軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四十二話 キノコファースト!

学園を出て歩くことしばし。目的地である森に到着して早々に、一同は感嘆の息を吐いた。

眼前に広がったのは、美しい黄色に染まった森だったからだ。

木漏れ日の降り注ぐ黄色の道。鮮やかな明るさに包まれた森の黄色は、目を奪うような華やかさで、ミーアたちを迎えてくれた。

「不思議な森ですわね……」

思わずつぶやいたミーアに、すぐ後ろで、ラフィーナが微笑みを浮かべる。

「あら、ミーアさん、もしかして 紅葉(こうよう) を見るのがはじめてかしら?」

「こうよう? それは、この木の種類ですの?」

前の時間軸、森になどまるで興味がなかったミーアだが、摩訶不思議な木に、ついつい目を奪われそうになる。

「うふふ、紅葉というのは、秋になると木の葉の色が変わる現象のことよ。赤くなる種類もあるけれど、ここに植わった木は黄色く染まるの」

「まぁ、そんな不思議なものがあるんですのね……」

言いつつ、ミーアはちょっぴり妄想する。

――ふむ、この森であれば、学園からも近いですし……。今度、アベルと二人きりで来るというのも、悪くないですわね……。そこで、手を繋いで、ふむ……、悪くない!

などと、考えていたところで……。

「……黄色の森」

ふいに、ミーアの耳に声が聞こえる。

目を向けると、そこにいたのは、森を見つめるシュトリナだった。

いつでも華やかな笑みを浮かべている彼女だが、今は完全にその表情が消えていた。

「どうかなさいましたの? リーナさん」

不思議に思い、声をかけてみるミーアであったが……。

「あ、いえ、なんでもありません。ただ、色合い的に、我がイエロームーン公爵家とご縁がありそうな木だなって思ってしまいました」

まるで言い訳するように言ってから、シュトリナは普段通りの笑みを浮かべる。

「ふふふ、そうですわね。わたくしもイエロームーン公爵家の関係者でしたら、黄色く染まる森に興味を抱かずにはいられなかったと思いますわ」

「わかっていただけて、嬉しいです。それでは行きましょうか」

そう言って、シュトリナは歩き出した。

森は、全体が美しい黄色に彩られていた。頭上だけでなく、落葉によって、足元の地面にも黄色い絨毯が広がっている。

「ふわぁ! すごい! すごいですね、ここ!」

ミーアベルがぴょんぴょん跳ねながら、森の中に駆け入って行く。

「あっ、ベルちゃん、気をつけて。この落葉は、踏むと滑るから」

まるで、お姉さんのように、シュトリナがその後を追い、さらにその後からリンシャが、やれやれ、と肩をすくめつつ追いかけていく。

「これが、紅葉というんですね。私も初めて見ました」

クロエが黄色い葉っぱを物珍しげに拾えば、

「本当、黄色い葉っぱなんて珍しいな……。あ、セロにお土産に押し花にして送ってあげようかな」

などと、ティオーナも葉っぱを拾う。

「ああ、森、懐かしい、です。こんなところがセントノエルにもあったなんて……」

ティオーナの後ろでは、リオラが上機嫌に鼻歌を歌っていた。

男子たちも、物珍しそうに、森の中を眺めていた。

「美しい場所ですね、ミーアさま」

ミーアの傍らで、アンヌが気持ちよさそうに瞳を細める。実に、和やかな空気が、一行の中に流れていた……のだが。

「楽しい一日になるといいですね」

そう話しかけられたミーアは、

「ええ、そうですわね……」

などと相槌を打ちつつも、その声は、どこか上の空だった。

ミーアは他のメンバーとは違い、鋭い目で周囲を見回していた。その視線の向かう先は、頭上の木の葉でも、足元を飾る落葉でもない。木の根元に生えているキノコのみだ!

どこまでも、 キノコ至上主義(キノコファースト) なミーアである!

す、す、っと……。切れ味鋭い視線で、辺りを警戒していたミーアであったが……、不意に、何かを見つけたのか、無言で走り出した!

――あれは……間違いございませんわ、キノコっ!

獲物に向かう猛獣のごとく、キノコに駆け寄るキノコハンター・ミーア! どこまでもキノコファーストなミーアである!

今のミーアの眼には、もはや、キノコしか入らない! キノコ以外、何も目に入らないのだ!

だからっ! 当然、足元も目に入らなくって……つるんっ! と、踏み出した足が滑った。

「はぇ?」

びゅんっと上がった足。それを追うようにして、黄色い落ち葉が舞い上がる。そうして、気づいた時にはミーアの体は宙に浮いていた。

「……はぇ?」

視界がものすごい勢いで回り……、体がものすごい勢いで後ろに倒れて行って……、ミーアは思わず、瞳をギュッと閉じて……。

「っと、危ない。気をつけて」

直後、そんな優しげな声とともに、ミーアは何者かに抱き留められた。

「…………はぇ?」

間の抜けた声を出し、瞳を開けたミーア。その視界に映りこんだのは……、

「大丈夫かい? ミーア」

ミーアの顔を覗き込むアベルの顔だった。

だが……、今日のミーアは、キノコハンターモードである。キノコファーストなのである!

だから、アベルに抱き留められようが、どうということはない。

そう! 今のミーアの眼には、キノコ以外のものが入らな……。

――ああ、アベル……、実に凛々しい顔ですわ……。先ほどのエプロン姿とのギャップが、実に……イイですわね!

…………全然キノコファーストじゃなかった。

「ミーア、大丈夫か? どこかケガでも……」

「あ、ああ、いいええ、大丈夫ですわ。全然、問題ございませんわ」

ミーアは慌てて、アベルから離れた。

「と、とんだ醜態を……」

っと、頬を赤くするミーアに、アベルは小さく首を振り、

「別に、醜態ということはないが……、ふふ」

それから、悪戯っぽい笑みを浮かべて、ミーアの髪に手を伸ばした。

「え……? あ、え……?」

混乱するミーアの目の前で、アベルは、ミーアの髪についていた落葉を取って、

「ふふ、ミーアはどんな髪飾りをつけても似合うな」

そんなことを言ってから、行ってしまった。

後に残されたミーアは……。

「………………はぇ?」

キノコのことが頭から飛びかける、エセ キノコ至上主義者(キノコファースト) なミーアなのであった!