軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14 恋

ソフィアはセドリックのことも片付いて心機一転、新しいドレスを仕立てることにした。

職人を呼んで試着をして、社交の場で兄と系統や色を合わせるために彼にも意見を聞くために呼び出していた。

「こんなのは、どうかしら」

着せてもらったドレスの裾を広げてソフィアは言った。

「……すごく、かわいいね」

「あ、ありがとう」

(すごく、かわいい……)

アルバートの言葉を心の中で復唱しながら、ソフィアは別のドレスを身にまとう。

「これは、どう?」

「ソフィアの魅力が良く伝わる良いドレスだね」

「……ありがとう」

そうして二着目でおや? と違和感を感じた。

婚約する前の兄なら、冷静に、元婚約者の髪色や似合う系統を把握して的確なアドバイスをくれたというのになんだか違う気がする。

三着目を着て見せるとそれは確信に変わった。

「誰もが振り向くかわいさ」

「どんな令嬢でもかすんでしまうほど素敵」

「眼福」

着れば着るほどそれはたしかなものになっていって、ソフィアはついたての向こうで、新しいドレスを着せてもらいながら眉間にシワを寄せた。

どうやら、アルバートは冷静な視点を忘れてしまっているらしい。

先日の記録石の件があってからソフィアは薄々感じていたが、彼はソフィアが思っている以上にソフィアのことが好きだ。

どんなドレスを着ても、とろけそうな笑みで褒める言葉しか言わないぐらいソフィアのことが好きなのだ。

そしてその言葉がまんざらでもなくて、眉間にしわを寄せながらもにやけてしまう。

だって何を着ても、かわいいかわいいと言ってくれるんだから、そうもなる。

同時に照れてしまうような気持ちもあって、ハの字眉にしながら頬を染めて小さな笑みを浮かべる表情は甘酸っぱい恋をしている乙女そのものだ。

婚約してすぐはあんなに、甘い言葉や彼の気持ちを疑っていたと言うのに今ではその面影もない。

なにか劇的なことがあったわけでは無いけれど、過ごしていくうちに実感がわいて、彼の態度で思い知った。

アルバートは裏切ったりしない、今までもこれからも。

言葉だけじゃなくずっと行動で示してくれた、そんなアルバートの言葉なら怖くない。

(嬉しい……けれど、わたくしばっかりがこんなふうにドキドキするのも不平等ですわ)

そうして決意して、ドレスを着せてもらってまたアルバートの前に出た。

「天使と見まがうほどかわいい」

ソフィアを見てそういう彼の方へと歩いて行く。

それからソフィアは「ありがとう」と短く言ってから彼をいつもより一歩近くに寄った。

「……ア、アルバートもいつもかっこいいですわ」

あふれんばかりのかわいいをもらったので、ソフィアはかっこいいで切り返す。

以前から思っていたことだ。

だから言うのは躊躇しなかった。しかし名前は少し噛んでしまった。

せっかくかっこいいと、名前呼びの二つでアルバートを赤面させてしまおうと言う作戦だったのに。

「あ、ありがとう」

「ええ」

「…………」

ふといつものように手が伸びてくる。

頬に触れてさらりと撫でて、しかし兄はなんだか驚いたような、変な顔をしていて、ソフィアは小首をかしげた。

「……お兄様?」

「ごめん。ソフィア、私、君にキスしたくなってしまった」

「え?」

「名前で呼ばれたからかな、あ、君ってかわいい妹なだけじゃなくて、素敵な女の子なんだなって」

「っ、え?」

「……いい?」

問われて、いろいろと混乱した。

元から女の子だったしアルバートはそう思っていなかったのかとか、でもそれはそれで当然かとか。

意識してくれて、そう思ってくれるのも嬉しい。

しかし唐突なキスはいかがなものなのか。

いろいろなことが頭の中を駆け巡る。

それでも、一つ即座にソフィアの体を動かした気持ちがある。

それは、ソフィアもかっこいいアルバートとそうしてみたいということ。

こくりと小さく頷くと、どちらともなく唇を重ねる。

それからゆっくりとした仕草で離れて、気恥ずかしさとうれしさで、ソフィアはまた小さく笑ったのだった。