軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百九十二話 殴り込み

空を飛ぶ手段は手に入った。あとは準備を終えたら乗り込むだけだ。

「街で一番デカい漁船だ。これなら何十人も乗れる!」

この国は鎖国ではあれど、近海までであれば海に出ることはある。だから魚だって食っている。

そのため、船ならちゃんとあるわけだ。

そして、雲の上まで行くには、でかい漁船を使う。

「いいか? 網とロープでしっかり固定するんだ! ヒーちゃんよ、ちゃんと持てるか?」

「んあ? ちょっと重いのん」

「根性だ! 根性!」

漁船にロープなどを付けて、それをヒルアにリュックのように背負わせることで、俺とクロン以外の参戦希望者を乗せる。

「ツクシ……お前たちは……」

「マチョウさん、当然私も行くかな!」

「私もっす! だから、アマエはここでお留守番」

「う~……」

「もう、油断しねえ! あの王子とかいうやつ、覚えてやがれ!」

「ケツをぶっ壊してやる!」

「おうよ、地上の股間の山脈がどれだけでけえか見せてやる!」

「ぶちかますでごわす!」

「さて、どうなるか……いずれにせよ、しんどいことになりそうアル」

参戦者は大会出場者を中心に、ツクシの姉さんとカルイも同乗。

とはいえ、あまり腕の立つ奴らばかりについてきてもらっても心配なので……

「モトリアージュ。俺らが居ない間は、お前らに頼んだぜ?」

「ああ、任せてくれ。だから、アース君も暴れてきてくれ!」

「オラア! 復興は俺らに任せろ!」

「僕も働くんだな!」

「気を付けてね」

こいつらに任せることにした。

本当は、留守番は『こいつ』に任せたかったが……

「いいのか? サディスは」

「ええ。過去はどうあれ、この三か月の衣食住の借りはありますので……私も参戦しましょう」

本当なら、帝都に戻って親父や母さんに今回のことを報告しようとしていたサディスだったが、結局俺たちと一緒に殴り込むことを選んだ。

かつて魔王軍に全てを奪われたサディスとはいえ、最低限の義理を果たすため。

そして何よりも……

「少しでも、坊ちゃまの力になりたいのです」

「ったく……卒業したっていうのに……」

「それでも、私にとってはいつまでも愛する坊ちゃまですから」

結局は俺のため。相変わらず俺には甘い。

だが、相手がどれだけの戦力かがまだ分からない以上は、一緒に来てくれるのは頼もしい。

「サディスさん! これもお願いします! 剣、槍、弩弓もありったけ持って来やした! 格闘家として、あんまこういうのは使いたくないんすけどね。あと、バーベルとかも持って来やした!」

