軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十五話 看病と癒し

アカデミーを休んだ。

それは、鍼を体にぶっ刺した影響による。

体の節々が筋肉痛とは違う痛みに襲われ、体も熱く、気分もだるい。

「坊ちゃま……どうしてこのような……しかも、高熱を出されて……嗚呼、私の坊ちゃま」

意識朦朧。

だが、それでも僅かな幸せを俺は感じている。

いや、本当は僅かなんてレベルじゃない。

だって、あのサディスが付っきりで看病してくれるから。

何度も手拭いを冷やして俺の頭に乗せ、また交換の度に氷水に手を入れて、親身に……

「坊ちゃま、なぜ、自分を鍼で突き刺すなど……しかも全身に。本当に自傷行為ではないのですか?」

「ち、ちが、ゴホ。ひ、疲労回復のために東洋の針治療を試そうと……」

「それで体調を崩されては意味ないではないですか。んもう、私がどれだけ心配したとお思いですか?」

「わり……」

「旦那さまと奥様は帰って来れませんが、今日私は坊ちゃまから片時も離れませんので、どうかお体を……」

まさか、鍼で魔穴を無理やりこじ開けていたとは言えないので、訓練で疲れた体の疲労回復のために鍼治療を勉強しようと思ってという無理やりなウソをサディスに伝えた。

だが、サディスにとっては俺が鍼治療の勉強云々に関わらず、俺が体調を崩したことに、専属メイドとして傷ついている様子だった。

正直、サディスを心配させちまったことには胸が痛むが、久々に見るサディスの甘やかしモードに俺は嬉しかった。

とはいえ、俺はその幸せを存分に堪能できないでいた。

「つっ、うぐっ」

「坊ちゃま……腕や足なども痛んでいるようで……これも鍼治療をしようと?」

「ま、まあ、そんな感じ……うぐ」

「坊ちゃま!」

熱っぽく頭が痛いだけじゃない。全身に激痛が走り続ける。

鍼で突き刺した箇所だけ異常な熱を帯びながら、その箇所だけ刃物でグリグリ抉られているような痛みだ。

そのたびに俺は痛みによるショックで意識を失い……

『意識を失うなら、ヴイアールを唱えてからにしろ、童』

そんな俺の薄れゆく意識の中でトレイナの声が響き……

「夢の中でトレーニングだな、童よ」

「ぬおおおおおっ!? くそおおお、気絶しちまった!」

そして、意識を失えば夢の中で満面の笑みのトレイナが腕組んで待ち構えている。

「しかし、寝込むとは情けない。たかが、魔穴を2つ抉ったぐらいで……」

「め、面目ねえ……」

「だが、ここまで体調を崩すのは初日だけだ。以降は、痛みだけで開放することができるだろう。そのように、体が造り変えられている」

「痛みだけって……」

「にしても、ヴイアールを覚えさせておいて正解だったな。身動き取れず寝込んでいても、貴様を鍛えることが出来るからな」

「おきてれば……サディスに……」

寝ても地獄。起きても地獄とほんの僅かな癒し。

どっちかを取るなら起きている方を選びたいんだが……

「嘆くな。とにかく貴様には早く、『大魔超進化・ブレイクスルー』を覚えさせたい。それさえ終われば、あとは2ヶ月後までひたすらラダーとスパーリングだ」

トレイナは寝込んでいるなら寝込んでいるで、夢の中で存分に修行が出来るだろうと笑みを浮かべ、俺には若干それが恐ろしかったが、これも二ヵ月後のオッパイのためならば!

「さて、とにもかくにもこれで貴様の肉体は現在魔改造されている。これを続けていけば、貴様は一度の魔力放出量だけならば、同年代の奴らには決して負けぬだろう。しかし……それだけでは勝てぬ。理由は分るか?」

