軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

料理を教えましょう

チヤが反射的に言った食べたいもの。

それは『親子丼』。

日本人には当たり前すぎる丼物の名前だが、命名はなかなか残酷だ。

親の鶏の肉と、鶏の産んだ子供が産まれるはずの卵を一緒に料理して熱して、人間が食べてしまうのだから。

と、まあ、こういう事をチヤはお母さんに説明した。

だが、チヤの家には鍋は1つしか無い。

一度に調理出来るのはこの鍋だけなのだ。

そして、お母さんに説明して納得してもらった後に魔力の残りを確認する。

魔力 1984

1984ポイントの買い物が出来る。

スキル・通販の地球の買い物の値段はチヤが死んだ時に固定されているみたいなのだ。

つまり、昭和のように物価が安くない。

令和時代の物価である。

親子丼に必要な食材は以下の通りだ。

通販で検索した。

卵10個入り1パック 250円

鶏もも肉 250g 350円

玉ねぎ 1玉(本当は1/2でいい)40円

お米 2kg 2000円

ミツバ 1束 130円

めんつゆ 800ml 250円

お母さんが食べたい

パロの実 50ルビ

米だけで予算オーバーである。

何故、令和の米騒動期に死んでしまったのか?

昭和の米は安かった。

それに、美味しかった。

米は近所の米農家から買うのが普通だった。

30kgに1万円出したら、おつりがくるのが普通の時代だ。

何故、2kgで2000円もするのか理解出来ない。

ブランド米なのか?

いや、普通米だ。

米のせいで親子丼が食べられない。

いや、親子丼もどき、なら食べられる。

米を麦にすれば良い。

チヤはお母さんに指令を出した。

「麦を炊いてくれ」と。

お母さんはわからない。

「 炊(た) く」とは何か?

チヤも分量は知らないので「麦を水で茹でてくれ」とお願いした。

娘のお願いなのでやってみるお母さん。

だって、娘の話した「親子丼」が魅力的だったから。

卵料理なんて、いつ依頼だろうか?6年?7年?いや、8年前かもしれない。

それも「半熟」で食べられる「卵」だと言うではないか!?

卵は生で食べるとお腹を壊すのが普通だ。

「半熟」とは、どんな味がするのだろうか?

上流階級でも食べられない卵なのではないだろうか?

お母さんの胸は期待に膨らむ。

チヤは不安になり、お母さんが料理している所に近づいて鍋を見ると、あらやだ!?蓋を閉めて無い!麦が炊けないわ!

「お母さん!鍋の蓋を閉めないと!」

お母さんはチヤの顔を見て当たり前のように言った。

「蓋なんて無いわよ」

チヤの麦ご飯は遠ざかった。

きっと「麦がゆ」みたいな物が出来上がるだろう。

チヤは決意した。

次にポイントいや魔力が溜まったら蓋付きの鍋を買おうと。

くっ!と涙を飲んで、しばらくして出来上がった麦がゆを2つしかないお椀の中に入れてアイテムボックス(時間停止)に入れて、お母さんに鍋を洗ってもらい、水と通販で購入しためんつゆを入れる。

これはチヤの前世の身についた分量だ。

「何ml?」と聞かれても答えられない。

その間にお母さんに、鶏肉は一口大に切り、玉ねぎは皮を剥いて薄切りにしてもらい、残った半玉はアイテムボックスにしまう。

そして、三つ葉は3cm程度の長さに切ってもらう。

三つ葉は1束も使わないので、残りはこれもアイテムボックスの中に入れる。

卵を溶いてもらおうとしたところで、器が無い事に気がついて「終わった」という顔をチヤがした。

お母さんは生卵が気になって仕方がないので、チヤの様子に気がつかない。

しかし、チヤは負けなかった!

余っているポイントが確か500くらいあったはず、と。

通販を開いて、今あるポイントで買える器を探すと、あったー!1個110円だ!ありがとう!じゃぱーん!

チヤは2人ぶんの2つ買う。

出て来た器に1人2つの卵を割り入れて、箸で、はしはどこ?

ない。

チヤはまだ300ポイントある!と箸を通販で探すと、190円の箸を発見した!

何故、通販の箸はまとめ買いが多いのか、この時ばかりは通販を恨んだ。

慌てて包装を剥がして卵を溶いていく。

「あらー、チヤちゃん凄いわねー。いつ教わったのかしらー」

チヤが冷や汗をかきそうな事をさらりと言う母である。

「今は時間が無いから、後でね!お母さんは鍋を火にかけておいて!」

「はいはい」

誤魔化されてくれた母にホッとして、チヤは2人分の卵を準備し終わった。

食材は(米以外)全て揃った。

懐かしの親子丼まであと少しだ。

「チヤちゃん、ゆだったわー」

「鶏肉と玉ねぎを入れて煮てー。肉に火が通るまでだよ!」

「はーい」

チヤは料理の具合が気になってお母さんの周りをウロウロしてしまう。

5歳児が食事を待てなくて、お母さんの周りをウロウロする。

と、聞くだけなら可愛い。食いしん坊だ。

しばらく、うろついて、お母さんから声がかかった。

「煮えたわよー」

「お母さん!椅子を動かして!卵は私が入れる!」

「えー、お母さんがやりたいー」

「初めは上手く出来ないからダメ!お母さんは見て覚えて!」

「はーい。チヤちゃんは火傷しないように気をつけてね」

椅子をかまどの前に置いてくれて、チヤは靴を脱いで卵の入った器をもって、くるりと2人分を肉と玉ねぎの上に回しかけた。

具材を卵でとじるのだ。

「お母さん、わかった?」

「んー、なんとなく?具の上に卵を満遍なくかけたらいいのよね?」

「うん、そんな感じ。あ、卵が固まってきた。もうちょっと、もうちょっとーーお母さん!今!今だよ!火から遠ざけて!」

「はいはい。この後はどうするの?」

「んー、鍋だから、お玉で麦の上に乗せるだけ」

お母さんは聞いた事の無い単語があった。

「おたまって、何?」

チヤは不思議な顔をした。

お母さんも不思議な顔をした。

まさか、お玉が、無い?

その可能性、いや、確実に、無いのを自覚して、チヤは通販を開いた!

お玉を検索!

え〜と、安い順に表示!

あった!166円のお玉!今のポイントで買える、お玉!

買ったあとに、ぺいっと、包装を解いてから、使い心地を確認して、麦かゆが入ったお椀を取り出して、麦の上にたっぷりと親子煮をかけて、汁までかけた。

出来上がり、だ!