軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

83 幕間 クララ救出作戦 2

出発した僕たちが、まずしたことは、追っ手を振り切ることだった。城門をくぐってすぐに、騎兵隊が追っかけて来た。僕たちはすぐに 橇(ソリ) に飛び乗った。この橇はお姉様に渡した橇を改良したもので、人を乗せて高速で移動することができる。大量の魔石が必要になるけど、このメンバーには膨大な魔力を持つゴンザレスさんとレベッカさんがいるし、多くの貴族から資金援助を受けているから、魔石も採算度外視で使える。

騎兵隊も追いつけないほどの速度で、僕たちはルータス王国を後にした。

それから、すぐに魔族領に向かうのではなく、一旦小国家群にあるマドメル魔法国に向かうことになる。これも作戦だという。マドメル魔法国で最初に会ったのは、エスカトーレ様だった。城門で入国の手続きをしている所にわざわざ来てくれた。エスカトーレ様は留学でこの国に来ているようだ。この留学にも隠された意図があるという。

エスカトーレ様の案内で、魔法研究所に向かう。エスカトーレ様が町を歩くだけで、歓声が上がったり、「聖女様!!」と声を掛けられたりする。

「自分で「聖女」と名乗ったことは一度もないのですが・・・この国の魔導士たちを見ていると、その理由が分かりますよ」

意味深なことを言う。

この意味はすぐに理解できた。案内された魔法研究所は、まさに魔窟だった。そこら中からうめき声が聞こえたり、嗅いだことのない匂いを発する研究室もあった。また、「立入禁止、入ったら魔法を撃ちます」と書かれた張り紙があり、エスカトーレ様に尋ねると「本当に魔法を撃ってきます」と答えてくれた。

「私が人格者だとか、徳が高いとか思ったことはありません。ただ、彼らを見ていると私が聖女のように扱われるのが分かる気がしました。そのため、作戦は上手くいきましたが・・・・」

エスカトーレ様の言っていることは分かる。エスカトーレ様はお姉様を通じて多少の交流があり、性格の良い、優しい方だと思う。この研究所にいる人格破綻者に比べれば、魔法の才能もあり、普通の考え方を持っているエスカトーレ様は聖女に見えるだろう。

最初にエスカトーレ様に案内されたのは、お姉様を監禁した魔女、キャサリン様だった。レベッカさんが言う。

「会いたくはないが、ここまで来て挨拶もしなければ、大変なことになる。みんなには申し訳ないと思うが、少しだけ我慢してくれ」

キャサリン様の研究室は見るからにぐちゃぐちゃで、足の踏み場もない。レベッカさんが事情を説明して、これからお姉様を迎えに行くことを話した。

「私も行きたいけど、この国から出たら駄目だからね。まあいい、クララちゃんによろしく言っておいてくれ。そこの少年はロキ君かな?クララちゃんから聞いているよ。「武具職人」なんだろ?だったらこれをあげよう」

僕にくれたのは、魔方陣のサンプルが大量に入った本だった。

「魔道具に使える魔方陣を厳選してあるからね」

魔方陣を見る限り、どれも美しく、バランスが良かった。お姉様が言うほど、キャサリン様は悪い人ではないのではないかと思ってしまった。

「今日は機嫌が良くて助かりました。日によっては、手が付けられない時もありますからね」

レニーナ様が言う。

「エスカトーレ様も苦労されてますね・・・」

次に来たのは、魔法研究所の最上階にある一室だった。ノックをして、中に入ると褐色肌のエルフがいた。正確にはエルフではなく、ダークエルフだそうだ。このダークエルフはネブラスカさんという女性で、世界的に有名な「星読み師」だという。

挨拶もそこそこにネブラスカさんは言った。

「本当にやるのかい?違ったら大恥だよ」

エスカトーレ様は答える。

「私が恥を掻いて、クララさんが助かるなら、全く気にしません」

「じゃあ、やるよ・・・」

ネブラスカさんは、拡声の魔道具を手に叫ぶ。

「みんな、新たな預言が来たよ!!1回しか言わないからよく聞きな!!

