軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百七十三話 森の宴

美しい満月と星々の下でキャンプファイヤー。

真っ赤に激しく燃える炎を取り囲みながら、山やら森やら川の幸などを存分に使った料理が振舞われながら、楽しい時間が過ぎていた。

「時を越えるアイテムか~、そんなものがあるなんて信じられねえな~」

「でも、あのときのお兄さんがこうして変わらない姿で現れてるってことはそうなんだろうな~」

「それに、エスピちゃんやスレイヤくんが嘘つくわけないし、お兄さんが偽物だったら気づくはずだしね」

「じゃあ、本物のお兄さんなんだ!」

「はは、スゲー! やっぱ、あんたスゲー奴だったんだな!」

「なあなあ、じゃあ俺のことは覚えてるか?」

「私のことは?」

「よーし、今日はもうとにかく飲むぞー!」

改めて俺のことを説明。俺がかつてエルフの集落に現れた俺であるということを。

過去と未来を行き来したという、あまりにも非現実的な話ではあるものの、俺が俺であることを納得して信じてくれた皆は、本当に嬉しそうな顔をして俺を歓迎してくれた。

「すごい……おにいちゃんは、ほんもののラガーンマンなの!?」

「ほんものの、タピル・バエルさまなの!?」

「知らなかった……ラガーンマンって実在した人だったんだ……」

「エスピお姉ちゃんやスレイヤお兄ちゃんより年下で、だけどお兄さん?」

そして、俺が過去から帰った後に生まれた若いエルフたちにとっても、俺の存在は驚いて当然。

小さい子供たちは目を輝かせ、アミクスや俺と同じ年齢ぐらいのエルフたちも戸惑っている様子。

「まぁ、そういうわけで……かつて俺たちが魔王軍のオーガたちに襲われたときに、このお兄さんが助けてくれて、そして元の土地に住めなくなった俺たちを援助までしてくれた大恩あるお兄さんに……心からの感謝を込めて、乾杯」