「あっ、ご苦労様です。ただ、相手の数が未知数である以上、使えるものはいくらでも持っていきましょう。私が異空間に入れて運びますので、いくらでも大丈夫です」

「私の武器もお願いアル。武器術こそが私の本領アル」

そして、サディスの魔法があればどんな荷物も持ち運びが楽。

何かあった時のために、使える武器はいくらでも持っていくということで、皆もドンドン武器をサディスに持ってくる。

準備も整ってきた。

いよいよ……

「……おにーちゃん……」

「おっ? アマエ……」

「……ぎゅっ……」

すると、その時だった。

当然だがこれに関しては留守番となったアマエ。

悲しそうな表情で俺の足にしがみついてきた。

「……うぅ……ぐす……」

他のシスターたちが居るとはいえ、親しいツクシの姉さんやカルイ、そしてクロンやマチョウさんに俺まで行ってしまう。

残されるアマエが心細くなって泣きそうになるのは当たり前の……

「ふれー……ふれー……」

「ッ!?」

いや。違う。アマエは一度俺にしがみつくも、すぐに離れて……

「フレーフレー、おにーちゃん、おねーちゃん、おじさん! みんな! フレーフレーフレーガーンーバー!」

ワガママや、不安の言葉ではなく、エールを送ってくれた。

「ヒーちゃんもガンバ! ガンバ! フレフレガンバ!」

「うはうっ!?」

そして、アマエの姿を見た街の皆も一斉に声を上げる。

「そ、そうだ、頑張れー! みんな、頑張ってくれ!」

「俺たちの街をこんなことした奴らをぶっ飛ばしてくれ!」

「大神官様をどうかお救い下さい!」

「全員、ぶっ倒せえええ!」

「うおおおおお、いけええええ、魔極真バンザーーーーイ!」

震えるような力強い声援。

そりゃもう、燃えて来るってもんだ。

その証拠に俺らは全員、男も女も種族も関係なく、皆が同じ笑みを浮かべている。

「どうだ? クロン」

「はい……熱いです」

「だろ?」

「力が湧いてきます」

「だな」

「一緒に戦うだけじゃなく……皆さんの分も戦うのですね?」

「おお」

無垢な少女だったクロンが、何やらゾクゾクしているような表情。

なかなかキテるようだな。

「う~~~~、てやああああああああああああああ!!」

クロンが拳を突き上げて、自分なりに一番デカい声を上げた。

「女神様……うううう、やるぞーーーー!」

「おっしゃー、私もやるっすよー! 見てろー、アマエ!」

「ならば自分も……ふぬらあああああああああ!」

「おお、マチョウの雄叫びは珍しい……く~、うおおおお!」

「うおおおおおおお!」

「んあ、ボクもなのーーーーーん!」

クロンに皆も……俺たちも続いた。

「坊ちゃま!」

「おう!」

そして、同時に全ての準備が整った。

「よし、クロン。暁光眼で皆に幻術かけて強化するタイミング……アレの指示は『俺』が出す」

「はい、アースにお任せします」

「まかせろ。まさに『神』って言えるぐらい最高のタイミングで指示してやる。それと、皆にもだ! 生意気かもしれないが、皆にもある程度の指示は俺が出す! だから、聞いてくれよな?」

「「「「大会で優勝した、この国最強の男の指示には従うぜ!!」」」」

つーわけで、頼んだぞ? トレイナ。

『まかせよ。フハハハハ、軍というほど多くはないが一個隊の指揮官にでもなった気分だな』

『めんどくさいか?』

『ああ、めんどくさい。なので、さっさと終わらせようではないか、なあ? 童よ』

おお、何か物凄い悪魔のような笑み。

正に大魔王。これはまた、頼もしいぜ。

そう、ヤミディレとの戦いでは、俺に動きを指示する形の二対一でヤミディレに勝った。

今度は、トレイナが軍師のようになって、俺を通して俺たちに指示を出す。

「では、皆さん、準備は既に整いました! 覚悟もよろしいですね!!」

「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」」」」

「私たちが私たちの意志で、私たちの大切なものを取り戻します! 私たちの覚悟に、必ずや神のご加護があります」

ま、確かにお前らの神様はここにいるからな。

「だってさ?」

『やかましい』

魔王ではあっても神扱いには慣れない様子。

俺はそんなトレイナに笑いながら、クロンの号令を聞き……

「さあ、あの天に……えっと……なっ……ナグリコミ? です! 張り切っていきましょう!」

「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!」」」」」

熱狂して一斉に声を上げた。

「では、ヒーちゃん! お願いします!」

「んあー! まっかせるのーーーーーん!! ふぐ、ふぶぬぬぬぬ、ぬぐ、うぬうううのおおおおおおおおおん!」

血管が浮き出るほど顔を真っ赤にして、プニプニだった全身にパワーを凝縮させて俺らが乗った漁船を背負ったまま……

「やってやるのおおおおん、負っけないのおおおおん!!!!」

ヒルアの意地。根性。火事場のバカ力で勢いよくヒルアは俺たちを背負って翔んだ。