激痛と地獄のような苦しみと引き換えに得られる一発の魔法の破壊力。

だが、それだけでは勝てないという理由は勿論……

「ああ。俺の魔穴を開放して、放出する魔力を多く出来たとしても……俺の魔力容量自体が少ないから、一発強い魔法を放ったらそれで終わっちまう」

「その通りだ。そして、起きているときに貴様にも言ったが、体内の魔力容量は一種の才能。こればかりは直ぐに増やすことは出来ない。ならば、どうする?」

一回こっきりの魔法をぶつけ合うだけなら勝てる。

だが、戦いになればそれはできない。

もし、その魔法を回避されたら? ましてや、御前試合はトーナメントだ。

一回で魔力がゼロになっちまったら、もうその後は戦えなくなる。

すると……

「だから……体内の魔力を『放出』するのではなく、肉体の『周囲に留める』のだ」

「……?」

「こんな風にだ!」

次の瞬間、トレイナの肉体を赤い光が覆った。

それは、最初の夢で見せてもらった技術。

「魔力を肉体の周囲に留める。全てを肉体の身体的能力上昇のみに使う技術だ」

「周囲に……留める?」

「身体の強化、自己治癒力のアップ……貴様の場合だと、先ほどの数値……」

●童(二ヵ月後)

・魔力容量:100

・魔力放出量:90

「これの場合、仮に強力な呪文を使えば……」

●強力な魔法を使った童

・魔力容量:100→10

「こうなるわけだ」

「まあ、そりゃな」

そう、一回打てば終わり。だからこその、一発勝負になるわけだ。

「だが、仮にこれを放出するのではなく、肉体に留めれば……一瞬で魔力が無くなるリスクを低減できる」

「……そうなのか?」

「そうだ。ブレイクスルーは常時魔力を消耗する……が、たとえばスパイラルブレイクのような大技を使いさえしなければ、常人より遥かに向上した力をそれなりの時間、維持できる。たとえば……」

●ブレイクスルー状態の童の10秒後

・魔力容量:100→90

「正確に言えば少し違うが、ザックリ1秒間に魔力が1減ると考えればいい」

「あ~……なるほど」

「しかし、ブレイクスルーを一度発動させるには、全身の魔穴が一定以上開いていないとできないのでな……ゆえに、今、貴様はその体造りということだ」

ザックリとした説明。もちろん、防御をしたり、ブレイクスルー状態で攻撃したりすれば、その分、魔力はもっと早く減るだろう。

だからトレイナの計算では、最高で100秒間、ブレイクスルー状態で戦うことができる。

「とりあえず、ここから先は理屈よりは体で覚えた方がいい。その点で、このヴイアールでのイメージトレーニングは非常に効率がいい。余が実演できる上に、戦いながらコツを掴める」

そして、ここから先はもう理屈抜き。

後はひたすら……

「さあ、童! 何べんでも死んで覚えていくが良い!」

「ちょ、ま、待て! うお、おおおおっ!?」

「これは訓練で身につけられる! 火や雷などのような二次的な効果はないが、詠唱が一切不要。まさに体術をこれから使っていく貴様にはおあつらえ向きな技術だ」

大魔王とひたすら、ドリームスパーリング。

「これが余の開発した、大魔超進化・ブレイクスルーだ」

つか、夢って本当に死なないよな?

で、…………とりあえず死にまくった。

「ぶはっ! ……はあ、はあ……あれ?」

「す~……す~……」

眼を覚ました俺は自分のベッドに。

そしてベッドの脇には、サディスが椅子に座って転寝していた。

「あっ……夢から覚めて……」

『ああ。随分と濃くトレーニングできたな。やはり、アカデミーはサボったほうがいいのかもしれんな』

「………」

寝ても覚めてもそこに居る大魔王。うん、何というか本当に運命共同体だな。

「ううん……ぼ……ちゃま……す~、す~……」

「っと……」

サディスから寝言。しかも俺のこと。何か嬉しい。

「……へへ……ありがとな……サディス」

『一度ぐらい余にも礼を言ったらどうだ?』

「………」

『おい、無視をするな』

寝ているサディスを見ていると、ドキドキする一方で、申し訳なさも感じる。

結構疲れているんだろうな。

意識が戻らない俺を一日中片時も離れずに看病していたんだろうから……だから……丁度枕もとの俺の目の前に、スカート短めのサディスが椅子に座って、少し足元のガードが緩くなっているのも、見ちゃダメなんだ。

「うん、ん……」

「……ジー……」

「かくん」

「ッ!?」

白のレース! 大変結構! 正に濃厚なミルクは栄養満点。こんにちは!

