軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

言われて初めて、立場が逆転していることに気付く

王都で最初に話しかけてきたよくわからんガキが駆け込んだのは、歴史の重みを感じる——言い換えれば、かなり古い——建物だった。

「あら……?」

フレデリカは首を傾げると、黒髪の少女の後を追うように建物の中へと入る。

おい、勝手に入っていいのか?

「フレっちも知らないの? 新しい子かな」

シビラも後を追うように、建物の中へと入っていく。

二人の行動と、シビラの発言から察するに——。

「ん? 何つったってんのよ。目的地よ」

やはりここが、王都セントゴダートの孤児院のようだ。ということは、あのガキも孤児か。

皆と目を見合わせると、その大きな扉をくぐって建物の中へと足を踏み入れた。

この国の中心である、王都セントゴダート。

その孤児院というだけあって、明らかに内部の広さが違う。

大きさだけなら、ハモンドにあった女神教の教会よりも大きいんじゃないだろうか。

建物の中は、もう入った直後から賑やかなものだった。

ほうきや雑巾を持っていたが、今は掃除の手も止まっていた。

「フレデリカせんせー!」

既にフレデリカは顔見知りの子たちと挨拶し、頭を撫でている。

子供達の声の温度が一段上がったのに気付いたからか、奥から様子を見に来た壮年の男と、近い年齢の女性が現れた。

「おや? フレデリカではないですか」

「帰って来るの、早かったわねえ」

「こんばんわ、マーカスさん、ミラベルさん。ちょっとお願いごとを受けて、今日はこちらへ戻ってきました。イザベラ様は?」

「はい、部屋にいらっしゃいます」

「ありがとうございます。それと——」

フレデリカが、俺達の方を振り向いた。

「今回はこの五人に護衛も兼ねて、一緒に来ていただきました。成人となったアドリアの子たちと、その知人の方々」

「それはそれは……分かりました。皆様、また挨拶は後ほど」

俺達は孤児院を担当する大人に軽く挨拶をすると、フレデリカとともに二階へと上った。

——途中、ふと振り返る。

部屋の隅で、あの黒髪の少女がぽつんと一人で俺達を見ていた。

どうやら子供は主に一階にいるようで、今の二階は静かだった。

フレデリカは一番奥の部屋まで行き、扉をノックする。

「はい」

内側から返事を聞くと、俺達の方に一度目を向けて、部屋に入っていった。

「失礼します」

「……フレデリカですか!? 一階が妙に賑やかになったように感じましたが、なるほど合点がいきました。予定より随分と早いですが、事情を聞いても?」

「もちろんです、イザベラ様」

イザベラと呼ばれた女性は、齢五十ほどに見える女性だった。

年齢を感じさせつつも、上品な美しさを感じさせる人。第一印象はそんなところだろうか。

無論あちらも、こちら側に目を向けている。

「いろいろ質問をしたいところですが、フレデリカからの報告を先に聞きましょう」

「はい」

それからフレデリカは、俺達がアドリアの孤児院出身であること、セントゴダートに用事があったことを話した。

「なるほど、あなた方が噂の、勇者パーティーですか」

——ああ、そうか。

当然王都の女神教なら、そういう認識になるだろうな。

「勇者は今、別行動中だ」

フレデリカが答えにくそうにしていたので、俺が代わりに答えた。

エミーやジャネットも含め、驚いた顔をして俺を見たが、まあ勝手に言ってしまっても構わないだろう。

俺の言葉にイザベラは少し言い淀むと、ひとつ手を叩いて俺に聞いてきた。

「わかりました。ただ、一つ。——よもや、【勇者】を仲間外れにしている、というわけではありませんね?」

イザベラは、穏やかな雰囲気を変え、張り詰めた空気で俺を視線で射貫く。

仲間外れ、か。

確かに、いつの間にか四人組の中で、ヴィンスだけが抜けた形になってしまったな。

「いや、そうではない」

「それは、女神に誓って嘘偽りないと言えますか?」

女神、という単語を聞いて思わずシビラを見る。

シビラの方は、こんな状況でも面白そうに肩をすくめるのみだ。

やれやれ、じゃあ勝手に喋るぞ。

「正直に言っていい、というのなら」

「はい」

「俺が勇者パーティーに追い出された」

「はい。……はい?」

「【勇者】も【聖騎士】も【賢者】も、回復魔法を使えるからな。ただその後、エミーが自主的に抜け出して、ジャネットも抜け出した。これはマジで嘘偽りない話だ、女神に誓って真実だと言い切れるぞ」

何故ならそこにいる女神が目撃者だからな。

イザベラが視線を向けると、エミーとジャネットが頷いた。

「そう、ですか……分かりました。女神教の孤児院管理メンバーとして、孤児出身の【勇者】には大変興味がありましたが……」

「俺達も、どこにいるか分からないんだ。だが今回ここに来たのは、ヴィンスの……勇者の足取りを追うことも目的の一つにしている。フレデリカに来てもらったのもそれが理由だ」

「……フレデリカ、今の話に嘘偽りは?」

「ありません、女神に誓って」

教会の者にとって、女神の名を出すことは非常に重いことだ。俺の場合は……まあ、隣の目撃者に誓って、ってところか?

フレデリカが明確に肯定したことにより、イザベラも納得したらしい。

「わかりました。滞在を許可します」

「ありがとうございます、イザベラ様」

「いいのよ、普段からフレデリカには苦労かけてるんだもの。たまにはわがまま言ってくれないと、こっちの気が休まらないわ」

それまでの緊張を解いて、イザベラは自然に笑った。

緩んだ空気の中で、フレデリカはもう一つ質問をした。

「ところで、掃除をしている中に、長い黒髪の子がいましたよね。以前はいなかったと思いますが、あの子は?」

「ああ、あの子ね……」

フレデリカの質問に、イザベラはあの玄関で絡んできた女の子のことを話し始めた。