軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四十四話 至福! ミーア、ついにキノコを……採る!

さて……、アベルとちょっぴり……ほんのちょっぴーりだけイチャついた後にも、ミーアには幸福な時間が待ち受けていた。

「お、おお……」

改めて、先ほど見つけたキノコに歩み寄るミーア。

それに手を伸ばそうとして……ふと、不安を覚える。

どこかから邪魔が入らないかと……心配になったのだ。

レムノ王国の時には、猟師のムジクから横槍が入った。

無人島でも、なんやかやで、キースウッドが野草しか採らせてくれなかった。

帝国でも、料理長からキノコには手を出すな! と止められた。

それが、ようやく……ようやくっ!

ミーアは震える手をキノコに伸ばす。と、キノコに触れる寸前、その手が止まる。それから、ミーアはシュトリナの方を振り返った。

以前に出会った、赤くてヤバイキノコ…… 火蜥蜴茸(サラマンドレイク) のことを思い出したのだ。

――あのキノコは、確か、触れただけで大変なことになったはず……。

確認するようにシュトリナを見つめる。と、シュトリナはミーアの手元を覗き込み……、そっと頷いた。

瞬間、ぱぁっ! とミーアは笑みを浮かべた。

それから思い切って手を伸ばし、キノコに触れる。

――ああ……キノコとは、こんな手触りなんですのね……。ひんやり冷たくて、ちょっぴりザラザラしておりますわ。

感動に打ち震えつつも、ミーアはそのキノコを優しく摘み取った。

茶色くて、ごつごつ、岩のような見た目をしたキノコを……。

「おめでとうございます。ミーアさま。それは、 茶岩(ちゃいわ) 茸(たけ) ですね」

「茶岩茸……。食べられるんですの?」

「少しエグみがありますけど、食べられないことはないと思いますよ」

その言葉を聞いて、ミーアの中にジンワリと感動が沸き上がる。

――ああ、わたくし……ついに自らの手で食べられるキノコを採りましたわ!

苦節一年と少し……、ようやく禁じられたキノコ狩りに興じることができたミーアは、大層ご満悦だった!

「さっ、じゃんじゃん採りますわよ!」

張り切るミーアは、一心不乱にキノコを刈り取っていく。

黄色い葉っぱに埋もれるようにして顔を出していた青いキノコを手に取る、と……。

「あっ、それは茶岩茸に近い種類で、青岩茸ですね。とても固いですが、じっくり煮込めば多少軟らかくなりますから、食べられないことはないと思います。毒もありません」

すかさずに、シュトリナが説明してくれる。頼りになるキノコガイドである。

「ふむ、なるほど。これが青岩茸……。本で読んだ覚えがありますわ」

などとつぶやきつつ、次のキノコへと向かう。

シュトリナのアドバイスのもと、選んだコースは絶妙だった。いろいろな場所に生えるキノコを見て、ミーアのテンションは天井知らずに上がっていった。

「あっ、こんなところにも……!」

次にミーアが見つけたのは、ミーアが被る帽子ほどもある巨大なキノコだ。

「あ、すごい! ミーアさま。それは、 鬼岩(きがん) 茸(たけ) ですね。そんなに大きいのはなかなかないですよ。ちょっとだけ大味でエグみがありますけど、食べられなくはないです」

さらに、青い巨大なキノコに手を伸ばすミーア。すかさず、シュトリナがやってきて、

「それは 青(あお) 鬼岩(きがん) 茸です。鬼岩茸の仲間で、やや苦いですが、頑張れば食べられますね」

などと解説してくれる。大変、優秀なキノコガイドっぷりである。

「うふふ、大戦果ですわ」

そうして思う存分キノコをむしり取って、幸せそうな笑みを浮かべるミーアであったが…………ふと、そこで我に返る。

――あら……? 妙ですわね……。なんだか、わたくし、あまり活躍できていないような……?

思い返してみると、ただ好き勝手にキノコを採っていただけのような気がする……。帝国の叡智を披露しようと、せっかく気合を入れたというのに、まったくもっていいところを見せられていない。

その原因をミーアは、自分より先に解説を入れてしまうシュトリナに求めた。

――ふむ……、わたくしがキノコに多少詳しい 森の熟練者(モリガール) とはいえ……、本職とは言いがたいですし、知識において負けてしまうのも無理からぬことですわね……。

……まぁ、シュトリナも別に、本職というわけでもないのだが……。

ともあれ、ミーアは自らの森の熟練者としてのプライドを守るため、シュトリナに言った。

「あの、リーナさん? わたくしだけではなく、他の方のガイドもしてくださって構わないんですのよ?」

「はい、わかりました。ミーアさま」

ニコニコ、可憐な笑みを浮かべるシュトリナであったが、一向に離れてく様子はない。自分でキノコを採ろうともしない。

なぜか、ミーアにがっちりと張り付き、見張っているかのように、目を離さない。

もちろん帝国貴族の令嬢として、皇女のそばに付き従うという姿勢は、間違ってはいないのであろうが……、これではまるで、専門家を伴って森に狩りに来た大貴族の子どもである。お子さまである。

ミーアの" キノコの熟練者(キノガール) "としてのプライドは大いに傷ついた! ……いやまぁ、別にミーアはキノコの熟練者ではないのだが……。

さらに、一度冷めた頭で考えて、ミーアはあることに気が付いた。

――しかも、わたくしが採ったキノコって、エグかったり苦かったり大味だったり、なんだか、微妙なキノコばかりのような……?

よくよく考えると、シュトリナはずっと「食べられないことはない」と微妙な解説を入れていたような気がする!

――いえ、違いますわ。きっとこの辺りに生えているのが微妙なキノコばかりで……、場所が悪いだけですわ!

「リーナちゃん、このキノコ、どうでしょう?」

「あっ、ベルちゃん、すごい。それは 鮫卵茸(キャビフ) ね。とっても美味しいキノコよ。お鍋に入れると、もう、ほっぺがとろけちゃうんだから」

――場所が悪いんですわっ!

ミーアお祖母ちゃんのプライドは大いに傷ついた!

――こうなったら、やはり、行かなければならないようですわね……。森の奥地……、絶品キノコの群生地に……!