『おい、余を無視して何を見ている』

これは、仕方ない。不可抗力だ。

今のは、別に覗いたわけじゃねえ。だって俺はベッドから動けないんだから、見えたのは事故だ。

だから、もうちょい見ちゃっても……

「ぼ、ちゃま……ん……だめ……」

「うお、おおお! もっと足が開いた!」

さっきより寝言を言うようになり、足が段々と開いてきて、いや、今更、下着なんて布切れを見たぐらいでなんだってんだ。

そう、だから別にこれは大したことないわけで、だからガン見しても大した問題じゃないはずだ。

「だめで、す……ぼっちゃま……これ以上は……言いつけちゃいますから♪」

「ッ!?」

その瞬間、俺は足を段々大開きにしていったサディスの言葉にハッとして顔を上げた。

するとそこには……

「んふふふふふ~♪」

口元を三日月のように鋭くした笑顔のサディスが……

「さ、サディス……」

「坊ちゃま、覚えておいてくださいね。寝ている女子が男の名前を呼ぶ寝言は、たいていが寝ているフリですので♪」

「ッ!?」

「あざとい女の作戦ですよ? うふふふふ、また一つ、童貞の坊ちゃまの夢を壊して申し訳ありませんね~」

やられた。こいつ、最初から起きてたのか!?

いや、多分寝てはいたんだろうけど、俺が起きたのと同時ぐらいに眼は覚めてたんだろう。

「にしても嘆かわしいですね。坊ちゃまも15。世間では男女交際や初体験等、性的なまぐわいをそろそろ経験する同年代も居るでしょうに、メイドのパンティに鼻息荒くして、んふふふふふ~、小心者ですね~、坊ちゃまは」

「うぐっ、ぐっ……」

ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて俺をネチネチと攻撃するサディス。

くそ、ハズィ。

俺が倒れていた時はあんなに優しかったのに……

「いいですよ……坊ちゃま」

「……え?」

「それぐらいでしたら……優勝商品はオッパイですが……お疲れを癒すためのパンティぐらいでしたら、今でも……」

ッ!? なに!? え? 今、サディスが意地悪な顔から、少し気恥ずかしそうにしながら女の顔を? えっ? 癒しのパンティって何!?

「サディス……?」

「今回、坊ちゃまが倒れられたことは、専属メイドとして一生の恥」

「いや、そ、そんな! アレは、針治療だったりトレーニングの筋肉痛だったり……」

「ですので、お詫びではありませんが! わ、私のパンティぐらいで坊ちゃまが少しでも癒されるのでしたら……」

サディスは全然悪くないのに、傷ついてる? 申し訳なく思ってる。

何言ってんだ、お前は何にも悪くねぇ。けど、それはそれとして、俺が望めば見せてくれるのか? もっと、サディスのパンツを、見れるのか!?

「……ほ、本当か?」

「坊ちゃまが、『声に出して』望みを仰ってくだされば……従います」

できるわけがねえ。そんな、命令みたいなこと。

そんなの、官能小説で金持ちのクズがメイドを悪戯する的な、メチャクチャ興奮するシチュ……じゃなくて、でも、俺は癒しが必要なわけで、サディスも多分見せたいんだろう。きっと勝負パンツなんだ。

うん、だから俺は仕方ないから見るんだ!

「サディス。俺に、サディスのパンツ見せてくれ!」

「おい、今、帰ったぞ! アースの容態はどうなんだ!?」

「アース、ただいま! 待っててね、母さんがすぐにあんたを治し……治……」

そのとき、俺の部屋の扉が勢い良く開けられ、そこには血相を変えた親父とお袋がいた。

「……さ……サディス……」

「んふふふ~、坊ちゃま。まだお熱ですか? ご両親が帰られた気配ぐらい察知できないといけませんよ~?」

「……ふ、二人は、か、帰らないって……」

「おや? 両親が居なければ、そういう命令をする……坊ちゃまはそういう男なのですね~♪」

や、やられた……さっきまでの色っぽい女の顔から、また悪魔の微笑みに!

『やれやれ……』

トレイナも呆れ、そして……

「「こんのバカ息子オオオオオオオオオオオオ!!!!」」

親父と母さん。二人の勇者に俺はぶん殴られた。