『聖女よ!!古き友が待っている。同胞を救え、そして世界を救え!!』だ。以上」

すぐにエスカトーレ様が拡声の魔道具を手に叫ぶ。

「私はエスカトーレ・ウィード!!先ほどの預言を受け、魔王国に向かいます。旧友を助け出すために!!」

町から歓声が上がる。

意味が分からない僕はレベッカさんに尋ねた。

「これも作戦だ。ネブラスカ氏の預言は本物で、『聖女よ!!古き友が待っている。同胞を救え、そして世界を救え!!』という言葉に嘘はない。ちょっと利用したまでだ。エスカトーレ嬢も自分は聖女だとは一言も言っていない。ただ、『旧友を助け出しに行く』と言っただけだ。しかし、聞くものが聞けば、聖女が預言を受けて、魔族領に向かうと思ってしまう。それを利用したのだ。この1年間、エスカトーレ嬢は聖女のように振る舞ってきた。信じる者も多い。日頃の行いは大事だろ?

これで大ぴらに軍を派遣して、我々を止めようとする国が手出しできんからな」

エスカトーレ様の留学もすべて布石だったようだ。

「神聖ラドリア帝国が神様を持ち出したから、こっちも預言を利用しただけだ。それにこっちは「最悪、勘違いでした」で済むからな。

よし!!民衆が騒ぎ出す前に出発しよう」

僕たちは、多くの民衆に見送られながら、次の目的地を目指した。

★★★

僕たちは、傭兵国家ロゼムに着いた。ここでも布石を打っているという。到着して早々、五代目傭兵王ロドス陛下が迎えてくれて、ゴンザレスさんと抱き合っていた。

「ゴンザレスの兄弟!!また会えてうれしいぜ!!」

「こっちもだロドス王!!ロキ!!あれを出してくれ」

大量の果実酒と缶詰を橇から降ろして、ロドス王のお付きの者に渡した。

「気を遣わせて悪いな!!難しい話は後だ。とりあえず、飲もう!!」

よく分からないまま、宴会に突入してしまった。

僕は怖そうな傭兵に囲まれて気が気ではなかったが、彼らはとても親切だった。

「缶詰の嬢ちゃんの弟か?ゆっくりして行けよ」

「そうだ。お嬢ちゃんには世話になったからな」

「そうなんですね。お姉様もここに来て缶詰を・・・よろしければ、新商品もありますので、どうぞ」

傭兵たちに新商品の缶詰を渡したら、大喜びされた。

宴の盛り上がりも少し落ち着いたところで、レベッカさんが言う。

「ロドス王、ダミアン王子の姿が見えないのだが?」

「おっと、忘れてた!!おい!!ダミアン!!こっちにこい!!」

すると現れたのはダミアン王子だった。しかし、自分の知っているダミアン王子のイメージが崩れ去った。

「へい!!お頭!!何の用でしょうか?」

「お前に客人だ!!」

ダミアン王子が僕たちに気付く。

「これはレベッカの姉御じゃねえですか!!それにエスカもいる・・・しばらく見ないうちに、エスカもマブくなったなあ」

エスカトーレ様は絶句している。レベッカさんが説明を求める。

ロドス王が言う。

「コイツは才能があるんだが、マニュアル人間でな・・・傭兵にマニュアルなんてないから、とにかく先輩の一挙手一投足を盗めって言ったら、こうなった。指導している兄貴分の口調から態度から、本当にそっくり真似してるんだ・・・・傭兵王に王子様の教育は無理だったってことだ」

ダミアン王子も留学という名目で、この国に来ていたようだ。ダミアン王子のことは少し、お姉様から聞いていたけど、こんな人だとは思わなかった。