軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百七十六話 知るべきではないこと

「で、これからお兄さんたちはどこへ行くじゃない?」

「んだよ。もう俺らを見逃すんじゃねぇのかよ」

「ただの興味本位じゃないの。まっ、言いたくなければ無理には聞かないじゃない」

戦い? を終えた俺とコジロウ。

道具屋の店内で雑談していた。

「とりあえず、連合軍全体にはまだ知れ渡っていないが、七勇者や将軍たちには既にエスピ嬢が行方不明という情報が流れ、魔王軍の捕虜にされたのではという疑いも持たれているじゃない」

「ほぉ~」

「ベトレイアルとか血眼じゃない? ま、オイラはベトレイアルが、でぇきれーだがら教えないじゃない! 行方不明のエスピ嬢が、強くて優しいイカした白馬の王子様と逃避行……邪魔しちゃ白馬に蹴り殺されるじゃない!」

「いや、王子さまは俺じゃ……つか、あんたもいい加減だな」

本来なら、歴史や戦争を大きく左右させるかもしれないエスピのことを、こうやって笑い飛ばすとはずいぶんと豪快というか……

「ただ、それはそれとして……お兄さんは随分と強いけど、戦争にも参加しないで何をしているじゃない?」

「おいおい、何だよ。さっきから尋問しているのか?」

「だから、興味本位じゃないの。人類が、そして世界が知らないまだ見ぬ強者……興味持って当然じゃないの」

「そ、そうか……」

強者……か……現役バリバリの七勇者に褒められる。

しかも、勇者の息子とかそういう先入観抜きでだ。

ちょっと照れる……

「そういう意味では……お兄さんもスゴイが……本当にスゴイのは……」

「ん?」

「お兄さんに戦い方を教えた人……じゃないの?」

「ッ!?」

一瞬、マジでドキッとした。こ、こいつ何を……

「お兄さんは確かに強い……そしてそれは才能ではなく努力型……お兄さんの身体能力を把握したうえでそれをバランスよく鍛え上げ、安定感もあるうえに、爆発力もある……何よりも長年の戦闘経験があるオイラですら知らない技術……その技術もまた上辺だけではなく奥が深い濃密なもの……とてもじゃないがお兄さんの若さで……ましてや一人でそこまでに至るのは不可能……」

「そ、それは……」

「きっと……よほどスゴイ師匠に鍛えられたんじゃないかって、想像できるじゃないの」

あ~、ビックリした……一瞬、トレイナのことがバレたのかと思ったら想像か……でも、あの一戦だけで俺に師匠がいることまで見抜くとは……こいつ……

『うむ。流石はコジロウだな。うむうむ。すっごい師匠が童にはついているのだ。うむうむ! すっごいのだ!』

で、その張本人は俺の背後で嬉しそうにニンマリ笑顔で頷いている……いや、過去にあんたを倒した七勇者の一人なんだけど……

「バランス、安定感、技術、そして爆発力……そういうところは……そうだな……オイラたちと同じ七勇者のヒイロとは大違いじゃないの」

「……ぬ……」

「ヒイロは爆発力のみに特化して、不安定すぎるじゃない」

そこで親父の名前が出てきたので、俺は思わず反応してしまった。

「おやj……っ、勇者ヒイロが不安定?」

「ん? ああ。ヒイロはハッキリ言って基礎ができていない……爆発力やら元々の才能やらでなんやかんや強敵を倒す一方で、意外と誰にでも苦戦する……ツボにはまった時は天下一品だが、振り回されれば意外と脆い……そういうやつじゃない」

「……そう……なのか……」

「まっ、だからこそ今はミカドのジーサンとか、あいつの師匠でもある『総司令』にビシバシされてるじゃない」

最強無敵の勇者……というわけではなく、なんか親父らしいなと思っちまった。

だからこそ、戦い方だけじゃなく、安定感がどうとかそういうことを含めると、本当に俺は親父とは全然違う道に……ん? あれ? 今、こいつ……親父の……

「そうだ、お兄さん」

「ん?」

「お兄さんは……ヒイロ……そしてマアムとどういう関係?」

「ぶっ!?」

と、まさかの不意打ちの質問に、俺は今度こそ吹き出してしまった。

「な、何を、言って……何で俺が七勇者と……」

「似た匂い? 何だか二人と同じもの……近い何かを感じるじゃない。どういう関係か気になるじゃない?」

「え、に、似た……?」

「戦い方はまるで違うのに……何だかお兄さんと接していると、どうしてもヒイロとマアムが頭の中に思い浮かぶ……そして、オイラが二人の名前を出したら、めっさ心臓が跳ね上がったじゃない♪」

こ、こいつ! 飄々としながら、やっぱ尋問していたのか!?

