軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百十七話 厄介でおしゃべり

『吾輩と……会ったことが……この地で……馬鹿な、何を……』

そう呟くハクキだが、流石にすぐに分かるはずがねえ。

『たしかに吾輩はヒイロの息子の存在を認識してはいたが、アース・ラガンの存在に注目したのはあの御前試合での……』

そもそも、俺が時を超えて過去の時代に行ったなんて想像もできないだろうし……

『いや、思えば……その目……そうだ……その滾るほど熱く強い意志を感じる目に……見覚えがなくも……見覚え? 過去に? この地で?』

だから、ハクキがその答えに行きつくはずはない……

『この地で吾輩がかつて出会った者と言えば……幼少期のエスピ……そこのハンターの男……ダークエルフのラルウァイフ……エルフたち……そしてもう一人……ん! ああ……おお、そうか……ふはははは、なんと……そうか!』

「……え?」

『胸躍ったのは、いずれ会いたいと思っていた貴様と間接的に会えたからだけでなく……我が身に宿るあやつの……アオニーの魂が再会に喜び打ち震えていたからということか』

行きつくはずが……ないと……

『間違いない! 貴様、あの時の男か!』

「……なっ……」

だけど、ハクキは辿り着いた。

『あの時、吾輩を殴った男……そして、アオニーほどの男が命を懸けて逃がした男……そうか、貴様だったか。アオニーも喜んでいよう。繋いだ命がこうして輝いているのだからな』

ちょっとこれには俺自身もビックリ。

エスピとスレイヤもラルウァイフも意外だったようで、目を丸くしている。

「へ、へぇ、意外だな。俺が教えてから、あんたが『信じられない!?』みたいな流れになると思っていたのに、まさか答えに辿り着いちまうとはな」

『ふむ、確かに不思議ではあるな。あの時点ではヒイロの息子である貴様は生まれていないのだからな……時でも超えない限りそんなことはあり得ない……だが、こうして実際に起こっているということは、原理は分からぬが、そのあり得ぬことが起こった……つまり、何らかの方法で時を超えたということなのだろう?』

「……そ、そんなもんか?」

『吾輩の常識では考えられないからといって、その全てが非現実などとどうして言えよう? この世の全てを知っているなどと言えるほど、吾輩は自惚れていない』

ベンおじさんを通じてではあるが、そう告げるハクキの言葉に俺は驚きと同時に狼狽えてしまい、同時にハクキという人物への印象がガラリと変わっちまった。

『特にシソノータミの遺跡……古代人の遺産に触れていれば猶更だ。遺伝子上まったく同じ生物を作り出す技術、魔力を使わず人を洗脳する技術、鉄の塊のゴーレム、物体を自在に操るカラクリ、音を解析して全ての生物の言語を翻訳する力、星の海の向こうに広がる世界等々限りない。だからこそ世界は広く、知識の海に底が無く奥が深い』

初めて出会った時は、ぶっちゃけ切羽詰まった状況で、しかも数秒ぐらいだったような気がする。

だから、俺はあまりハクキという人物をそこまで知っていたわけではなく、ただ単純に「メチャクチャ強い奴」とどこかで決めつけていた。

でも、今の会話だけで、こいつがただ強いだけではないということが伺えた。

『そうだ、童よ……こやつは六覇の筆頭だ……それだけでなく、他の六覇と違い……遥か昔より、余やバサラと魔界の命運をかけて争ったほどの存在……』

強いだけじゃなく……厄介な奴だ……そう感じた。

本当にトレイナ級の領域にいるような底知れない奴と話している感覚だった。

「……す、すまん、コジロー。アースくんが時を超えたとか、ハクキと会ってたとか、どういうことじゃ? ノジャがアースくんにゾッコンだったりと訳が分からぬぞ?」

「あ~、御老公……それはちょい後で……オイラも頭痛いから……ってか、やっぱあの話本当だったんじゃない……」

そんな俺たちの会話についていけずにテンパっているミカドのジーさん……まぁ、本当ならハクキにこういう反応見せて欲しかったんだけどな。

そして、

「ええい、ハクキ! いつまでゴチャゴチャわらわの婿と話しているのじゃ! つーか、よくもわらわのお楽しみを邪魔してくれたのじゃ! それ以前によくも遺跡でわらわたちをボコってくれたのじゃ! 出てこい! リベンジしてやるのじゃァ!」

「ちょ、大将軍、お、落ち着いてください」

と、色々と溜まっているノジャが憤慨して牙むき出しに叫び出す。

だが、ハクキは溜息を吐き……

『さて、改めてアース・ラガンよ……こうして時を経て再会したわけだが……二つ聞きたいことがある』

「なん、だよ……」

『一つ目は、貴様は帝国を飛び出して以降、色々と世界を渡り歩いているようだが……何か目的があるのか? 何かしようとしているのか? 単純な興味だ』

ノジャを無視して俺との話を再開。アレを無視できるとかスゲー神経だな。というより、元仲間だし慣れてんのか?

