軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百九十三話 三人一組

俺はこれまで『戦闘』はしたことある。

アカデミーでの模擬戦。御前試合。忍者戦士。シノブ。アカさん。トウロウ。ブロ。そしてこの間の大会。ヤミディレ。

だけど、集団対集団の戦いは初めてだ。

戦争と呼べるような規模ではない。

だけど、天空族の国に戦いを挑むのなら、ある意味で戦争とも呼べる?

上空に近づくにつれて、妙な緊張感を感じ始めていた。

『童。その緊張感も今のうちに味わっておけ。ただし、戦の高揚感で舞い上がって自分を見失わない程度に感情をコントロールしろ』

「みんなも今のうちにこの緊張感を味わっておけ。ただし、戦の高揚感で舞い上がって自分を失わない程度に感情をコントロールしろ」

「「「おおおお、なんか、ソレっぽいアドバイスだ!」」」」

『いや、今のは貴様に言っただけで、皆に言ったわけではない』

「いや、今のは貴様に言っただけで、ミナニイッタワケデハ……え? なんだって?」

「「「「はっ?」」」」

いかんいかん、緊張してトレイナの助言をそのまま皆への指示のように言ってしまっていた。

つか、俺が舞い上がってどうすんだよ。

「坊ちゃま……」

「アース、どうされたのです?」

そう、俺がしっかりしねーと。

とはいえ、舞い上がり過ぎるな……なかなか難しいもんだな。

『とりあえず、童。いつ戦闘が始まってもおかしくない状況。スリーマンセルのフォーメーションを皆に伝えよ』

「お、おお、そうだな」

作戦や指揮はトレイナがやってくれるとはいえ、俺に何かあって、俺の声が皆に届かなければその時点で指揮が途絶える。

そりゃプレッシャーを感じるってものだ。

「とりあえず、皆は今のうちに三人一組を組んでくれ。個人で戦うんじゃなくて、三人で互いの背中をフォローし合うように戦ってくれ」

とりあえず、基本の戦闘陣形を伝える。

トレイナ曰く、シンプルにいくようだ。

「互いの背中を守り合うようにか……なるほどな。ツクシ、カルイ」

「うん。私とマチョウさんとカルイで一組かな?」

「単独で出ないで、互いをカバーし合うんすね?」

「よっしゃ! ビグ!」

「ダンショク!」

「連携か……俺は正々堂々一対一で戦いたいが……」

「そんなこと言ってるから駄目なんだ! どんな反則でもどんな手でも使う。おら、俺と組め。それを教えてやるよ」

ハッキリ言って、鍛え上げられた軍隊でもない俺たちに複雑な連携攻撃やフォーメーションは無理なので、伝えるのは最低限の決まり事。

「これが基本のスリーマンセル。三本の矢と言っても良い。一人がいきなり飛び出さないで、三人でカバーし合えば、このメンツなら簡単にやられねえ。そして攻めるときも嵐のように三人で一気に襲いかかれ!」

『うむ! 実はこの連携攻撃、不発に終わったがあのカンティーダンの街でブロの舎弟どもがやろうとしたもの。三人で嵐のように攻める一体技。その名も、大魔―――』

「「「「おお! それはまさか、魔極真伝説の三位一体技……『魔極真ジェットストリーム』!」」」」

俺を通したトレイナの指示も皆はすんなりと受け入れてくれた。

正直ありがたい。

とりあえず、皆が皆で勝手にやって自滅することだけは避けたかったからな。

んで、三人一組だとすると俺は……

「俺は、サディス。それとクロン」

「はい、私はアースと同じ組ですね」

「ええ、坊ちゃま」

俺はやっぱり、クロン、そしてサディスと……

「スリーマンセルではなくなるが、余るので私も君の組に入れて欲しいアル、アースくん」

そのとき、三人一組で組むにも余るので入れて欲しいと言ってきた男が居た。

「ワチャ……」

「それに、私の武器はサディスさんに運んでもらっているから、近くに居た方がありがたいアル」

ワチャが「仲間に入れて」という感じで声を掛けてきた。

まぁ、別にそれは問題ないし、腕も立つし、この戦いはクロンが一つのカギでもあるから、俺とサディスとワチャの三人でクロンを取り囲むようにして守るって戦い方もありだ。

たとえ、こいつが裏で何かを考えていたとしても、今、ヤミディレを救おうとしているのは嘘じゃなさそうだしな。

「どうしたアル? 私は信用できないアルか?」

俺が考えていることを察したと思われるワチャが笑みを浮かべて尋ねてきた。

ワチャ自身も「裏があると思われている」ということを自分でも気づいている様子。

ただ、それでも俺にこうして提案してくることで、逆に今は何も裏が無いことをアピールしている感じか?

『構わん、組んでやれ、童』

『トレイナ?』

『貴様が考えているように、魔眼以外の戦闘能力が高くないクロンが居る以上、貴様とメイドはクロンを庇いながら戦わざるをえないが、そいつと組めば負担は多少なりとも軽減できるだろう』

『……そりゃそうだけど……大丈夫かな?』

『安心しろ。確かにその男には裏がある。だが、ヤミディレを救うまでは裏切る気はなかろう。でなければ、ここまでは来るまい』

一応、トレイナもそう言ってることだし、なら大丈夫だろう。

「まっ、いいぜ。今は信用するぜ。仮にも殴り合った仲だしな」

「ハッハッハッハ、その若さでその懐の広さは見習いたいアル」

「まぁ! ワチャが一緒なら心強いです! よろしくお願いしますね!」

「……まあ……坊ちゃまがそう言われるのでしたら……」

そう言って、俺は「今」はワチャを信用して手を強くタッチした。

ワチャもニッコリと微笑み、そして戦闘の準備だと言わんばかりに服の背中や袖からカチャカチャと武器を取り出した。

「フフフフ、大神官様をお救いするための戦い……不謹慎ではあるが、思う存分自分の技術を披露できるシチュエーションに興奮してもいるアル」

「あ? なんだよ。俺との戦いでも技術を存分に出しただろう?」

「確かに、素手では……ネ」

何か含みのあるような言い方をしながら、ワチャが取り出した武器。

それは形状の珍しい、見たことのない武器ばかりだった。

『ほう……』

トレイナもどこか感心深そうに眺めている。それは……

「その武器は?」

「ん? これアルか? 三節棍……トンファー……鉄扇……ヌンチャク、サイ、毒の鎖鋲……手裏剣……」

「お、おいおい、どんだけ武器を隠し持ってんだ? 見たことねーのばっかりだし……」

「ハハハ、まだまだこんなものじゃないアル。サディスさんには、私の自宅にあった武器を全部保管してもらってるアル」

そう言って、どこか自信満々に告げるワチャ。

大会の時よりもイキイキとしている。

まるで自分の本当の得意分野は「素手ではなく武器術」と言っているかのようだ。

だが、それを確認する前に……

「んあーーーー、ちょ、な、なんか雲の向こうから何か来たのん!」

慌てたように叫ぶヒルア。

その声を聞いて俺たちは顔を上げると、先日の時と同じように、雲の向こうから白い翼を羽ばたかせた、武装した戦乙女たちが現れた。

その瞬間、俺はワチャの事とか、緊張とか、そんなのは一気にふっとんだ。

「早速、出やがったな! 今度はやられっぱなしじゃねーぞ?」

拳を握り締め、一気に闘争心が燃え上がった。