軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二百四十五話 男の意地

俺からすれば数か月ぶりの再会。

だが、こいつらにとってはそうではないだろう。

「あなたは……ブロッ! ブロではないですか!」

「お~……ブロ……」

現れてニカっと笑うブロに、クロンは満面の笑みを浮かべて駆け寄り、アマエも驚いた顔しながらもトコトコと駆け寄った。

「かっかっかっか、いよう、妹分! んで……お前さんは、アマエか? おお~、相変わらずちっこいな~」

「うわ~、ブロ! 本物のブロです! ごきげんよう!」

「アマエ、おっきくなったもん。これからつよくなるもん」

その手で豪快に二人の頭をクシャクシャ撫でるブロ。

「あ、んもう、ブロ!」

「ん、やめる! ん! ブロ、やめる!」

クロンはそれをくすぐったそうに、そしてアマエはウザったそうにしながらも実際は満更でもなさそうな顔をしている。

「妹分。元気だったか? それに……さっきも言ったが、本当に逞しい目をしてるぜ? 強くなったんだな」

「そうなのですか? あなたとの約束……『イイ子でいるのもいいけど、強くもなろう』……その約束を果たせているのなら、嬉しいです」

「おう! 色々あったんだな……イイ出会いも」

「はい! 恋というのも知りました!」

「おっ、そいつは嬉しいね~! お前さんのコイバナを聞けるとは、何だか安心するぜ!」

こいつらが一緒にいる光景は初めて見るのに、やけにその光景が自然に見えてほっこりした。

「彼は……君らの友達かい?」

「ん? ん~……まぁ……な」

「ふむ。なかなか良い男じゃないか……」

一方で、ブロと初対面の王子だが、それほど悪くない印象を受けたようだ。

まっ、ブロは人の内側に平然と入り込もうとしてくる奴だから、ウザったいところもあるが、悪い奴でもないからな。

だが、そんな中で……

「おい、アース・ラガン」

「ん?」

「お前は今後我らと共に行動しないと言っていたが……まさか、そのお前の代わりに、こいつにクロン様を守らせるつもりか?」

「クロンを……じゃねぇ。クロンとあんた、二人ともをだ」

「……なに?」

現れたブロを鼻で笑って見下すかのように、ヤミディレは不満そうな表情を浮かべた。

そう、それがパリピからの提案だった。

「ブロはカンティーダンでミカドのジーさんに保護されて、帝都に居たみたいなんだけどな……」

「なに? ミカドの?」

「ああ。でもコマンの……あ~、パリピのスパイだった俺の元クラスメートの親がな、帝都を離れる前に裏工作してブロを釈放してたみたいなんだよな。んで、そのブロとここで待ち合わせし、今後はあんたたちと一緒に行動してもらおうってな」

「……ぬっ……なんと……パリピとそんな話をしていたとは……」

天空世界で魔水晶を通じてパリピと話をした時に出されたこの提案。

あいつの提案に従うのはハッキリ言ってムカつくところだが、それでもクロンたちの今後を考えたら、ブロと一緒に居てもらった方が安心度も増すと思い、仕方なく提案に乗ることにした。

だが、ヤミディレはその話を聞いて、微妙な顔を浮かべていた。

「そうか……だが……くだらんな」

「俺じゃ、不満っすかい? 師範」

「笑わせるな、ブロ。道場から飛び出して、外の世界で遊び惚けていたお前が……アース・ラガンはおろか、マチョウよりも遥かに劣るお前が、我々を守るだと?」

ヤミディレのその手厳しい言葉には、流石にブロも苦笑した。

「かっかっかっか、相変わらず厳しいっすね、師範は」

「んもう、ヤミディレ! そんな言い方は無いと思います! ブロはとっても頼もしいですよ?」

「いやいや、いいんだよ、妹分。俺も俺の力は分かってるからよ」

「で、でも……」

クロンがヤミディレの言葉に頬を膨らませて怒ろうとしたが、それをブロが制して止めた。

「その通りだ、師範。俺は外へ飛び出した。師範が来た外の世界を見ることで……俺も同じ世界を知りたいってな……」

「……………」

「そして、大人たちの世界、力、社会のデカさを思い知らされ、同時に自分がいかにちっちぇかも分かったんだ」

「ふん。ならば――――」

ヤミディレの言葉はある意味で正しい。

数カ月前の時点で、俺はブロとのタイマンで勝っている。

ブロは弱くない。

だが、それこそパリピやヤミディレのような六覇クラスと比べるとどうしても……でも……そこじゃねーんだ。

「でもな、師範。確かに今の俺はまだ弱い。単純な戦闘力だったら、この数カ月で兄弟との力の差ももっとできちまっただろうな。ましてや俺には妹分や師範が持っているような眼もない」

「ああ……分かっているではないか」

「だけどな……」

「?」

「外でそれなりに生活し、表も裏もひっくるめて色んな連中と付き合ってきたから……どうやったらトラブルを起こさないか……うまく収められるか……そのうえで、どうやって楽しむのかも学んできたつもりだ」

「……なに?」

ブロには経験がある。

俺も含めてここに居る誰よりも、表も裏も含めて世間や社会の中で生き、時にはそれらと揉め事を起こすこともあれば、うまく付き合ってきたりもしている。

それは、戦後からほぼずっとカクレテールに居たヤミディレにもない経験や知識。

そう、これから必要なのは、ヤミディレやクロンをトラブルから守る実力だけではなく、そもそもトラブルを起こさせないようにうまくできる奴が必要なんだ。

確かにこいつは本来世間からのはみ出し者でもある喧嘩好きの不良だが、友達は多かったし、色んな大人たちとも付き合っていた。

そして、その上でこいつは楽しんで生きていた。

まっ、その裏では色々と抱え込んだり、変な意地やポリシーを持っていたりしたが、それでもクロンとヤミディレが絡むのであれば、こいつが何を優先するかは明らかだ。

「もちろん、俺だってイザという時は体を張ってあんたらを守れるぐらい強くなるさ。だけど今は一緒に……楽しまねーっすか? 十数年も背負ってたもんも、少しは忘れて……もちろん、忘れられねぇ重い荷物は俺も一緒に背負うっすよ」

「……なんだと?」

今のブロから感じるのは、以前のように意味不明な不良の意地みたいなもんとは全く違う、言うなれば男の意地。

その言葉には確かな熱を感じた。

「ブロ……お前……少し変わったか? カクレテールを出て、たまに道場に外の連中を連れて短期間修行をしに戻ってきたときもあったが……その時はどこか、くだらん不良という生き方にこだわる一方で……マフィアの壊滅で燃え尽きたり……もっと、つまらん腐った目をしていたのだがな……」

ヤミディレも、ブロのその熱を感じ、少し不思議そうな表情を浮かべていた。

その問いに対して、ブロはチラッと俺を見て……

「そりゃもちろん……外の世界に飛び出した時の初心を忘れて、腐ってつまらくなっていた俺を……思いっきり殴ってボコボコにして引導を渡してくれた……最高にイカしたダチと出会えたからっすよ!」

「……ぬっ……む……むぅ……」

その真っすぐでギラギラした眼は、あのとき燻っていたブロには無かったもの。

むしろ、これが本来のブロなんだろうな。

ヤミディレもその熱に押された様子でもう何も言わず、そしてブロはもう一度俺を見て、ニカっと笑って親指を突き上げた。

ちょっとムズ痒い気もしたが、俺は改めて、今のブロなら安心して任せられるなと思って、俺も笑って頷き返した。