軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

スイード伯爵領地に帰還中 14

チヤの勢いの良い言葉を聞いて覚えたおじいちゃんは復唱する。

「そうそう、そんな名前だったね。えーっと『疲れなんて吹っ飛んじゃう! 魔法薬・生き返るぜ栄養薬!』だね。

あれは『木族』の秘薬かい?」

チヤはキョトンとした。

あれはスキルの『通販』で購入したのだ。

『木族の秘薬』などでは無い。

「違うよ。私の固有スキルで手に入れたの。なんだか思ったよりも効果抜群だったねっ!」

チヤは一緒に魔法薬を飲んだおじいちゃんの同意が欲しくてテンションが上がった。

人は共感することによって仲が深まるのだ。

それを聞いたおじいちゃんは『木族の秘薬』だ、と思った。

チヤは否定したが、あの魔法薬は一般には出回っておらずに、情報が集まってくる領主のウェンズですら初めて知る魔法薬だからだ。

しかも、チヤは『固有スキル』で手に入れたと言っているので、間違いなく『木族の力』で手に入れているので『木族の秘薬』と言ってもいい。

事の重大さを自覚していないチヤは、いつまでもおじいちゃんの共感がなくて「あれっ?」と、ちょっとおかしいぞ、と気がついた。

その時、部屋の扉がノックされたので、身軽だったおばあちゃんが扉を開けて応対すると、扉を閉めてからおじいちゃんの元に戻ってきた。

「あなた、こんなポーションが騎士から届いたのだけど、今飲んだ方がいいかしら?」

おばあちゃんがおじいちゃんに見せたのは間違いなく『疲れなんて吹っ飛んじゃう! 魔法薬・生き返るぜ栄養薬!』である。

チヤは勢いよく「飲んでいいよ!」と言ったが、おじいちゃんは難しい顔だ。

おばあちゃんが「飲んではいけないモノを騎士は配っているの?」と何かの陰謀か? と訝しんだのだが、おじいちゃんが「チヤちゃんの提供物だから飲んでもいい」と言ったので、おばあちゃんは慎重に魔法薬を飲んだ。

すると、どうした事だろうか!?

連日の馬車旅で痛かった関節痛の痛みが無くなったではないか!?

おばあちゃんことベティーナが夫を見ると、おじいちゃんこと夫のウェンズは重々しく頷いた。

今回の魔法薬は身内にだけ配られたので良かったが、善意で栄養ドリンクを提供したチヤには注意しなければならないのが気が重い。

だってチヤはみんなの為に『良いこと』をしたと思っているからだ。

誰だって子供の善意の気持ちを折るのはやりたくない。

しかし、言わないとチヤが危ない目に遭うかもしれない。

ウェンズは孫のチヤと真面目に視線を合わせた。

「チヤちゃん、この魔法薬は、身内以外には渡しても売ってもいけないよ。争いの元になりかねないからね」

チヤには半分も理解できなかった。

決してチヤが子供だからでは無い。

心は大人なのだから。

では何故、チヤはウェンズの言葉を理解できなかったのか?

それは『この世界の常識を知らない』からだ。

知識が無いのは仕方がないけれど、知識が無いだけで搾取されたり、誘拐されて情報を引き出された後は殺されるのが普通の世界だから、知識の出し入れは慎重にしなければならない。

理解できていない顔で呆けているチヤではなく、母親のソフィアとチヤの侍女のセーラに言って聞かせなけらばならないと決めた。

しかし、幼な子のチヤがうっかりやらかしてしまう可能性もあるので、本人にも自覚だけはさせないといけない。

「チヤちゃん、あの魔法薬は、チヤちゃんの『固有スキル』で得たモノだろう? それは『木族の秘薬』となんら変わりないんだ。

怖い人が魔法薬を欲しがってチヤちゃんを誘拐するかもしれないから、誰かに渡したい珍しいモノがある時は、必ずおじいちゃんか身内の者に確認を取ってからにしなさい。

これはチヤちゃんが不幸にならない為だからね?」

ここまで、おじいちゃんに噛み砕いてもらったから、やっとチヤは理解した。

今回用意した栄養ドリンク『疲れなんて吹っ飛んじゃう! 魔法薬・生き返るぜ栄養薬!』は、一般的なモノではなかったのだ。

前世では当たり前のように栄養ドリンクが誰でも手に入る環境にいたから気が付かなかったチヤだった。

きっと、とても珍しいモノだったのだ。

チヤはキュッと唇を噛んで頷いた。

唇を噛んだのは、己の浅はかさゆえだ。

チヤはたまにウェンズが驚くくらいに大人な表情を見せることがあるので、頭は良いのだと理解していたので、今回の注意はこれだけにしておいた。

さあ!

着替えは済んでいるから、侍従を部屋に入れて片付けをしてもらわなければならない。

阿吽の呼吸でベティーナが廊下に待機していた侍従と侍女を呼び込んで、出かける準備を進めた。

◇◇◇

無事に使用人が荷物を纏めて馬車が出発すると、次は町により昼休憩まではトイレ休憩が1回あるだけだ。

野糞である。

チヤも前世で子供時に催した時は、田んぼの隅で友達と野糞をしていただけあって抵抗感は無いが、用を済ます音が他者に聞かれるのは恥ずかしのは変わらない。

いっそ、心まで童子に戻れたら羞恥も無いだろうに、と思ったチヤだった。

乗り合い馬車や商人の馬車とすれ違いながらも、着々と目的地に向かう一行だった。

チヤのドリンク、いや『魔法薬』を飲んだ一行は、元気120%で進んだ。