軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十二話 宣戦布告

「おーい、アース~!」

「そこに居たか……」

俺がトレイナと話をしているところに、フーとリヴァルは俺のことに気づいたようで、こっちにやってくる。

「よう、久しぶりだな」

「アースも久しぶり! うん、あんまり変わってないかな?」

「少しは成長したのだろうな?」

嫌味のつもりはないのだろうが、開口一番での「あまり変わってない」は、俺に「成長してない」って言っているような気がしたが、笑って流した。

「ったく、久々会ったのに騒がしい奴らだぜ」

「え~、そうかな? そうだ、後でお土産あるから持って帰ってね」

「ふん、くだらん」

ニコニコと幼いガキみたいに擦り寄ってくるフーに、くだらねーならこっち来るなよと思うリヴァル。

まぁ、フーは別にいいとして、リヴァルは昔からこんな感じだ。悪い奴ではないんだが、いつも冷たいやつだ。

「で、留学はどうだったんだ?」

「うん、すごい勉強になったよ! 色々な魔法に触れられ、学び、身について……大変なこともあったけどね。一足早く実戦も経験したしね」

「確かに面倒なことはあったな。突如、留学先に野生の火竜の群れが襲撃し、自分たちも臨時戦士として戦ったものだ」

なんか、少し自慢が混ざっているような気がする。

案の定、俺らの周りに集っている連中から「聞きたい聞きたい!」と声が上がっている。

「ほー、そうか。だが、この時期に帰ってくるとはな……てっきり、卒業式付近に帰ってくると思ってたんだが」

あんま自慢話を聞いてもミジメになるだけだから話題を変えようと思っていたところ、俺の問いにフーとリヴァルはギラッとした目を俺に向けてきた。

「御前試合に出ようと思ってね」

「俺もまた、自分の強さの証明のため……」

え……?

「アースも出るんでしょ? でも、多分もう僕たち……アースにも姫様にも負けないかも」

「悪いが覚悟しておくことだな。俺たちは実戦を経て、もうお前よりも先の領域に行っている」

御前試合。それは姫に勝つかどうかで優勝が決まると思っていた。

だが、こいつらも……?

「すごーい! じゃあ、フー君もリヴァル君も出るってことは……」

「今度の御前試合は、七勇者の子達で繰り広げる戦いってことじゃんか!」

「うわあ、私までドキドキしてきた!」

「四人の勇者の子達が激突するなんて、帝都が、いや世界中が驚くぞ!」

二人も御前試合に出る。そのことで盛り上がるクラスメートたち。

そして、二人から滲み出る自信のようなもの。

まるで、「負けるわけがない」と確信しているかのようなオーラが溢れている。

そして……

「なあ、フー。せっかくだしさ、俺らに留学で身につけた力を見せてくれよ!」

「うん、みたいみたーい!」

これだけ自信があるのなら、当然それ相応のものを持っているということになる。

なら、それが見たいとクラスメートたちはハシャぐ。

「え~、ここで? うーん、え~、困ったな~」

フーも口では「困った」と言っているが、満更でもない様子。

それが俺には少しイラっとしたが……

「じゃあ……うん、見せるよ? ビットファイヤ!」

そう言って、何だかんだで皆に力を見せようとするフーは、演習場の端にある木人に向かって炎を放つ。

ビットファイヤ。それはまさに初級中の初級の魔法。

ビット、キロ、メガ、という魔法ランクの中でも最弱。

そんな魔法を今更見せて……

「「「「ッッッ!!!???」」」」

その瞬間、演習場全体が一瞬、大炎上するかのような炎に包まれた。

「んなっ!?」

『ふむ……』

燃え盛る炎は、以前、教官などがデモンストレーションで見せたメガ級の魔法にも匹敵するほどの規格外の炎。

その規模と力に、俺は思わず震えた。

「えっと……あれ? ごめん……あんまり大したこと無くて、ガッカリしちゃったかな?」

キョトンとした顔で、こいつワザと言ってんのか!? どういう神経してんだよ!

