軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三百七十二話 放置

過去に会った人たちと再会したり、その後についての話を聞く中で、あいつの名前も出てきた。

「コジローか……なぁ、エスピ。コジローは俺のこと……知ってんのか?」

俺が帝国に居たころまでの間、俺はコジローと会ったことはなかった。

当然、向こうは「アース・ラガンはヒイロ・ラガンの息子」ということは知っているだろう。

でも、ノジャが知ってしまったように、コジローも俺が昔に会ったことがあるかどうか知っているのかが気になった。

「ううん。コジローは知らないよ。その話はしてないし……」

「あっ、そうなんだ」

「まぁ、コジローは知らないというか……そういうのは深く聞いてこなかったから……かつて、お兄ちゃんが居なくなって私が連合に戻った時も……あんまり深く聞いてこなかったし」

「……そっか」

深く聞かずに、ただエスピを見守っている……みたいなイメージが思い浮かんだ。

会ったのは一日にも満たない間だったが、それでも拳を交えて俺もそれなりにあいつのことが分かった気がするしな。

「でも……一応……コジローだけはこの集落のこと知ってる……かも」

「……なにっ!? ……って、かも?」

それは意外なことだった。

俺ら以外には知られちゃならんこの集落を、まさかコジローまで知っていたのか?

「戦争が終わって、コジローがジャポーネの戦士長になってからね……いくら私有地とはいえ、ここはジャポーネ王国の領土だし……表向きは私が所有しているってことになってるから……」

「それはつまり……ここにエルフが住んでるってことをコジローも知ってると……」

「ううん。私は土地買ったけど、コジローは詳しく聞いてこなかった。ただ、コジローは私が土地買ったの知った時……『おお、エスピ嬢がジャポーネの地主になったじゃない……こりゃ、機嫌を損ねないように誰も入らないように言っておかないとじゃない♪』って感じで……私はエルフについて話てない。でも、たぶんコジローのことだから調べるぐらいはしてると思う……だけど言ってこない」

「つまり……知ってるけど、追及してこないってことか?」

「うん」

言われてみて……不思議なものだけど、俺は今の話を聞いて「コジローらしい」と思ってしまった。

なんとなく、「あいつはそういう奴かもな」って、なんだか納得しちまった。

「ただ、いずれにせよ近いうちにコジローとも会うことになるかも……」

「え? そうなのか?」

「うん。ノジャとベンリナーフの遺跡調査……二人がこの大陸に来てるってこともあるし、流石にコジローも顔出しはするだろうからね……」

「なるほどな……」

つまり、ベンおじさんとは違った意味でも、遭遇したらまた何か色々とあるかもしれないと……これは……

「ノジャのこと……ベンおじさん、コジロー……そして、シテナイだっけ? なんか、混乱してきたな」

本当に色々ゴチャゴチャしてきたもんだな。

「だね」

「戻ってきて早々色々と巻き込んじゃうあたり、そこも流石お兄さんってところだけどね」

「確かにな」

「お兄さんはそういう人なんだよね……」

俺が頭抱えながら思わずつぶやいた言葉に、エスピたちも苦笑しながら頷いた。

そして……

「あ、あの、アース様! そろそろお話は、よ、よろしいでしょうか? 私を放置しないでよぉ……じゃなくて、放置しないでくださいませ!」

「……ん?」

「「「「あっ……」」」」

と、忘れていた。抱えてしまったもう一つの問題のことを。

さっきから顔を赤くしながらもウズウズした感じで落ち着きない様子のアミクスが、タイミング見計らって俺の服の袖をちょこんと指でつまんで引っ張ってきた。

「えっと、アミクス……」

「も、申し訳ありません、その、大事なお話かな~って思ったんだけど……その、そろそろお話ばかりじゃなくて、あの、わ、私たちの集落を案内したいな~とか、わ、私のお気に入りの場所も見て欲しいなとか思ってまして……」

「あっ、……えっと……アミクス……」

「は、はい! アース様!」

「いや、何で急に『様』とか付けるんだよ……友達だろ?」

「めめ、滅相もないよぉ! だって、アース様は私のヒーローでエルフの恩人様なのに馴れ馴れしくするなんてできるわけないよぉ! だから、私、精いっぱいのオモテナシをします……何でもします!」

「だから、そういうのいいって! ほら、お前の親父さんも見てるし!」

「う、うん……そうですよね……お父さん……アミクス……たぶんね、今日……大人の女の子に――――」

「あ~、もういいって! とにかく敬語禁止だ、苦手だ、嫌だ、変だから!」

俺の正体について色々と知ってしまい、態度を一変してきたアミクスだったが、流石にアミクスを大切にしているエスピ、スレイヤ、ラルウァイフ、そして族長の前で「様」とか呼ばれたりそういうのはまずい。

「アース様は……嫌ですか? アース様ぁ……」

「だからまずいって! ちょっと立てって!」

いや、それどころか両膝を突いて、俺に祈るように手を合わせながら下から目を輝かせて縋りついて来るようなアミクス……もはやこれ……崇拝されているような感じだぞ!?

「はぁ~……とにかくお兄ちゃん……今日はもうゆっくり休んで、皆と夜は楽しんで、それで明日からまたゆっくり考えよう」

そして、エスピももう諦めたのか、話はこれまでだと中断して苦笑した。

「その方がいいね、お兄さん。あと、アミクスも……お兄さん嫌がってるし……」

「ある意味で行儀が悪いぞ、アミクス」

「あのね、アミクス……お父さんの前でそういうことやめてね」

確かにこれ以上の話は俺も混乱してきたし、区切りにするには丁度よさそうだ。

それに、この状態じゃな……つか、アミクス、他の人の話を全然聞いてなくて……確かにこれはまずいかもしれないな……

『ふぅ……童……』

『ん? トレイナ、どうした?』

と、そのとき、トレイナが俺の傍らで……

『今宵の宴、ハメを外しすぎるなよ? ちゃんとヴイアールでのトレーニングもあるしな』

って、この状況で言うことか!? まさかの何の前触れもないトレーニングのお話に俺はちょっと身構えてしまった。

『えっと、今日もやるのか?』

今日ぐらいはいいんじゃないか? と聞き返すと、トレイナがギロッと俺を睨んで……

『たわけぇ! 貴様はこれから、状況によってはノジャと交戦することになるのだぞ!? 昔と違って、何の容赦もせずに本気でノジャが来たら、どうする? 余が知っているのはあくまで十数年前のノジャであって、もしあやつが昔より強くなっていたらどうする! いかに、エスピとスレイヤの助力があるとはいえ、楽勝などと思ったら大間違いだぞ!』

『あっ……そ、それもそうか……』

『うむ! だからみっちりトレーニングだ! というか、予想通りこのままではエスピとスレイヤや他の連中がいると、コッチで構っ……トレーニングがしにくくなるので、夜中はその遅れを取り返すためにもみっちりトレーニングだ! 分かったな!』

『お、おう……』

有無を言わさずなトレイナの命令。

まぁ、確かに相手は六覇のノジャなわけだし、ちゃんと対策立てとかないとな。

同じ手は二度と通用しないだろうし、トレイナの言うことも分かる。

それに、これからもエスピとスレイヤと行動を共にするということで、なかなか人目を気にせずトレーニングというのも……まぁ、二人には……タイミング見てトレイナのことを話してもいいんじゃないかとは思ってるけど……

ただ、一つ気になるのは……

トレイナ……

なんか少し、拗ねてない?

ほっぺた、プクッとさせてるけど……