軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百八十六話 服従

こんなことぐらいで「俺は六覇を圧倒した」なんてイキがるつもりはねえ。

これまで、ヤミディレ、パリピ、ノジャ、ハクキ、そしてゴウダと戦ってきたからこそ、その称号が安っぽくねえことが分かっている。

本当のノジャだってもっと強くて恐くてヤバい奴だ。

だからこそ、その恐さを感じないノジャといつまでも遊んでいられねえ。

「ッ、ガ……ウガアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」

「おっ……」

前後左右四方八方でノジャを翻弄したアース・ミスディレクション・シャッフル。

その動きについてこれずに手も足も出せなかったノジャは怯んでいた己を一喝するように吼えて、両足が膨張するほど力を込めて、そのまま空高く跳んだ。

「あっ、飛んだ!」

「平面での動きについてこれないということで、高さに逃げたようやなぁ」

「お、おお……た、たか……」

「そこまで追いつめるたぁ……それだけお兄さんを捉えられないということじゃない」

「さて、どうするでござる?」

なんか、見物人も増えちまったようで、皆もノジャが次に何をやるかというよりは、次にノジャが何をしてそれに対して「俺が何をする」ってのを皆が注目しているような気がする。

「バシャアア、キシャアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」

そして、上空に飛んだノジャは最高点の到達した時点でこっちをギロリと睨みつけてきて、九本の尾を改めて逆立たせた。

『上空からあの尾を振り回し、広範囲に渡って森を破壊する気だな……癇癪起こした子供が手当たり次第に物を壊すように……』

自分の周りをフェイント交えたステップ踏む俺に翻弄されないよう、上空から広範囲攻撃でまとめてぶっとばす。

それが、狼狽えた野生が導き出した最終手段ってところか。

でも……

「ノジャ、残念だな。一日俺との再会が遅かったな!!」

上空に飛ばれたら俺には追いかけられず、俺には手も足も出ない……なんてことはない。

そして、何よりも……

「今の俺は、空をも駆けて……翔け抜ける!! 今の俺は何でもできる!!」

こうして、『上がった』。

脳が、体が、細胞に至るまでが何でもできると思い込む。

――マジカル・ランナーズハイ

この状態で……

「うおおおお、大魔螺旋!」

大魔螺旋の渦を上空に向けて放って巻き込むことも可能。

ましてや、かつてのゴウダとの戦いでは極限大魔螺旋という最強技で打ち破ることが出来た。

そして、今はそれだけじゃない。

「出た! お兄ちゃんの!」

「おお、なつい……」

「これはなんとも豪快やなぁ……」

「……あ……これ……この技……」

「素晴らしいでござるな」

出現させた大魔螺旋。俺はここから、螺旋の形状を変化させる。

激しく回転する渦で、風車のような羽をイメージする。

『ふふふ、昨日よりも上手にできているではないか……では!』

トレイナにそう言われて、俺も俺自身でそう思えるぐらい、昨日より繊細なところまでイメージを行き渡らせることが出来た。

「ガ……?」

上空から狙っているノジャが今の俺の状況に訳が分からないようでまた固まってしまっている。

俺はそんなノジャに、そして見物している皆に向けて、見せつけてやる。

『空を自由に飛んでしまえ!!』

「押忍! 大魔ヘリコプター!!」

螺旋と翼の融合技で、俺は空へと飛ぶ。

「あ、あの技は!」

「え、ちょ、ちょおおお、なに、あの、なんか色んな意味でヤバそうな技!」

「飛行まで……!?」

「……大魔……螺旋……!?」

「こんなことまで!」

昨日はこの力を制御できずに、ぶっ飛んでしまうだけだった。

でも今は昨日の反省もいかし、螺旋の力をコントロールし、自分の意志で飛びたい方角や動きを操る。

「ウガ!? ガ……ガ!? ……くぅ……」

上空のノジャまで一気に飛び。

そして、俺はそこからそのまま攻撃するわけでもなく、地上の時と同様にノジャの周囲を回り始める。

不要な動きも入れて、翻弄する。

『童、垂直上昇から静止し、そのまま真横に反転……それが、『ハンマーヘッド』とよばれる技法だ』

本来、この戦いにあまり口出しのなかったトレイナも、この時は嬉しそうに色々と俺に教えてきた。

『そして、垂直上昇から静止して、そのまま後ろ向きになって垂直降下……テールスライド! 縦に宙返りから反転してロールし、再びループ……ハートループ!』

戦いに勝つためではなく、新しいものを身に着けさせるように。

『童、覚えておけ! これぞ、マジカル・ステップの空中バージョン……自由自在な曲技飛行……マジカル・エアロバティックス!!』

いや、身に着けさせるというより、なんか俺の空中飛行見て楽しそうにしてないか?

「うお、おおお、なにあれ、お兄ちゃんが凄いことしてる!?」

「空を飛べるモンスターとか、魔法で飛ぶ人はいくらでもいるけど……これは……」

「アレは……銭を取れますな~」

「……あんな応用まで……お兄さん……」

「思わず見入ってしまうでござる」

そんな新たな俺の必殺技で地上から歓声のような声が上がる。

そして、それを間近で目の当たりにしたノジャはもう顔を引きつらせてポカンとしている。

最後の野生すらも潜めてしまうほど……

「……くぅ……」

そして、結局空中へ飛んだノジャは何もできないまま、地上に着地した。

地上でも空中でも何もできない。

そんなノジャは最初の大暴れや唸りが嘘のようにおとなしくなり、そして……

「……コンコン」

「ん? あ……」

「コンコン~」

ノジャに続いて俺もゆっくりと地上に降下して着陸した時、ノジャは俺に向かって仰向けになって腹を見せて、殺気の失せた潤んだ目で懇願するように見つめてきた。

「ちょっ、の、ノジャが……」

「これは……完全服従のポーズ……」

それは、俺も一瞬呆気に取られてしまうような光景。

『おお、これはなんとも……』

仮にも六覇のノジャが俺に対して、これ以上争いたくない、降参の意味も込めた服従のポーズをとっているのだ。

流石にトレイナも複雑そうに苦笑している。

そして、俺を見つめながらノジャはそのまま体を反転させて四つん這いになりながら俺の足元まで近寄り……

「ちゅっ」

「げっ!?」

六覇が……ノジャが……獣耳の幼女が俺の足にキスしてきた。

「う、うわぁ……もう完全に負けを認めちゃったみたい……う、うん、色んな意味でやっぱりお兄ちゃんはすごいよ!」

「……絵面は相当ヤバいけどね……」

「しかし、いずれにせよ大したもんや……暴れる野生を見事に屈服させたえ……」

「そうね……色々と聞きたいことあるが……ひとまず、お見事じゃない」

「たしかに、お見事でござる」

皆も俺を賛辞……のはずが、おかしい! なんか目をものすごい細めた、なんというか引き攣っているというか……

「すりすり、もふもふ、こんこん……くぅぅん」

「あ、おい、こら、すりすりしてくんな、よじ登ってくるな! 頬っぺた舐めんな!」

そして、屈服したノジャは何だかさっきまでと打って変わり、俺にすり寄って身を寄せて抱き着いて甘えて来た。

そして、俺はこの時とんでもないことに気づいた。

これって、どうやって正気に戻せばいいんだ?