軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

125 取調べ

ピサロを王都ブリッドに連行した後、取調べは担当の文官に任せて、私とネスカはビッテにさんに乗って、一度ベルシティに戻った。神聖ラドリア帝国の動きを確認するためだ。諜報部隊の報告によると、ピサロが収容されていた塔は解体工事が始まっているという。特に捜索隊を組織しているわけでもないそうだ。

ネスカが言う。

「大ぴらにせずに、襲撃者がピサロを交渉条件に接触してくるまで、静観するんだろうね。まあ、向こうにしてみれば、打つ手もないしね。それよりもピサロがいなくなったことを国民に知られるのことの方が不味いと判断したのだろうね」

それから10日程、情報収集に努めたが、神聖ラドリア帝国は静観するようだった。

なので、私とネスカは王都ブリッドに向かった。ピサロの取調べ状況を確認するためだ。私の予想だと、ピサロのジョブや黒幕の名前くらいは判明していると思っていたのだが、それすら判明していなかった。

担当文官が申しわけなさそうに言う。

「まず、ジョブの関係ですが、ジョブ鑑定の魔道具でも鑑定不能でした。鑑定を阻害するスキルでも持っているのかもしれません。それと黒幕についてですが、『黒幕はいない。強いて言えば、神聖ラドリア帝国という国自体だ。いや、世界全体と言ったほうがいいかな?』という供述を繰り返すのみです。そして、厄介なことに取調官がトラブルを抱えていまして・・・」

担当文官が指差した方向を見ると、取調官同士で口論をしていた。

「ピサロ氏は、人格者だ。彼は何もやっていない」

「違う!!アイツは極悪人だ!!絶対に何か隠してやがる」

その二人から話を聞く。

どうも二人の話が噛み合わない。ある程度、話を聞いた後にネスカが結論を出した。

「指示があるまで、取調べは中止だ。推測だけど・・・ピサロは人心掌握のスキルを持っている可能性が高い。二人の取調官に別の印象を与えて、仲違いさせようとしていると思う。それと、今後は決まった看守が世話をするのは止めてくれ。ピサロのシンパを増やされたら、堪ったものじゃないからね」

ピサロはかなり危ない奴のようだ。

★★★

魔王様、チャーチル様、オルガ団長、スターシア団長とともに協議を始める。担当文官の報告を受け、皆一様に渋い顔をしていたのだが、オルガ団長だけは違っていた。

「ここは、次期魔王のアタイに任せてもらおう。行くぞチャック!!」

「は、はい!!」

オルガ団長は取調べに行ってしまった。私たちは取調室に設置してある魔道具から送られてくる映像と音声で、取調べ状況を確認をする。

オルガ団長が、机を叩き、怒鳴り散らす。

「おい!!お前!!隠してもいいことにはならないぞ!!正直に言え!!」

「何をですか?」

「そ、それは・・・その・・・なんだったっけ・・・チャック!!」

「黒幕についてとジョブについてですよ」

「そうだ!!それだ!!」

映像を見ていたネスカが言う。

「やっぱりオルガ姉さんは、意味を理解していないようだね・・・」

多分そうなのだろう。

そんな時、ピサロが言う。

「ハーフリングの君は、彼女に付き従うだけでいいのかい?ジョブがそうだから、付き従っているのか

?」

これって・・・ピサロはジョブが分かるのか?

チャックさんが答える。

「違いますよ。私はオルガ団長に仕えることが至上の喜びなのです」

「本当かい?」

「はい!!」

「じゃあ、聞こう。君はそのオーガの女性を愛しているのか?正直に答えてくれ。私にだけ、正直に言えと言うのは、不公平じゃないか?」

しばらくして考え込んだチャックさんが言う。

「そうです。世界中の誰よりも愛しています!!」

流石のオルガ団長も赤面している。

「そ、そうか・・・と、とりあえず今日の取調べはここまでだ!!それより、チャック・・・話がある」

何も聞かぬまま、取調べは終了してしまった。

取調べを見ていたスターシア団長が言う。

「かなり手強いわね。スキルか何かでジョブや相手の性格が分かるのかもね。取調べを止めさせたネスカの判断は正しいと思うわ。オルガ姉さんが、あそこまで動揺するなんて見たことがないしね。私としては、チャックと姉さんがどうなるかの方が気になるけどね」

