軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百六話 人を引き連れて

「じょっ!?」

「「「「?」」」」

冗談じゃねえと、俺は心の中でトレイナに反論した。

三ヵ月という期間で徹底的に鍛える。

そのためには、それだけに集中してえ。

人の世話なんてやっている暇なんてねえからだ。

『何も常につきっきりで、皆で仲良くおててつないでランランランとまでは言わぬ。ただ一緒に汗を流してみろと言っているのだ』

『だから、何でだよ! そりゃ、こいつらの話を聞いて同情しなくもなかったが……だからって、何でこいつらのために……ランランラン?』

『こやつらのためだけではない。全ては自分のためにも繋がると思え。ランランランは忘れろ……』

『……?』

トレイナの言っていることが分からなかった。

なんで、こいつらと一緒にトレーニングすることが俺のためになるのかと。

『童……人と一緒に厳しいトレーニングをすることの利点は何だ?』

『え? ……人と一緒に……さあな……競い合うとか……か?』

『ふふ、まあ、それも正解ではあるが……人と一緒にトレーニングをする利点……それは……『刺激』だ』

刺激。そう言われてパッと思いついたのは……

『刺激……? つまり、競って刺激し合えってことか? こいつらと? でも、こいつらの実力は多分……』

『たとえ、競い合わなくても、刺激になることはある』

『?』

競い合わなくても刺激になる……その意味がよく分からず俺が首を傾げると、いつまでも無言で立っている俺にモトリアージュたちは首を傾げた。

「ねえ? どうしたんだい? その……言葉を失うぐらい嫌なのかな?」

「お、オラ、た、頼むぜ。俺ら……邪魔にならねーようにするからよ」

おっと、どーしたもんか……まだ、話も終わってないのに……

『とにかく、マジカル・ロードワークをしろ。走りながら教える』

『……ったく……わーったよ……』

とりあえず、走りながら教えてくれるというので、俺はそれに従うことにした。

正直、一人で走りたいところだが……まあ……

「走ってくる」

「「「「…………」」」」

「ついてくるかどうかは、勝手にしてくれ」

「「「「ッ!? おう!」」」」

そして、どうやら本当についてくるようだ。

つっても、こいつら俺についてこれんのか……?

『童。ダンベルの隣に、マジカル・パワーアンクルとマジカル・パワーリストがある。ハンデで貴様はそれを装着しろ』

そして、それを考慮してのハンデ。手首と足首に重りまでつけさせられ……つか……重い!?

「その重りもつけるのか……」

「いや、お前らはつけんな! ほんと、いいか? つけんなよ?」

つか、ハンデのつもりでつけさせられるのに、お前らまでつけたら意味がねえと止めた。

すると……

「ん、はしるの?」

「あん?」

重りを手首と足首に巻いて外に出ようとする俺に、アマエが駆け寄ってきた。

「……まあ……な」

「……ん!」

俺が頷くと、アマエは頷いて、何故か両手を俺に伸ばしてきた。

「ん?」

「ん!」

その意味がよく分からなかったが、幼い子供がこういう風にしているのは、まるで抱っこを求めているような……

「まさか……お、お前も?」

「ん。いく」

「……………な、に?」

「おんぶ」

最初のマジカル・パルクールが気に入ったらしく、また俺におんぶしろと言ってきやがった。

「いや、お、俺はトレーニングに……」

「いく。おんぶ!」

「あのよ、ロードワークだから、その……走りながらシャドーとか、両手を使うんだ! だから、おんぶできないんだよ!」

「やっ! おんぶ!」

冗談じゃねえ。ただでさえ、モトリアージュたちを引き連れて、更には両手足を重りで重くして、そこから更に幼女をオンブなんて、もうそれはハード過ぎんだろうが。

だが、アマエも譲らない気持ち一杯なのか、

「む~~~~、おんぶ!」

頬をプクっと膨らませながら、俺の服を掴んで、頷くまで離さないと抵抗を見せてきやがった。

「うは~、か、かわいいんだな。こふ~」

「ブデオ……黙ろう……僕たちはたとえ思っていてもそういうのを口に出した瞬間、犯罪者のような目で見られちゃうの自覚しよう」

俺の横でアマエの仕草を見て、なんかブデオとモブナがちょっと悲しいやり取りをしているが、あえてツッコミ入れないでおこう。

とりあえず問題はこのガキ……

「こらー! アマエ、邪魔したらダメかな!」

「ッ!?」

するとそのとき、ワガママ言うアマエを叱りながら、ツクシが駆け寄ってきた。

「このお兄ちゃんは、今からトレーニングなの。メチャクチャ頑張ってとにかく優……か、彼はマチョウさんとの約束を果たすために優勝目指して頑張ってるんだから、邪魔しちゃだめでしょ?」

「だって……」

「だってじゃないかな!」

正に妹を叱るお姉ちゃんという様子。

しかし、アマエはプイッとそっぽ向く。

「や! おんぶがいい」

「おんぶなら私が後でしてあげるから!」

「……や……こいつがいい」

段々とイジけてシュンとなっていくアマエ。

流石にちょっとかわいそうに……いやいや、でも、俺はトレーニング……つか、こいつって?!

