軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百八十九話 竜の血脈

バサラが見たかったのは、俺たちの強さでもなく、ましてや勝敗でもない。

そういう意味では、これで……

「まぁ、よかろう。思いのほか楽しめたわい」

満足したように笑ったバサラは、俺とクロンを認めてくれた。

どこまでも熱く、激しく飛び込んだ。

結局、俺たちの攻撃がどれほどの威力だったのかはよく分からなかった。

何故なら、眩い閃光に包まれて、気付けば俺とクロンは仰向けになっていたからだ。

単純にバサラの力に跳ね返されたのかは分からない。

でも、それはダメだったという評価にはならなかったようだ。

「グワハハハハハ、合格じゃ。ワシを痺れさせてくれた礼に、力ぐらい貸してやらんとなぁ」

「「ッッ!!??」」

その言葉を聞いて、俺とクロンは体をガバッと起こした。

「じゃあ、バサラ! 俺たちを連れて行ってくれるのか?」

「本当ですか、バサラさん!?」

「ワシが合格と言っとるんじゃ。それは、決して安くはない。だから安心せい」

伝説の竜王が、まるで近所の気の良いおっさんみたいに豪快に笑っていた。

「クロン!」

「はい!」

「やったな!」

「やりました!」

思わず俺とクロンはハイタッチしていた。クロンもこういうことは今までやったことないだろうに、自然と一緒にやっていた。

パチンと響いた俺らのタッチを見て、バサラはまたケラケラ笑う。

「おーおー、青臭いのぉ~、甘酸っぱ~」

いや、もう本当に近所のおっさんだった……

「でも、これであんたは俺と契約してくれるんだな? あれ? それともクロンとか?」

「ん? ん~……そうじゃの~……」

それはそれとして、契約だ。

そして、自分で言ってて段々と緊張してきた。

だってそうだろう? さっきまで無我夢中で立ち向かっていたが、相手は伝説の冥獄竜王。

そんな伝説の竜が俺の召喚モンスターとなってくれるわけだから。

ガキのようにドキドキした。

だが……

「しかし、今さら世の闘争に関わるのものぉ……」

「……え?」

「ぶっちゃけ、今もう満足してしまったしのう」

「え……えええ!?」

アレ? なんか雲行きが怪しくなってきた?

「ちょまっ、ちょ、ちょおお!? ええ?」

「天空族が相手……せっかく楽しめたのに、これでつまらん相手だったらガッカリだしのぉ~」

なんだかもうお腹いっぱいというか、楽しく満足しすぎたのか、これ以上は蛇足というか、天空族との戦いがつまらなかったらせっかくの今の気分も台無しになるなとか、ものすごく微妙そうな顔をしだした。

「いやいや、約束」

「分かっておるわい。それは安心せい。だから、考えておる。う~ん……」

約束は違えない。だが、めんどくさい。そう思っているように見える。

だが、ここで気まぐれを起こされても困る。

そう思ったとき、バサラは何か閃いたかのように笑みを浮かべた。

「おお、そうじゃ! 良い奴がおったわい!」

「な、に?」

「ワシの息子と契約させてやろう!」

それは、予想もしてない案だった。

「むす、こ?」

「あら、バサラさんにはお子さんがいらっしゃったのですか?」

『……ぬ……』

竜王に息子が居たなんて思わなかった。まぁ、居てもおかしくはないだろうが。

しかし、トレイナは何だか微妙そうな顔をしているが……

「おお、そうじゃ。じゃが、ワシ自身が魔界や地上との戦から身を引いていたため、息子もそういったものに関わらず、結果的に甘やかしすぎてのう。じゃから、ウヌらと一緒に居ることで、あやつにも良い刺激になって成長に繋がるのではと思ってのう」

「え……で、でも、あんたが契約してくれるんじゃ?」

「ヌワハハハハハ、最初はそれも良かったが……よくよく考えたら、ワシが味方になった時点でもう後の戦いは全て楽勝になるから、貴様らは今より成長できなくなるぞ? あやつの弟子として、ここが貴様のゴールというのならそれでも構わぬが……違うじゃろ?」

