軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

106 悪ノリ

今日は久しぶりに冒険者ギルドに勤めているミリアと休みが合い、ランチをすることになった。

「最近どう?冒険者ギルドの調子は?」

「新設されたギルド支部としては、異例の収益を上げているわ」

「そうなんだ。忙しい?」

「忙しいけど、何とかなっているわ。それよりも最近は怪しい採取依頼が大量に届くのよ。噂ではこのベルシティにマッドサイエンティストがいるんじゃないかってね。スライムの価格が値上がりしているのも関係あるのかしら?」

「多分、私たちがやっている極秘任務の関係ね。変な虫系の魔物の採取依頼でしょ?」

「そうそう、あの気持ち悪いタウゼントワームとかね」

「それとなく、噂を打消してもらえたら、助かるわね」

そんな噂が立っているのか・・・まあ、仕方ないといえば仕方ない。

私たちがやっている極秘任務とは、あの魔物散布作戦のことだ。

初公演を終えた三人娘は、また「邪教徒を殲滅する」と騒ぎ出した。ハイエルフの姉妹も同調する。なので、活動の頻度を上げているのだった。

そうなると投下する魔物が足りなくなる。そもそもドラゴン御一家やハイエルフの姉妹でないと大量に魔物を捕獲できなからね。

となるとスライムだが、ネスカが言うには、あまり同じ魔物ばかり撒くのは得策ではないそうだ。

「エランツ派の信者が恐れているのは、得体の知れない何かが起こっているということなんだ。だから、相手が想像しないようなことをするほうが効果がある。相手も正規軍が入っているから、スライムだけなら、そのうち対処されると思うよ」

なので、新たに散布する魔物を選定することにした。集めやすく、効果があり、そして殺傷能力がないとなるとこれまた難しい。最初は色々なスライムを集めて対応していた。そのお陰でゴールデンスライムという潰すと砂金が出て来るお宝スライムが発見されたのだけど、それを散布すると逆に喜ばせてしまうからね。スライム研究所所長のハイドンは大喜びしていたけど。

ブラッドスライムや弱毒性のポイズンスライムに続いて、使えるスライムはスメルスライムという強烈な異臭を放つスライムだけだった。なので、危険性のない魔物として候補に挙がったのがタウゼントワームだ。このタウゼントワームは、30センチくらいの大きさで、ムカデやゲジゲジに似た感じの魔物だ。実はこの魔物、そのまま食べられるのだ。リザードマンやフロッグ族はそのままバリバリ食べているけど、私には絶対に無理だ。

なので、この魔物を撒くことにしたのだが、上空から落とすとただの肉片になってしまうし、当たると怪我をさせてしまう。そこで考えたのがスライムでコーティングすることだった。ゼリースライムでコーティングすると原型を保ち、3割くらいは落下した後も動き続けることが判明したので、それを採用することになった。

また、スライム発射装置も作った。だって、そんな気持ち悪い物を手で触れないからね。

スライム発射装置の構造は単純で大きなタンクと長めの筒、それに魔石があれば作れた。筒に風魔法の魔法陣を刻印すればいいだけだからね。これは当初「ロキ・ドシアナ式スライム発射装置」と名付けられたが、二人がそれを拒んだ。こんな気持ち悪い生物兵器に自分たちの名前が付くことを嫌がったからだ。なので、「聖女の鉄槌」と名付けられた。

それから何度も実験を繰り返し、今は私たちの活動の主力兵器になっている。因みに実験場所はメサレムだ。潜入班がいるから実験結果がすぐに分かるからね。潜入班の報告では、エランツ派の信者は激減し、少しでも異常があると、緊急警報が鳴り響いているそうだ。

★★★

そして、今日も極秘任務に出発する。最近はメサレムだけでなく、メサレムに向かっているエランツ派の信者の野営地を中心に散布している。エランツ派の信者にしてみたら、この困難な状況に打ち勝ち、たどり着いたメサレムで更なる地獄が待っているので、流石に心が折れる信者が多い。まあ、ほとんどの信者が途中で帰還するけどね。

「皆さん!!私たちはこれから極秘任務に出発します!!」

「そうです。邪教徒を殲滅してやります!!」

「これは聖戦です!!皆さんの力を分けてください!!」

出発前は必ず、三人娘が市民を前に演説を行う。自分たちで極秘任務って言ってたら、もはや極秘任務でも何でもない。しかし、これは逆に目くらましになるとネスカは言う。

「この町にも神聖ラドリア帝国の諜報員はいる。でも三人娘は、女優だと思われているから、公演の宣伝か、パフォーマンスの一環だと思われていると思うよ。市民の反応を見てもそんな感じだし。流石に僕たちが、本当は極悪な任務に就いているなんて思いもしないだろうね」

まあ、「これからスライムを撒きに行きます」とは言ってないからね。

そして、いつもどおり、ドラゴン御一家とビッテさんに分乗し、空に舞い上がる。市民の歓声を背に私たちは今日も任務に就くのだった。

ただ、今日はいつもとは違う。ネスカがまた悪辣で嫌らしいことを考えついたのだ。

「今日は敵の総本山を襲撃してやろう」

★★★

エランツ派の総本山である大聖堂上空に到着した。

「死になさい!!」

「これが天罰です!!」

「皆殺しですわ!!」

「いいぞ!!ヤスダ!!」

「やれやれ!!」

三人娘とハイエルフの姉妹のボルテージはマックスだ。「聖女の鉄槌」と呼ばれるスライム発射装置で、スライムやタウゼントワームを乱射している。殺傷力はゼロだが、初めてタウゼントワームを見た人は卒倒するだろう。まさか食べられるなんて思わないしね。

あっと言う間に大聖堂は血塗れになり、周囲にスメルスライムから発せられる強烈な異臭が立ち込め、そこら中にタウゼントワームが這いまわる。まさに地獄絵図だった。多くの信者が逃げ惑い、大混乱だ。

「よし!!これくらいでいいだろう。ビラを撒いて帰ろうか」

ビラにはこう書かれている。

「他種族を排斥する邪教徒には、神の天罰を!!」

後に、この事件は後世に語り継がれることになる。「悪魔の襲撃事件」として・・・