「まあまあツクシ……アマエも兄ができたみたいで、嬉しいんだろ? そこまで怒らなくても……」

すると、ツクシを宥めるようにマチョウさんも出て来たが、ツクシは譲らない。

「マチョウさんはアマエを……ついでに言うならカルイのこともいつも甘やかしすぎかな!」

「そ、そんなことは……」

「とにかく、彼のトレーニングの邪魔をするようなことはダメだと思うかな」

「確かにそれはそうだが……」

だが、マチョウさんも言い負かされる。

つかこれ、お姉ちゃんというより、ワガママな娘を甘やかす父親を叱るオカンというか……

「「「「「結婚しろよ」」」」」」

ボソッと呟いた俺とモトリアージュたちの声が重なった瞬間だった。

「アマエ、自分が肩車してやろう」

「や。オジサン、足遅い」

「ぬっ……う……」

「あいつ、びゅーって、びゅびゅって、ぴょーんって、じゃんぷしたり、ぐるぐるってなったりする! 楽しい! あいつがいい!」

そして、マチョウさんが気を利かせてもワガママ娘は聞く耳持たず、ついには俺の足にギュッとしがみ付いてきた……おいおい、いつ、俺たちはここまで打ち解けた?

『……やれやれ……モテモテではないか、童』

『っせ! とはいえ、帝国の時はまるでモテなかった俺が最近は調子いいし……これが、モテ期ってやつか?』

『………………』

『んだよ?』

『……別に』

今朝はあんなに隠れてたってのに、ちょっとオンブしてやっただけでこれか。

子供っつーのは本当にチョロイというかなんというか……つっても、連れていくわけにも……

『仕方ない。連れて行ってやれ、童』

『……は? お、お前、何を……つーか、さっきも言ったけど、俺はそんな遊んでる場合じゃねーし!』

『リストと同じで重りだと思えばよかろう』

『いやいや、それでもオンブしてると、ロードワーク中に手が使えないからシャドーが……』

『ならば―――――』

トレイナの提案。そして俺の足にはギュッとしがみ付いて離れようとしないアマエを、ツクシが引っ張ってる。

「アマエ! いい加減に言うこと聞くかな!」

「やーあ! やー!」

もう、いい加減めんどくさくなってきた。

だから、俺はその争いに終止符を打つべく……

「おら、アマエ」

「ん? あ……」

ツクシから引っ張られていたアマエを引きよせて抱き上げて、俺はアマエを……肩に……

「両手が使えなくなるからオンブはできねーけど、これならいいだろ?」

「ッ!?」

そう、肩車だ。

「ちょっ……ねえ、きみ!」

「ほう……」

そう、オンブすると両手が使えないなら肩車をすればいい。トレイナの提案で、驚くツクシに微笑むマチョウ。

そして……

「ふぁ……あ……たかい……」

「……なら、降りるか?」

「んーん!」

突然の肩車にポカンとしていたアマエも、俺がそう聞くと慌てて俺の頭に両手を回して抱きついてきた。

まっ、これなら両手を使えるし……

『まぁ、これも人と一緒にトレーニングする時に、いずれやらせようとしていたものだ。上の人間を落とさないようにしっかりと軸とバランスを保ちながら、足腰をしっかりとさせて走る……体幹が鍛えられる。先ほど説明した足の指と同様、しっかりと意識して鍛えろ』

これで、俺は両手足、更には肩に重りを乗せてロードワークに行くわけか……ん? 今日はもう軽めとか言われてたけど、これってかなりハードじゃねえか?

「ねえ、君……い、いいの……かな?」

「ん? だって、仕方ねーじゃん……」

「ははは、本当にごめんかな……ん、お詫びに今日の夕飯は、おねーちゃんが奮発するから許して欲しいかな?」

申し訳なさそうにしながら俺に謝罪し、頭の上で「むふー♪」としているアマエを見て溜息を吐くツクシ。

「よかったな、アマエ」

「ん!」

そして、そんなアマエに優しく笑うマチョウさんは、マジおとん。

「よーし、んじゃあ、いくぜ! マジカル・ロードワークだ!」

「「「「おう!!」」」」

「おー!」

こうして、めんどくさいことに俺は四人の男と一人の幼女を連れてロードワークに出た。

思えば、トレイナ以外と一緒にこうやるのは初めてだな……アカデミーではカリキュラムの中で人と一緒にペアを組んだり……まあ、姫としか組んだことねーけど……姫の奴、「仕方ないから我が犠牲になってやろう」とかウゼーことをいつも言いやがって……。

まあ、それはどうでもいいとして、少なくともこうやって誰かを引き連れて、しかも俺が先導して走るなんてそれこそ……ガキの頃以来だな……

ガキの頃……そうだな……あの時はまだ俺は皆にもコンプレックスを持たず……姫のことも目の上のタンコブとも思わなかったし……リヴァルも……フーも……一生の仲間だって……疑ってなかったのにな……