ヤミディレだって知らなかったみたいだしな。

だからこそ、ハクキとノジャがいるこの場で、しかもミカドのジーさんまでいるのに……

「う、ウソ……なのじゃ……」

「ぬぅ、ぬ……このなんとも人を不快にさせる笑い方をする男は……」

ノジャとミカドのジーさんも目を大きく見開いている。

『いよう、ノジャちゃん。正気の変態に戻ってるじゃ~ん。それに、昔さんざんオレをイジメてくれたジジイもまだくたばってなかったか。ボスに感謝するんだな』

「「ッッ!!??」」

そして、二人もこいつの正体に確信したようだ。

俺が懐から観念して取り出した魔水晶を凝視し、そして俺の顔を交互に見る。

こいつらは思っているだろう。「なんで?」と。

「……テメエは……ほんっと……こう人の神経を逆なでするというか、しかも空気読まずにタイミングも最悪で……」

『あれれ~? おかしーぞー? どーしたの? ボース♪ 役に立つ右腕の登場にパナイ冷たいんじゃなーい?』

「「『ボス??』」」

しかもワザとらしくボスとか右腕とか……っていうか……

「っていうか、テメエはそもそも生きているの内緒だったんじゃねえのかよ! なんで今日に限って大サービスのごとく自分の生存をバラしまくってんだよ!」

そうだ。そもそもこいつはかつての戦争で死んだことになっていた。

だからこそ、ミカドのジーさんも、そしてかつての仲間だったノジャもハクキも驚いているんだ。

なのにこいつは十数年間の秘密をアッサリとぶっちゃけた。

なんで?

『ひははは。その方がおもしれーから♪』

「ぬが?!」

そうだった、こいつはこういう奴だったんだ……だからって、十数年の秘密をアッサリばらすなよ……

『フハハハハハ、戦後以来……吾輩がここまで愉快な気分になったのはな……とはいえ、世の中にとっては残念ながら生きていたようだな……パリピよ』

『ひははははは、ひっでー、旦那! パナイドイヒーだねぇ!』

『ふっ、事実であろう? 人間にとっても、魔族にとっても……まぁ、驚きはしたが、貴様が実は死んでいなかったというのは何だか今になってしっくりとしてしまったな』

そんなパリピの生存を知り、驚きながらもハクキは笑った。

『皮肉なものだな。遥か昔から続く戦で、敵も味方も含めて大勢の者が死んだ。世界のために死なすには惜しい者たちも多かった。それなのに、貴様が生き延びているというのは悲劇としか言いようがあるまい』

『あーらら、それじゃあまるでオレが死んだ方が世の中のためみたいじゃないか!』

「「「「「『そうだろうが』」」」」」

あっ、全員でハモった。

にしても、かつての六覇の仲間にまでこんな反応されるなんて、こいつよっぽど嫌われてたんだな。

『……つーか、トレイナ……あんた、なんでこいつを配下にしたんだっけ?』

『言ったであろう? こやつは目の届かぬところに居る方が厄介なので、手元に置いたのだと』

『はは……ほんと……あんたの器のデカさにゃ脱帽だよ……』

そんなトレイナの言葉に苦笑しながらも、まさかこんなところで六覇の三人が……まぁ、一人は魔水晶の向こうで、もう一人はベンおじさんを通じてなので、この場に集まっているわけではないが。

どうなっちまうんだ?

『にしても、アース・ラガンをボスと呼ぶなど、どういうことだ? 新しいオモチャにでもする気か?』

ハクキがパリピに尋ねた。やっぱそこにいくか~。

そして、その問いはノジャもミカドのジーさんもまさに気になっていたようで頷きながらゴクリと息をのむ。

すると、パリピは……

『オモチャ? 違うね……天地魔界全てを含めた……新たなる王! 覇王にするためだ!』

『なに?』

「「「ぶふうううう!?」」」

何それ俺知らない。みんな噴いたよ。

エスピとスレイヤまで顔を青くして俺を見るが、「違う」と俺は首を振った。

『王……だと?』

『ひははは、そうさ、旦那! こいつはデカくなるぜ! そして、その『傍らの導き手』がどこまでもボスを高みへと引き上げる! 人間も魔族も天空族すらも、ボスの周りに集う!』

『傍らの導き手? 何だそれは? 周りに人が集う……は……まぁ、それは分からんでもないが……』

『だろう? ゴツイ鬼と人間の屑とギャングぐらいしか集わないあんたより、王の器がパナイあるってもんだぜ!』

なのに、パリピはハクキを挑発するかのように俺をヨイショしやがる。

つーか、やめろ! お前はどんだけ俺をムカつかせれば気が済むんだ!?

『なぁ、ハクキの旦那よ。あんたもコソコソしてないで、ボスと戦ってみたらどうだ? ま、今の時点ならこの場にいる全員と戦ってもあんたが一人勝ちするかもしれないが、それはあくまで今の時点での話。ボスはまだまだ成長期。強く、大きく、そして面白くなる! パナイぐらいにな!』

ダメだこいつ! 早く何とかしないと―――

『ほう、面白い』

うおおおい、ハクキも何が「ほう」だよぉ!?