あっ、ヤベエ。

フーのことをイラっと来て殴りたくなったのは初めてだ。

「「「「「すごすぎて驚いているの!!!!」」」」」

基礎中の基礎の魔法で最上級クラスの魔法を放つ。

こいつ、この一年間でどれだけ成長してやがんだ!?

じゃあ、今のをもしメガ級でやったら……こいつ……

「……驚いたな」

「リヴァル?」

「あれぐらいで、これほど驚かれるとは……逆にこちらが驚いた……」

こいちゅら、なんかワザと無自覚装って見下してる感があって、むかちゅくっ!!!!

「アース。この一年で、フーも俺も絶対的な力を持って、帰ってきた」

「ッ……リヴァル……」

「もはや、俺たちは次のステージへ行っている。今のお前では、俺たちには絶対に勝てない」

言葉を失っている俺の傍らでリヴァルがそう断言してくる。

俺はそれを言い返せるほどのものを持っていない。

「俺は今度の御前試合では必ず優勝する。そしてその優勝を……あの方に捧げるつもりだ」

そして、優勝宣言。

ハッキリ言って、基本クールのこいつがこんな熱く言うのは初めてだ。

それだけ、自信があるってことなんだろう。

「フー! それにリヴァルではないか! 帰って来ていたのか!」

すると、そんな興奮冷めやまない演習場に、姫が現れた。

フーもリヴァルもハッとしたように姫の下へと駆け、片膝ついて頭を下げた。

「「お久しぶりです、姫様」」

「うむうむ、元気そうでなによりだ。それと、幼馴染の再会なんだ、昔のようにフィアンセイと呼んでくれ」

そう、姫にとっても二人は幼馴染。だから姫も嬉しそうに笑みを見せて二人の肩に手を置いて労った。

そして……

「フィアンセイ様……いや、フィアンセイ」

「ああ、リヴァル。お前は相変わらずの男前だな。二人とも噂は聞いている。チカバ王国を襲った火竜に率先して立ち向かい、英雄として称えられ、ドラゴンスレイヤーの称号まで得たそうだな。一帝国民として誇りに思う」

姫の労いの言葉に笑顔を見せるフー。一方でリヴァルは固い表情のまま、しかし何かを決意したかのように……

「フィアンセイ。今度の御前試合、俺が優勝する。フーにも……君にも……アースにも負けん」

「むっ……」

「優勝した暁には、俺は君の婿候補に立候補させて欲しい」

「ッ!?」

お、おお……こいつ、本当にこの一年で変わりやがったな。

つか、女にモテモテのこいつが、女に告白するどころか、皆の前で宣言するなんて初めてだぞ?

これは、あいつを好きな女たちは……

「「「「「キャアアアア、すごい! リヴァルくんが、姫様に!? 素敵ぃ!」」」」

……ショックを受けるかと思ったら、キャーキャー騒ぐのな、この女共……まあ、別にいいが……さて、で、姫はどう答える?

「……本気か?」

「本気だ」

本気の気持ち。ならば、と姫も真剣な顔を見せる。

「……リヴァル……お前は幼馴染であり、信頼と尊敬できる友である。そして向上心を持って努力するお前のことは――――」

「俺はこの世の誰よりも君を想い、そして共に帝国の平和を守り続けることを誓う!」

「ッ!?」

「フィアンセイの『気持ちは知っている』。だが、俺が君に男として見られるチャンスを与えて欲しい」

リヴァルはもう周囲に人がいようがお構い無しに、自分の気持ちを強く相手に真っ直ぐ伝える。

「……リヴァル……私は……チラチラ……」

そして、姫もまたそれほど強い気持ちをぶつけられて戸惑っている様子。

だが、別に悩む必要もねーような気もするけどな。

勇者の血筋同士でお似合いな気もするし、周囲も納得するだろう。

まっ、せーぜーお幸せに。

だが……

『哀れだな、あの男も……優勝できんのに……なあ?』

「……っおい」

一部始終を見ていたトレイナが笑みを浮かべて俺に語りかけた。

リヴァルを小ばかにしたかのように、さも「優勝は俺」と言っているかのようだ。

『おい、そう簡単に言ってくれんなよ。さっきの、フーの魔法を見ただろ? あんなスゲーの……リヴァルだって、それ級の力を持っているだろうし……』

『関係ない。余からすれば二人とも、まだどうにでもなるレベル。天才児? 余からすれば、所詮は児戯に等しい。あと二ヶ月もあれば、圧倒できよう』

『おい! そんなことできんのかよ?』

『できるさ。一年間留学? たかだが野生の火竜を倒した? 余の指導を二ヶ月受けられるということは、百年の修行価値に匹敵すると思え。かつて、魔界の竜王を倒した余が言うのだから間違いない』