まぁ、それはさておき、俺の目的地ややろうとしていること?

その答えは、世界を渡って親父を超える偉業を成すこと。

そのうえで、今はエスピとスレイヤと一緒に……

「……って、なんでそれをあんたに言わなくちゃいけないんだよ。そんな義理もねぇ」

って、ここで「俺はいつか親父を超える」なんて、親父のことを知ってる大物連中たちがいっぱいいる前で宣言するのは恥ずかしいっての。

だが、それだけでハクキは何か察したようで……

『ほう……今の反応、若干だが照れのようなものがあったな……口に出すのが恥ずかしい青臭い何かか?』

「なぬっ!?」

『あの御前試合での出来事を見る限り、馬鹿な帝国民共へ復讐しようと思っても仕方ないものだが……そんな類のものではないか……復讐などではなくむしろ……何か見返してやる的なものか?』

「……っ……」

すげえ……なんか普通に当たってるし……

『なぁに。可能性としては低いとは思っていたが、もし貴様が帝国民に復讐などと考えているようなら、仲間にしてやろうかとも思っていただけだ。貴様は魔族というものに偏見はないようだし、何よりもヤミディレも人形娘も貴様を気に入っていたと報告を受けているからな。貴様を伴侶としてやることで人形娘が大人しくするのであれば―――』

「誰がだ! つーか、人形娘って、まさかクロンのことじゃねえだろうな? あいつを人形なんて言うんじゃねえよ!」

『ふっ……随分と愛されているようだな、あやつも。ちなみに、あやつらは世界を放浪としているようだが、どうしている?』

「知らねーよ! どこ行ったかも知らねえし、連絡の手段なんてねーし」

『そうか……まあ、今はそれも別によい。それよりも、二つ目だが……』

色々図星を突かれたりでバクバクする俺に対し、ハクキは続けての問いを口にする。

それは……

『なぜ貴様は……ブレイクスルーと大魔螺旋を使える?』

「ッ!?」

『もし貴様が、何らかの方法で過去に行っていたのだとしたら……ひょっとして、大魔王様とも会っていたりするのか?』

当然の質問であり、核心を突く質問であり、そしてこっちが本命なんだと思える質問だった。

「あっ、ぶっちゃけそれはわらわも疑問だったのじゃ。エスピとスレイヤに聞いても分かって無さそうだったのじゃ」

と、ノジャも、それどころか他の皆も「実は気になってました」って顔で頷いている。

すると、そんなノジャの反応に、これまで無視していたハクキは鼻で笑った。

『ふっ、その点を気になりつつも未だに追及していないとは……六覇でありながら……かつて共に肩を並べて大魔王様に仕えた身としては嘆かわしいものだ……』

「なぬっ!? わらわを鼻で笑ったのじゃ!?」

『六覇も色々とあったが、吾輩が武人として尊敬できたのはライファント……男として尊敬できたのはゴウダだけだからな。ヤミディレは歪みまくった忠誠心……ノジャ、貴様はただの変態だ』

「なぬううう!? ふん、変態で何が悪いのじゃ! つうか、貴様は相変わらず、大物ぶってる割にはベラベラおしゃべりなのじゃ! そこがムカつくのじゃ!」

おしゃべり……あっ、それは俺も思った……。

とはいえ、ノジャの所為でまた話がごちゃごちゃになるし、一旦落ち着かせて……

『ひはははははは! ちょーっとちょーっと~、パナイひどくね~? オレの評価だけが出てこないとか、何それイジメ? ね~、ハクキの旦那~? かつての六人の同志の一人にひどくね? パナイひどくね?』

『……ん?』

「なぬ……なのじゃ?」

あっ……まさかこの場面で……

「の……のう……コジロウよ……なんじゃ? 今の声は。しかも、聞き覚えが……」

「ご、御老公……後で説明するじゃない……いや、ほんと落ち着いて説明しないとマジ無理じゃない……」

俺の懐の魔水晶が……

「って、お前はほんっっとに、出てくんなああああああああああああ!!??」

『ひはははは、またまたウェイ!』

ここに来て、人の気持ちも知らずに場をかき乱す男が口を挟んできやがった。