ってか、目が見えないからこそなのか、こいつは人よりも色々なものを感じ取り、視れるって……

「お兄ちゃん!」

「ん? おお……」

そのとき、店の奥からエスピが駆け寄ってきた。

ナイスタイミング!

軍から支給されていたローブは血で汚れていたので、新品の白のローブ。

新しい服を買ってやろうということで、気に入ったのを選ばせていた。

色々悩んでいたようでようやくいいのがあったのかな? と思うと、エスピは少しむくれていた。

「コジロウ! お兄ちゃんとあんま話さないで!」

「んあ?」

「エスピのお兄ちゃんなんだから……コジロウ、さっさと帰って! お兄ちゃんも、コジロウと楽しそうにしないで!」

「おっと~、それはすまないじゃない! でも、大丈夫。エスピ嬢の大好きなお兄さん、取ったりしないから安心するじゃなーい!」

「う~……」

おっと、俺がコジロウと仲良さそうに見えたのか、ちょっと嫉妬している様子だ。

なんか、コジロウに噛みつきそうなぐらい睨んでるな……でも……

「エスピ、それ買うのか? 似合ってるじゃねーか」

「え? ……う、ん、お兄ちゃん、これ、いいと思う? かわいい?」

「おお、かわいーじゃねえか」

「ん……えへへ……じゃあ、これにする……」

「そっか!」

「お兄ちゃん……ありがとう……」

「おお」

頭を撫でてやると、とても嬉しそうに笑ってすぐに機嫌を直してくれた。

「よかったじゃなーい、エスピ嬢。とってもかわいくなったじゃない」

「うるさい、コジロウ。見えないでしょ」

「見えなくても、虚無だったエスピ嬢の心や表情に花が咲いているのが分かるじゃない♪」

「なにそれ、意味わかんない」

なのに、エスピはすぐに機嫌悪くさせて……と思ったけど……

「だははは、機嫌直すじゃな~い。約束、もう嬢の邪魔はしないじゃない」

「うるさい」

なんだろうな……嫌いながらも……拒絶という感じではなくて、嫌いながらも心を開いているように見えるな。

「エスピ。他にも予備の服とか、欲しいもの買っとけよ」

「うん。お兄ちゃん、パンツも!」

「……おお」

「ねえ……お兄ちゃんは……こっちの猫さんの絵と……こっちのワンちゃん……どっちがかわいい?」

「両方買いなさい」

「え……両方? 両方もいいの!?」

「ってか、もっと買っとけ」

「うん! 分かった! お兄ちゃん、いっぱいありがとう!」

ふっ、俺がそんな質問に動揺すると思うな。

アマエと三か月も過ごしていたら、すっかりこういうのにも慣れたな……

「いやいや、お兄さん。そこはもうちょい照れながら、……履いて見せてみてくれ……とか、ちょっと照れながら言うものじゃない?」

「お兄ちゃんだからな。妹の扱いには慣れてるんでな」

「慣れ……お兄ちゃん、私以外に妹……いるの? ねえ、いるの? どこにいるの? 強いの? 私より強いの? かわいいの? 私より……好きなの?」

はぁ、何だか店中から注目されて騒がしい……が、とりあえずさっきのコジロウの尋問はウヤムヤにできたかな?

コジロウも疑いを持ってはいるものの、何か確信があるわけじゃなさそうだし、このまま――――

「まっ、さっきの質問は……もう聞かないことにするじゃない」

「ッ!?」

「この世には……知るべきではないことってのはあるじゃない。それにお兄さんとはまたいずれどこかで会いそうだし、そのときまでオイラが生きてたら聞くことにするじゃない」

そう言って、コジロウはボソッとエスピには聞こえないように俺に耳打ちしてきた。

このオッサン……本当に食えない奴だな……