バサラはまるで俺を試すかのようにニヤリと笑って見てくる。「お前たちはそんなタマじゃないだろ?」と言っているかのような表情だ。

そう言われると、「もちろんだ」と言いたくなるが……

『あやつの息子か……最後に見たのは何年か……まぁ、とはいえ一応は竜王の血脈……果たして……』

そして、トレイナは何か引っかかっているのか、少し唸っているようだが……でも、それでも竜は竜。

しかもとんでもないサラブレッド。

だったら、別に悪い話じゃない。

「まぁ、いいぜ、それで! だから、あんたの息子を紹介してくれよ、バサラ! ここは当然ゴールじゃねえ。俺はあんたの息子の力も借りて、もっとあんたたちの居る場所へと近づくぜ!」

「はい、バサラさん! ぜひ、息子さんを紹介してください!」

俺とクロンは特に反対ではないと、バサラの案に頷いた。

「そうか。では、今すぐ呼び出そう! オーヤガモンペーモンペーサイアク……血脈強制召喚・オヤヴァーカ!」

そう言って、その巨体に溢れんばかりの魔力を漲らせ、聞いたことのない詠唱を唱えるバサラ。

それを聞いてまた楽しみになってきた。

「お~、それにしても……俺も今日から竜騎士……竜王の血を引く竜のマスターに……ドラゴンライダー……ドラゴンマスター……そんな肩書がつくなら、俺も名乗りを考えないと……大魔竜王騎士……とか」

竜に跨る英雄。まさに子供のころから男心をくすぐるものだ。

俺も今日からそんな存在になると思うと胸が高鳴る。

そして、呪文を唱え終わったバサラが腕を地面に叩きつけたそのとき……

「ウヌヌヌヌヌヌヌ……ヌヌヌヌヌ、なかなかでないのん……んあ?」

バサラよりは二回りは小さいが、それでもそれなりに巨体。

だが、なんだか巨体というより体に物凄い丸みがあるような……なに? 巨大なカバ?

バサラと同じ鱗の色をした丸い何かが……プルプル震えて四つん這いになって……

「なぁん!? おとーちゃん、なにしてるのん! ボクは今、絶賛お花摘みタイムなのん! ……って、あれ? ここ、どこなのん!」

ものすごい、何かを踏ん張っている!?

振り向いたカバはデカい鼻を膨らませ、弱々しい眼光でものすごい焦った表情。

まさに今、ものすごいヤバい場面!?

つか、何だこいつ!?

『余が生きていた頃よりも……丸みを帯びて脂肪が……』

そして、この現れたカバ? を見てトレイナが顔を抑えて呆れた様子。

つか、まさか……

「こやつが、ワシの息子の『ヒルアドォン』じゃ」

「え……!? むむむむ、息子おおおおお!? これがああああ!?」

「あら~……とってもかわいらしいですね!」

子供のころから妄想していた。禍々しく巨大な竜王。

その妄想と違わないバサラの存在を見て、まさにこれが伝説の竜だと思ったものだ。

だが、これは……

「んあ? なんなのん! ここどこなのん! っていうかこの人たちは誰なのん!」

こ、こ……これじゃ……これじゃな……アレ?

頭の中のドラゴンのイメージが粉々に砕け散ったような……

「これが……冥獄竜王バサラの……」

これが本当にバサラの息子なのか?

俺がそう思ったとき、四つん這いになって踏ん張っていたカバは……

「んあー、いきなり呼び出しておいて初対面なのに何なのん! 大きなお世話なのん! どーせ、君らも言うのは分かってるのん!」

「……あ?」

「皆して言うのん! ボクを見て『それでも竜王の息子』かとか、言うんでしょん!」

「ッ!?」

「ふーんだ、ボクはボクなのん!」

その言葉を聞いて、俺は何でだろう……ハッとした。

見てくれはメチャクチャカッコ悪いカバ。

男なら一度は憧れる竜騎士からは程遠い竜。

なのに、どうしてだろうな?

こいつの言葉を聞いたとき……

「……悪かった」

「んあ?」

頭を下げていた。

何だろう。意外とこいつとは気が合うかもしれないと思った。