作品タイトル不明
124 プリズンブレイク
結局、収容施設からピサロを強引に拉致することになった。ネスカが決断した決め手は、三人娘だった。
「誰も彼女たちには勝てないよ。近くに彼女たちがいれば、悪い事にはならない気がする・・・」
今回の作戦に参加するのは、私、ネスカ、オルガ団長、スターシア団長、チャーチル様、それに加えて現地の諜報部隊、ゲハルトさんだった。移動はビッテさんにお願いする。出発まで、積極的に現地の諜報部隊と連絡を取る。諜報部隊が入手した情報によると、すでに処刑予定日は過ぎているとのことで、延期された理由は、聖女が多く帝都にやって来た状況で、処刑などできないというのが、その理由だそうだ。
ネスカが言う。
「ピサロも三人娘に感謝しないといけないね」
★★★
最初にしたのは、三人娘に接触することだった。
ネスカが言うには、いきなりドラゴンに乗った集団が現れたらびっくりさせるし、事件を起こした後に私たちがいなくなると、それだけで関与を疑われる。なのでザスキア様を連れている三人娘の関係者だと思われれば、「あのヤバい人たちの一味ね・・・」と思わせることができるとのことだった。
「三人娘の周りや帝都には諜報員がうようよいるよ。そりゃあ、あんなことをしてたら不気味に思うよね?市民たちは楽しんでいるようだけど・・・」
広場に陣取り、屋台を出したり、歌を歌ったり、その歌に合わせて踊ったりと好き勝手している。ステージの上では、三人娘が物騒なことを叫んでいる。
「さあ、聖戦ですわ!!」
「そうです!!崇高な聖戦です」
「こちらの「早食い聖女」に挑戦する方はいらっしゃいませんか?」
どうやら、早食いのイベントをしているようだ。
イベントが落ち着いたところで三人娘と接触する。
「皆さん、お元気そうで何よりです。今日はイベントが盛り上がる新商品をお持ちしました。実際に使ってみますね」
私は打ち上げ式のスライム発射装置をセットする。そして、スライム発射装置のタンクにシャイニングスライムを入れ、空に打ち上げた。シャイニングスライムには爆発する魔石を仕込んでいるので、空中で爆発する。すると空中から色とりどりの光が降り注ぐ。
「将来的には、販売も考えてますが、とりあえずこれは試作品です。実際に使ってみてください。そして、その感想も後日教えてくださいね」
「これはいいですわね!!」
「クララさんもやりますね!!」
「クララさんには大きな幸せが降り注ぐでしょう!!」
大絶賛だった。近くに居たハイエルフの姉妹も近寄って来て、5人とドラゴンの姿のままのザスキア様がキャッキャ言っている。
それを尻目に私も声を張り上げる。
「さあ!!皆さん!!「缶詰聖女」が来ましたよ。まずは試食から!!美味しければ買ってください」
私の元にも多くの観衆が詰めかけた。しばらくして、ネスカが耳打ちしてくる。
「最初はかなり警戒していた諜報員たちも、「またアイツらの仲間か・・・」みたいな顔して、警戒を解いているよ。もう少し続けてくれると有難い。父上とゲハルト隊長はもう出発したからね」
ネスカの父親のチャーチル様は、吸血族で諜報活動のスペシャリストだという。ゲハルトさんの案内の元、ピサロが収容されている施設を炙り出すそうだ。
「夜間の活動で、父上の右に出る諜報員はいないよ。流石の母上も夜には、父上に勝てないかもしれないね」
一瞬、下ネタかと思ってしまったことが恥ずかしい・・・
私の聖女活動は3日目を迎えた。缶詰の売り上げは好調で、商品の補充でベルシティまで戻らなければならないほどだった。ビッテさんに乗って移動したのだが、これも作戦の一部だと言う。
「慣れとは怖いもので、ドラゴンが飛び交っても市民はもう何も思わないからね・・・これで作戦がやり易くなったよ」
その日の夜にチャーチル様とゲハルトさんの報告を聞く。
「収容施設は見付けたよ。それに対象者とも接触した。しかし、協力は得られなかった」
「ピサロ団長に『助けに来ましたよ』と言っても、『もういい・・・ここで私は死ぬことにする』と言われました。脱獄する意思があるなら、チャーチルさんと一緒に連れ出せたんですけどね。それにしてもチャーチルさんは、皆さんと違ったヤバさがあってびっくりしましたよ。魔王国ブライトンと戦争したら、フルボッコにされるでしょうね・・・」
となると・・・
「アレしかないでしょうね・・・オルガ姉さん、出番ですよ」
「任せときな!!」
★★★
私たちは、帝都郊外にある収容施設に来ている。そこには5階建ての塔が立っている。ゲハルトさんによると貴族などの高貴な身分の者が収容される施設で、今まで見たことがないくらいに警備が厳重だと言う。
一人のために100人程度の警備兵を動員するなんて異常らしい。
「ピサロ団長に逃げ出されたら大変ですからね。国として絶対に隠したい情報をかなり握っていますからね。いつもの団長なら、これ幸いと思って、逃げるのになあ・・・そんでその情報を元に神聖ラドリア帝国と交渉して・・・何かすべてを諦めている感じがしましたよ」
「そうですか・・・やはり脱獄じゃなくて、拉致しないといけませんね。作戦通りやりましょう」
その作戦とは、なんと強行突破だった。
オルガ団長が門に配置している警備兵を吹き飛ばし、大きなハンマーを何度も門扉に叩き付け、門扉を破壊してしまった。
そして、迫り来る警備兵をスターシア団長が電撃魔法を放って、気絶させていく。私たちは、全身黒ずくめの忍者スタイルなので、本当にヤバい集団が襲撃して来たと思った警備兵たちは、慌てふためいている。
「おい!!緊急連絡だ!!早くしろ!!」
「そ、それが・・・通信の魔道具が・・・動きません!!」
チャーチル様が言う。
「全部壊しているよ。基本中の基本だからね」
ネスカも何も考えずに強行突破を指示したわけではない。予め警備兵に手練れはいないという情報を掴んでいたし、数が多いだけだと判断してのことだ。そして、順調に私たちは最上階のピサロが収容されている独房に到着した。
もちろん、独房のドアもオルガ団長がぶち壊す。
中に居たのは、痩せぎすで、青白い肌の男だった。アウグスト団長やゲハルトさん、その他の隊長を知っている私からすると、全く聖騎士団長には見えなかった。
「強引な人たちだね・・・抵抗しても無駄のようだし、好きにするといい。ただ、私をここから連れ出したことは後悔することになると思うがね」
意味深な発言をするピサロを一旦無視して、今度はスターシア団長が屋根を魔法で吹き飛ばした。そして、ビッテさんが人化を解き、ドラゴンの姿になったところで、拘束したピサロとともにと一緒にビッテさんに乗って、空へと舞い上がった。
空から見えるのは、パニック状態になっている警備兵と廃墟となった収容施設だった。
「ビッテさん、悪いけど王都ブリッドまで、一気に飛んでください。ベルシティだと足がつく可能性がありますからね」
「分かりました。こんな無茶なことをしたのは、ヤスダとブライトンを乗せていた時以来ですよ。結構楽しかったなあ・・・」
呑気なビッテさんに乗った私たちは、魔王国ブライトンへと空の旅に出たのであった。