『そ、それは何とも頼もしいというか……』

『だいたい、あの小僧。ビット級の魔法でメガ級の威力を出した程度で何を無自覚気取りで調子に乗っている? 生前の余なら、ギガ級……いや、テラ級の威力は出せたな』

『いや、ちょっと待て。ギガとかテラってなに? そんなの聞いたことねーけど?』

フーやリヴァルの力を分かったうえで、「俺が優勝」と断言するトレイナ。

『余を信じよ。貴様は一体誰の弟子だと思っている?』

その言葉に不思議な力を感じ、気落ちしていた気分が一気に上がっているような気がした。

そして、……

『とにかく、優勝するのは貴様だ。ただし、そのためには貴様も多少のリスクを負ってもらうがな』

「リスク?」

リスク。それは、副作用か何かか? 確かに、二ヶ月であのレベルに勝てってことになると、肉体だったり寿命だったり……

『今から、貴様もあやつらに宣言しろ』

『はっ? 宣言? えっ、リスクって……どういう……』

『よいか? あやつらに――――――』

差し出すリスクは肉体だったり寿命だったりではなく……

「リヴァル、お前の気持ちは嬉しく、そして誇らしく思う。だが、私は今度の御前試合で……あいつとのことを……」

「分かっている。だから俺は帰ってきた! その宣言をされる前に!」

そんな俺とトレイナの話している間にも、何やら剣士とお姫様の恋愛小説のような光景を繰り広げているのだが、そこで俺は……

「待てよ、リヴァル」

「ッ……アース……」

「えっ、あ、あ、アース……」

二人の邪魔だと分かりつつも、俺は口を挟み、そしてトレイナに言われたことを実行する。

今は何の根拠もない言葉。

しかし、このリスクは必要なのだというトレイナの言葉に俺は納得した。

それは、自分を追い込むこと。

だから、俺も同意して、かなり恥ずかしいが宣言する。

「お前らが強くなったのは分ったが……優勝するのはこの俺だ! 俺にも譲れねえものがあるからな!」

「ッ!?」

「……へっ? あ、アース?」

俺のこの宣言は、非常に空気を読めない宣言だろう。

リヴァルの戦う理由に比べて、俺はサディスのオッパイと、カッコいいところを見せたいってことぐらい。

だが、それでも優勝をすると決めた以上、この場でも引き下がるなというのがトレイナの言葉。

こんな大口叩いて、もし負けたら恥を掻く。その程度のリスクぐらいは負えというのがトレイナの考えだった。

すると……

「ッ、……そうか……アース。それがお前の気持ち……そういうことか?」

「ああ。確かに今の俺はお前に敵わないかもしれねえが……だが、俺にも優勝する理由がある」

睨みあう様に俺の前まで来るリヴァル。

すると……

「「「「キャーーーーー! こ、こ、これって! キャーーーーッ!」」」」

「す、すげえ! つまりそういうことだろ? アースのやつ……リヴァルに優勝させないってことは……」

「なんだ、そうだったんだね……アース。う~ん、僕はどっちを応援すれば……」

ん? あれ? なんだ? てっきり批判されるかと思ったのに、急に女子たちがキャーキャー騒いで、男たちも興奮している?

「え、えっと、わ、わわ、アース……あのアースが優勝を宣言……そ、そんなに私のことを……譲らないなど……」

おまけに、告白の邪魔をされている姫は何やらブツブツ言ってるし……

『ふははははは、面白くなってきたな。色々と』

トレイナはトレイナで、俺に宣言させておきながら、何かものすごい面白がっていた。