軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七十六話 集う役者たち……

太陽に愛されし国サンクランド王国の王都「ソル・サリエンテ」は、遠くから見ると巨大な城のような外見をしている。

街全体を見下ろす高い位置にある王城、ソルエクスード城、戦城として建築された城を頂点に、その周囲に城下町が広がる。

その街もまた石造りの、堅牢かつ荘厳な造りをしている。

さらに、街並みを守るかのように、ぐるりと強固な城壁が 聳(そび) え立ち、外敵の侵入を阻んでいる。

――これ……、もしティアムーンとサンクランドが戦争にでもなったら、攻めるのが大変そうですわね。レムノ王国と同盟関係が築けたとしても、ここを攻め落とすのは難しそうですわ。

軍事の素人であるミーアから見ても、ソル・サリエンテは、きわめて堅牢な都のように見えた。

――ふーむ、やはりシオンには長生きしていただかなければいけませんわね。友好関係を大切にしなければ……。

そんなことを考えながら、ふと、ミーアは隣を見た。

そこには、物珍しそうに辺りを見回すティオーナの姿があった。

綺麗に敷き詰められた石畳を、ティオーナと並んで歩いていると、ミーアは、なんだか不思議な気持ちになってしまう。

――まさか、ティオーナさんと一緒に、サンクランドの王都を歩くことになるとは思っておりませんでしたわ。しかも、あのシオンの命を守るために、わざわざ来るだなんて……。

あの、断頭台の日から考えると、まるで夢の中にいるみたいだった。

アンヌと仲良く話しているリオラを見て、その感慨は深くなる。

自らの命を狙っていたルールー族、その少女ともミーアは友好的な関係を築いているのだ。

――全然、想像できませんでしたわ。なんだか、ずいぶんと遠くに来てしまったみたい……。

などと思いつつ、ミーアは苦笑交じりに話しかけた。

「それにしても、大変な旅でしたわね。まさか、盗賊団に巻き込まれるなんて思ってもみませんでしたわ」

「はい、そうですね……」

「また巻き込んでしまいましたわね。申し訳なかったと思っておりますわ」

「いっ、いえ、そんな……っ! ミーアさまのせいじゃありません」

そう言った後、ティオーナは静かに首を振った。

「それに、もしも、ミーアさまがあの盗賊たちのことを予想されていて……、それでも私を連れていくことを必要だとお考えだったのなら、私は喜んでお供いたします」

そのまっすぐな瞳に、ミーア……思わず罪悪感を刺激される。

「そっ、そうですの……うん、そうでしたわね。あなたとはお友だちになったのでしたわ。でしたら、わたくしも、お話できることはして、協力していただくようにしますわね。おほほ」

などと言いつつ、ミーアは思考を切り替える。

そうなのだ、そもそもミーアは考え事をするために外に出てきたのだ。

――それにしても、実際、難しいですわね。エシャール王子とエメラルダさんの婚姻を止めるのは……。

ティアムーンとサンクランド、両国の関係は、現在のところ良くも悪くもない。

いや、ミーアとシオンが親しいこともあり、その関係はどちらかといえば「良好」のほうに傾くだろう。

けれど、それは完璧なものではない。だからこそ、ティアムーンの四大公爵家の令嬢であるエメラルダとエシャール王子との縁談には意義があった。

ルードヴィッヒが言ったとおり国を利する縁談なのだ。

これを覆すのはなかなかに難しい。

――あ、そういえば、ティアムーンとサンクランドといえば……。前の時間軸で、シオンとティオーナさんが結ばれていたとしたら、ティアムーンは安泰でしたのでしょうけれど……。お互いの気持ちが通じ合っていて、政略的にも有効な婚儀ならば、なんの問題もなかったのでしょうね……。

ふと、そこで、ミーアは思い至る。

「ふむ……当人同士の気持ち、ですわね」

今回の問題の本質に……。

――正直な話、エメラルダさんは面食いですし、シオンの弟君ならば気に入る可能性は高いと思うのですわよね……。

今、エメラルダは十八歳、対してエシャール王子は十歳だ。八歳差というのは、少し年が離れているが、それでも王侯貴族の結婚ではない話ではない。

――まして、エメラルダさんは面食いですし、エシャール王子の将来性を見込んでオーケーする可能性は高いと思うのですわよね。なにせ、面食いですし……。

となると、ミーアとしては、派閥抗争のためにエメラルダの縁談を潰すのも気が引けるわけで、残る問題はなんといってもシオン暗殺の件である。

それさえなんとかなれば、正直、そこまで反対しなくってもいいんじゃないかしら? とすら思ってしまうのだが……。

――シオンの暗殺を目論んだとすると、混沌の蛇が絡んでいるかもしれませんし、そうでなくても、どなたかを暗殺しようなどという方に、エメラルダさんを任せてしまうのもどうなのかしら……。

歩きながらだが、だいぶ問題が見えてきた。

「なるほど。要するに、わたくしは、相手がまともな方であれば、この縁談、別に問題ないと思っているわけですわね……」

「あら? もしかして、ミーアさん?」

ふいに声をかけられ、視線を上げる。と、そこには意外な人物が立っていた。

「らっ、ラフィーナさま? まぁ、どういたしましたの? こんなところに……。それに……」

次いで、ミーアは、ラフィーナの隣に立つ人物に、再び驚愕の声を上げる。

「アベルまで……。いったいお二人とも、ここで、なにをなさっているんですの?」