「それはそう思います。チャックさんは誰よりもオルガ団長のことを思ってますからね」

「スターシア姉さん、クララ、まずはピサロの取調べが優先だよ」

ここでスターシア団長が言う。

「とりあえず、私が行くわ。これでも「賢者」だからね」

スターシア団長が取調室に入ると、ピサロを露骨に嫌そうな顔をした。スターシア団長もあの手この手で、供述を引き出そうとするが、のらりくらりと躱される。そんな時、ピサロが言った。

「魔法陣とかに興味はないですか?古代のレアな魔法陣とかありますけどね。例えば、こんな・・・」

ピサロは私の「転写」に似たスキルで、メモ用紙に魔法陣を転写した。

「こ、これは・・・かなり古いわね・・・今じゃこんな術式は・・・」

「もっとありますよ。これ以後は条件次第になりますがね。条件を提示してもらえますか?」

「そ、そうね・・・あっ!!ちょっとこれを分析してからね。今日の取調べは終了します」

スターシア団長もピサロに屈してしまったようだ。

取調室から出て来たスターシア団長が言う。

「危ないところだったは、もう少しで奴の術中に嵌るところだったわ。辛うじて残っていた理性を総動員して、取調室から出て来たのよ。とりあえず、まずはこの魔法陣を分析しないとね・・・」

ネスカが言う。

「なぜ、スターシア姉さんが魔法陣に目がないことが分かったんだ?これ以上、スターシア姉さんもオルガ姉さんもピサロと接触させないほうがいい。となると・・・僕しかいないね」

ここで私はネスカに提案する。

「スキルからジョブを想像することはできないかな?ピサロが使った可能性があるスキルは、ジョブ鑑定を防ぐスキル、私の「転写」に似たスキル、おそらくだけど相手のジョブや能力などを鑑定するスキルだよね。他にも何かスキルを使っている可能性はあるようだけど・・・」

「このまま、無理に取調べを続けても、埒が明かない。一旦分析してみようか・・・・」

そこからネスカや文官に資料を取り寄せてもらって確認したが、そのようなスキルは存在しなかった。唯一、存在するスキルは、私が持つ「転写」だけだった。

「相手からスキルを奪い取ったり、スキルをコピーしたりするスキルかな?そんな伝説的なスキルなんてないだろうしね・・・」

「ネスカ、もしかしてだけど・・・」

私の中で、芽生えた仮説をネスカに伝えた。

★★★

私とネスカで取調べに臨む。

ネスカを見て、嫌そうな顔をしたピサロにネスカが言い放つ。

「下賤なジョブ持ちは、これだからな・・・僕が君の立場でもジョブは言えないよ。君には心から同情するよ・・・」

ネスカはこれでもかというくらいに蔑んだ表情で言った。

これはもちろん作戦だ。今までの態度を見て、ピサロが自分のジョブにコンプレックスを持っていることに間違いない。そこを突く作戦だ。

怒り出したピサロが言う。

「生まれやジョブが恵まれただけの奴が偉そうに!!もう帰ってくれ!!君たちに話すことは何もない」

私はさり気なく、ネスカを諫める。

「ネスカ王子、言いすぎですよ。魔王国ブライトンでもジョブによる差別は禁止されています」

この時、ピサロは私を見て、驚愕していた。

もう間違いない。

私はピサロに言った。

「正直に話をしてもらえませんか?私たちは世界を征服しようとか、他国を亡ぼそうと思っているわけではないんです。ただ、世界が平和になる方法を探しているだけなんです。ご協力をお願いします。これは同じ「雑用係」としてのお願いです」

ピサロはまだ、驚愕の表情のままだった。