軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ハモンドのダンジョンで、かつての自分を思い出す

ハモンドのダンジョン上層に足を踏み入れる。

屋内でありながら明るいダンジョンに、更にダンジョンから漏れ出す魔力をそのまま利用したランプが並んであり、昼間のように……とまでは言えないが、かなり明るくなっており、整備されたダンジョンの内部を照らす。

出口への看板が立ち並ぶ広い空間を数分ほど歩くと、すぐに前方にパーティーが見えた。

人数は三人だが、相手のゴブリンは四体。僅かな人数差に手間取っているようだな。

「くっそー、まだ一層なのに固まってるとかありかよー」

「ちっ、運がねえなあ」

どうやら苦戦しているようだと気付いた俺は、すぐに声をかけた。

獲物の横取りはあまり喜ばれないが、放置も良いわけではない。

まず声を掛けて助け合うのは、冒険者ギルド内で定められたルールだ。

「助けが要るか?」

「えっ! あっ、お願いします!」

返事を聞いて、すぐに俺は前に出て残り一匹に対処した。

ゴブリンの連携を崩せず攻めあぐねていたのだ、数が減ればもう大丈夫だろう。

黒ゴブリンに比べて、明らかに動きが緩慢で力の弱い紫色のゴブリン。一体を難なく倒すと、残りの三匹もすぐに三人組が仕留めた。

少し背の低い戦士が、前に出て俺に頭を下げる。

「あの、ありがとうございました!」

「構わない。上層にはしばらくいたのか?」

「はい、まだレッサータウロスまでは自信がなくて……」

「そうか、なら勇者パーティーが通ったか見ていないか? 男一人に女三人だ」

青年は後ろを振り向き、短槍を持つ男と剣を持つ女に確認を取るように振り向く。

二人とも首を振ると、俺に向き直った。

「俺らは見てないですね」

「ふむ……分かった、情報感謝する」

俺は三人に別れを告げると、手を振って三人に挨拶するシビラとともに奥へと進んだ。

「まだ入っていないらしいな」

「んー、受付の情報が間違っていたとは考えにくいし……すれ違ったか、もしくは後から入ってくるか。ま、どっちみちアタシの考えなら有利に働くわ。楽しみにしてなさい」

あいつらが先に入っていても後から来ても、有利に働く?

よく分からんが、まあシビラがそう言うのならそうなのだろうな。

「それじゃ、次々行くわよ」

元気よくダンジョンを進むシビラに、肩をすくめながら俺も並んだ。

上層の第一層は、かなり広い。

出てくるのは、まるで練習用に作られたかのように基本紫のゴブリンのみ。

シビラの言うダンジョンの成り立ちのことを考えると、恐らく大規模侵攻をするためにダンジョンを広くしたのだろう。

一気に大量に作って、一気に溢れ出させるつもりで作ったのだと。

それがこうして人間の成長のためにいいように使われてしまうというのだから、皮肉なものだ。

広いフロアはすっかり人間によって整備されており、魔物と戦いながら立てられた看板により、第二層までの道のりも誰にでも分かるようになっている。

何組もの冒険者とすれ違いながら、時に協力しつつ進んでいくと、すぐに第二層への看板と、レッサータウロスの注意書きが目に入った。

「最初はこいつ相手でも怖いもんなんだよな」

「力の強さは、何よりも初心者にとって恐怖の対象だものね。でもすぐに、素早さこそが最も厄介なものだと分かるようになる」

シビラの言葉に無言で頷くと、俺は階段を降りた。

第二層に降りて数分。レッサータウロスが現れた。

上層の敵として、俺が杖で殴っても倒せるほどに倒しやすい相手。

「お前は以前の時点で相手じゃないんだ。通してもらうぞ」

レッサータウロスが、棍棒をゆっくりと構えて振り上げる前に、俺は一歩出て首を一突きした。

それで、終わり。

倒してみた感触としては、やはり剣の方が使いやすいというぐらいのものだ。

この頃は、まだ俺もいけるのではないかと思っていた。

三人の役にも、十分に立てると。

「走り抜ける。索敵は任せてもいいか?」

「もちろん。魔物もちゃっちゃと倒しちゃうわね」

「ああ」

こいつら相手なら、シビラ一人でも十分だろう。

俺はシビラに並んで、上層フロアボスまで駆け足で進んだ。

上層フロアボスは、赤いレッサータウロス。

動きが多少速く、力が多少強く、体力だけが莫大に高い。その程度のフロアボスである。

俺は誰もいない事を確認すると、ゆっくり歩く相手に向かって、魔法を放った。

「《アビスネイル》」

魔王を倒した闇魔法の一撃は、フロアボスの体力を根こそぎ奪っていった。

前傾しながら、地面に倒れる。

完全に、感覚麻痺してしまっているが、フロアボスを一撃で倒す魔法というものがどれだけ異常なものか、最初期に時間をかけて倒したことを考えると何ともいえないものがあるな……。

あの時はどうしていたか……確かジャネットが指示を出していたんだ。

まず真っ先に、俺に対して前に出ないことを指示し、エミーに受けられるか聞いた。

重いとエミーが言った直後、ヴィンスにエミーの斜め側、自分が反対側に行き、十字の魔法集中攻撃をしてフロアボスを倒したのだ。

あの頃から、ジャネットには助けられてばかりだった。

昨日シビラとダンジョンに潜った時にふと頭の隅に思った。もしもジャネットと一緒に組めたら、どれほど心強いだろうかと。

シビラとジャネットが、相談しながら立てる作戦。そんなものを、想像してしまう。

そして……そんな頼りになるあいつの心を折った存在。

俺達が戦うのは、そんなヤツだ。

「次に行くぞ」

「ええ」

俺はフロアボスを通り過ぎ、中層への階段を降りた。

中層である第六層に降りると、すぐにダンジョンの雰囲気が変わる。

今までの雰囲気で、壁一面が青くなっている。

違う世界に迷い込んだと思うほどの急激な変化に、最初に降りた時は本当に緊張したものだ。

あの時のように、魔物を攻撃する勇者も賢者もいなければ、俺を守る聖騎士もいない。

その代わりに魔道士と——そいつがくれた俺の攻撃魔法。

「ラセル。いるわ」

その言葉に、俺はすぐに剣を構える。

ダンジョンの奥から、かつて俺を苦しめてきたシルエットが現れた。