「って、てめえら本人同士目の前にいないのに、この場にいる俺を差し置いてなんつー話してんだよ! おい、パリピ! テメエ、この魔水晶叩き割るぞごらぁ!」

『ひはははは、ボスも照れ屋さんだねぇ~』

俺は魔水晶に向かって力の限り怒鳴るが、それであいつが怯むわけもない。

こんなに今あいつが目の前にいないことが悔しいと思うなんて思わなかった。

今度こそ大魔螺旋で息の根を止めてやったっていうのに。

『ふははははは。なら、アース・ラガンが吾輩を倒すことができたら、遥か昔、大魔王様に敗れた時のように吾輩もアース・ラガンの子分にでもなるか……フハハハ、それも面白い』

「「「「え、ええぇえええええ!!??」」」」

『そうなれば、ヤミディレと人形娘も喜んで集うか? まだ若く未熟なれど、血族に至るまで六覇が永劫に支えれば……フハハハハ、愉快な未来だな。六覇の四人がそう動けばライファントも時間の問題……フハハハハハ。これが一番のヒイロへの腹いせになるかもな。フハハハハ』

パリピのふざけてんのかよくわからねえメチャクチャな話にノッて一人で爆笑しているハクキ。

こいつはこいつで何なんだ? 意外と悪ノリ大好きか!?

『おい、トレイナ……こいつどこまで本気?』

『……ふっ、半分冗談、といったところだ。あまり真に受けるな』

『……それって、半分は本気?』

いかん。流石に……つーか、ミカドのジーさんまで頭抱えてるし、これはかなりヤバイ状況じゃねえか?

つか、俺がこのままではマジで帝国の連中にレッテル張りされた「魔王軍と繋がり云々」が真実になっちまう。

そうなれば、俺は人類の敵とかそういうことになりかねないのだが……

『とはいえ! それも吾輩に勝てなければ、ただの夢物語。分かっているな? アース・ラガン』

「分かってねぇーよ!」

『いずれ戦おう。それまでに、吾輩を唸らせるほどさらに成長するがよい。そのためにも……シソノータミの遺産……ジャポーネ国王のウマシカにちょっとしたオモチャを持たせているので、ミカドやコジロウたちと気張ることだな』

「……ん?」

そう言って、どこまで本気か分からないメチャクチャな話を口にしながらもサラっと重要そうなことを口にするハクキ。

そして……

『それとすまないが、ベンリナーフの肉体はまだ必要なのでな……セーシュンジュハーチキップトシンカーンセン……』

「「「「ッッ!!??」」」」

『大陸を覆う大結界は解いてやるが、部下たちと一緒に回収させてもらう』

ハクキが……といより、ハクキが操っているベンおじさんが詠唱を唱え、魔法陣が浮かび上がる。

そして同時に、俺らにぶっ倒されたオーガたちの体まで発光している。

「こ、これは、転移魔法!? アース・ラガン、この者たちは……」

同じような魔法を使えるラルウァイフが咄嗟に叫ぶ。

そして俺も思い出した。これは、ヤミディレも使っていた技。

ざけんな、逃がしてたまるか。

『ハクキの旦那~、退散の前にせっかくだし教えてよ~』

『ん?』

このままではベンおじさんがどこかへ連れていかれてしまう。

それを防ごうと俺が身構えた瞬間、またパリピが口を開き、そして……

『オレも見たけどさ~、あのクロンちゃんだっけ? あれってさ、ハクキの旦那がヤミディレの姉御と協力して作ったんだよね?』

『……まぁ、ほぼヤミディレが、だがな。吾輩は少々口を挟んだりしたぐらいだ』

『ジジイやベンリナーフやらノジャちゃんまで洗脳した虫のオモチャも、ハクキの旦那が遺跡から持ち出したんだろ?』

『ああ、そうだが? それが何か問題あるか?』

こんな状況で何を? だが、俺がそう口にしようとしたら……

『うむ……それは余も気になっていた……解せなかった……』

なぜか、傍らのトレイナまでパリピの言葉に頷いていた。なんで?

そんな分かり切ったことを確認して何か意味があるのか?

そう思った時、パリピは……

『作り方とか使い方とか……どうやって知ったの?』

『…………!』

『いくらヤミディレの姉御も協力していたとはいえ、魔王様と同じ遺伝子を持った人形作りは簡単じゃないはず……普通は多くの失敗を積み重ねて何十年も長い時間をかけると思うけど……オレの見立てでは、あのクロンちゃんは文句のつけようがない出来栄えじゃん』

『…………』

『百歩譲ってヤミディレの姉御の執念やら紋章眼やら頭を使ったのならそれでいい。でも、こんな虫までホイホイ使って……しかも、ジャポーネの国王にまで何か持たせたとか……あんたのような完全武闘派がどうやってそこまでシソノータミの遺産を使いこなせるようになったんだい?』

それは、あまりにも今更な質問で、しかしかなり重要なことだったのか、トレイナすらも真剣な表情だ。

そして、そんな質問をしている間にも転移魔法は発動し、ベンおじさんたちの体は異空間に吸い込まれていく。

だめだ、間に合わない。

『ふふふふ、そうだな……あえて言うなら……戦後、吾輩にも色々あり……こんなことを言うとバサラに嫉妬されるかもしれんが……』

そう思った時、去り際にハクキは……

『全てはカグヤの幽霊に教えてもらった……とでも言っておこう』

――――――――――え?

『また、会おう。……長距離移動魔法・ジェイアルー』

その一言で、俺は身動き一つとれず、ただ消えるベンおじさんや気絶しているオーガたちを見ているだけしかできなかった。