「「「「「乾杯ッ!!!!」」」」」

そして、そんな中で族長が代表して乾杯の挨拶をして宴は本格的に始まり、談笑したり、歌や踊りが披露されたり、美味しい料理が次々と出てきたりと、思えばこんな風に大人数で楽しく過ごすのは久しぶりだなと実感しながら、俺も楽しんだ。

~~~~~

「うへへ~、お兄ちゃん~、かわい~な~」

「うおっ、エスピ! お前、飲んでるのか?」

「まったく、下品だね、エスピは……お兄さんの教育に悪いから離れたまえ。お兄さん……お酒は?」

「アース・ラガンよ。小生の教え子である子供たちと少し話をしてもらえないだろうか? 子供たちにとってお前はヒーローなのだからな」

お酒には気を付けて、色んな人と話して、笑って、子供たちの話を聞いたりと、何だか笑ってばかりだった。

俺が過去で戦い、そしてアオニーが命を懸けたことは、こうしてこの瞬間に繋がっていたんだと思うと、俺も改めて嬉しくなった。

「アース様、お料理の追加をお持ちしました……あっ、アース様自らの手で食べられる必要はありません! こ、ここは、私が……あ、あ~ん」

「いや……あの……」

「そうだ! パイパイ! アース様……私のとっても美味しいパイパイを召し上がってください!」

まぁ……ちょっと笑顔が引きつってしまうこともありはしたがな……

「アミクス~、あんたそういうのはやめなさい!」

「んもう、お母さん、離してよぉ。私は今、アース様の……」

「いや、俺もやめて欲しい……友達なんだからもっとフランクに……」

「滅相もないよ! 私はアース様がいなければ生まれてこなかったんだし……それこそ、自分の人生も身も心も全部アース様に捧げるぐらいじゃないと! ……でも……良かった……そんなアース様が……本当に素敵な人で……」

引きつるじゃないや。引いちゃう。

これは……なんだか勢いはシノブに通ずるところがある気がする……

「ったく……」

「あ……アース様、どちらへ?」

「……トイレ」

「でしたら、ごいっ―――」

「それはダメだろうが! エスピ、スレイヤ! 取り押さえろ!」

何だか、色々と見たり、話したり、笑ったりばかりで時間もあっという間だ。

だけど数時間以上ノンストップでこんな感じかもしれない。

子供たちはだんだんと眠くなっているようだが、大人たちは子供たちが寝てからがむしろ本番というような感じで、森の賢者なんてイメージあるエルフたちが、この時ばかりはゲンカーンの漁師のおっちゃんたちの飲み会みたいにハシャいでるように見える。

「ったく……俺の中でのエルフのイメージがどんどんと変わっていくな」

『それは余とて同じだ』

宴の輪から少し離れ、周りに人がいないのを確認して、少し森に入って俺はトレイナと話をする。

そして……

「で……」

『ん?』

「……どーしたんだよ、急に」

『何がだ?』

この集落に着いてから色々な情報やらが頭に入ってきたし、周りに人もいて切り出せなかったが、それでも俺は気にしていたことを聞いてみた。

案の定、トレイナはすっとぼけようとしているけど……

「もう、それなりの付き合いだろ? で……どーしたんだよ……なんか、色々と考えてるみたいだけどよ」

『むっ……』

「最初はエスピとスレイヤにばかり構って……寂しがってんのかなって――」

『どだ、だ、誰がだ! き、貴様は何を言っている! 余を誰だと思っているのだ!』

トレイナは何か様子が変というか、まぁ、なんか色々と考え込んでいるみたいだ。

その内容が分かっていなくても、ずっと一緒に居たんだから俺にも分かる。

つか、俺の頭の中が分かるんだから、聞き返さなくても俺の意図は分かるだろうに……

『……ふん……余を心配するなど一万年早い……ちょっと、次のトレーニングはどんなメニューをやるか考えていただけだ』

「ったく……」

とはいえ、それでも認めない師匠。

まぁ、まだ色々と考えている段階で話をしたくないってことなのかもだな。

「ふぅ……」

『…………』

ちょっと森を抜ければ、近くに小川が流れていた。

集落から宴の声は耳に入ってしまうが、穏やかで、そして何だか落ち着く。

『まぁ、とにかく……ノジャはまだしも、貴様がハクキに興味を持たれている以上……そして、奴がまだ魔王軍残党として奴の中での戦争が終わっていないという認識であるのなら……いずれ貴様の前に現れるだろう』

「ハクキか……」

『奴は六覇最強……流石に、余や冥獄竜王バサラほどではないが……限りなく近い領域の力を持っている。そして、この十数年でどれほど強くなったかも分らぬしな……』

「うわ……めんどくさ……つか、それこそ親父が何とかしろってんだよ。ゴウダと戦ったのも俺だったし、パリピは生きてたし、ライファント、ノジャ、ヤミディレも健在だし……七勇者が六覇を一人も討ち取ってなかったってのは地味にショックだったんだからよ!」

『ふん。まったくだな』

河原に腰を降ろして談笑する俺たち。

昼間、エスピたちから聞いた話を振り返りながら、今後のことを話し合った。

「それにしても……エスピとスレイヤには……どのタイミングであんたのことを話そう……」

『話すのか?』

「まぁ、これから一緒に旅するなら、隠し事しながらするよりは……信じてもらうのは難しいけどな……」

実際、サディスにしかまだ話してないんだよな。

まぁ、色々と混乱させちまったが、最後は信じてくれた。

だから二人も……でも……

「ただ……スレイヤはまだしも……問題はエスピか?」

『ん?』

「だってほら……実際……エスピってあんたを討ち取った一人なわけだし……」

『まぁ……な……』

七人がかりで大魔王トレイナを倒した。そして殺した。

エスピはその七人の一人なわけだ。

だからなんかこう……色々と複雑というか、俺も板挟みというか……

『それはたぶん……そこまで心配いらないと、余は思っているがな』

「え?」

『余とて別に今更恨んでいるわけでもなく……そしてエスピも……今の様子を見ていると、そこを思い悩むほど弱くもないと思うがな』

しかし、俺の悩みは要らない心配だと、トレイナは苦笑した。

そして、言われてみればそうなのかもしれないとも思った。

俺の中ではやっぱりまだ、ちっちゃい頃のエスピが頭にあるけども、今のエスピはもっと……

「ん?」

『うむ……』

そのとき、俺はこっちに向かってくる気配に気づいた。

トレイナと頷き合って会話を中断。

来る気配は一人。

誰が……

「おや、お兄さん。ここでサボり?」

「あっ……族長」

族長だった。

「族長は?」

「俺もサボり。酒は体に悪いし苦手だし……俺ってそもそも宴会は苦手だからさ。あの盛り上がり。こ~、リア充たちがウェイウェイやってる感じ……俺、本質は陰キャのボッチだから」

「は、はは……なんかよく分からねえ用語が出てきてるが……それって、俺の歓迎がめんどくさかったってことか!?」

「そこまで恩知らずじゃないよ……と言いたいが……俺の娘をどうしてくれるのかという気持ちもあって、何だか微妙な気分が―――」

「おいおい!」

半分冗談だけど、なんか半分本気な感じの族長。いや、半分以上本気なのかもしれない?

なんてことを感じていると、族長も俺の隣に腰を降ろした。