軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三十九話 サフィアスの悲鳴……

話はとんとん拍子に進んでいった。

キースウッドの手配により、シオンは一も二もなく快諾。アベルもまた楽しそうに、それを了承。かくて、ピクニックに持っていくサンドイッチは、生徒会男子チームによって作られることが決定した。

――う、うぐぐ……。せっかく、わたくしの 乙女力(おとめりょく) をアピールする機会でしたのに。つい、乗せられてしまいましたわ。過去のわたくしを殴ってやりたい。

などと後悔の念に囚われつつも、その朝、ミーアは調理場を訪れた。

そこを貸し切って、生徒会男子の部の面々が、サンドイッチ作りをする予定なのだ。

「あら、ミーアさん。早いわね」

入ってすぐに、ラフィーナが声をかけてきた。ちなみに、すでに制服に着替えている。

キノコ狩りに行く場所はシュトリナいわく、森の中とは言っても浅いところまでだという。ハイキングのようなものだから制服で行けばいい、とのことで、その助言に従って、今日はみんな、制服で行くことになっていた。

「ご機嫌よう、ラフィーナさま。ラフィーナさまこそ、お早いですわね。まだ、キースウッドさんたちも来てないのに……」

「うふふ、私だって、みんながどんな物を作るのか気になるもの。それに、前回、私は参加できなかったから。寂しいでしょう?」

「あ、もしかして、ラフィーナさま、サンドイッチ作り、楽しみにしておりましたの?」

「もちろんよ。せっかく、ミーアさんたちと楽しくお料理できると思ってたのに……」

ラフィーナは、しょんぼりと肩を落とす。

「あ、ああ、申し訳ありませんでした。ラフィーナさま。わたくしが、サフィアスさんの口車に乗ってしまったばっかりに……」

大慌てで、手をわたわたさせるミーア。それを見たラフィーナは、くすくす笑った。

「ふふ、冗談よ。ミーアさん。残念だったのは本当だけれど、別に怒ったりはしていないわよ?」

それを見て、ホッと安心するミーアであったが……。

「でも……、そう。サフィアスさんが……ね」

なぜだろう……、そうつぶやいた時のラフィーナの目は、あまり笑ってないように見えた。

なんだか、サフィアスをナニカに巻き込んでしまったような、そんな予感がしたが……。

深く考える前に、新たな人が入ってきたので、ミーアは思考を中断する。

そちらに目をやったミーアは、

「まぁ!」

思わず声を上げた。

そこにいたのは、四人の男子たちだった。

先頭に立っていたサフィアス……、はどうでもいいとして、主に他の三人にミーアは目を奪われた。

サフィアスの次にやってきたのはキースウッドだった。

いつも通りの黒い執事服の上から、白いエプロンを身に着けている。普段は、いかにも女性にモテそうな優男といった雰囲気の彼がエプロンをまとうことで、ちょっぴり家庭的に見えてしまうから不思議だ。

次にやってきたのはシオンだった。

水色を基調とした制服の上から、同じくエプロンを着ている。

普通、ブレザーの上にエプロンを羽織っていたら、少しは違和感があるものだろうが……、シオンは完璧に……一分の隙もなく、それを着こなしていた。

どんな格好でも凛々しさを失わないシオンに、ミーアは思わず呆れてしまう。

――まったく、こいつはどんな服を着てても、憎らしいぐらいによく似合いますわね。ベルあたりが見たら、歓声を上げそうですわ。あの子が寝坊助でよかったですわ。

自分のことを棚に上げるミーアである。

そして、最後の一人……。

「やぁ、ミーア、君も見学に来てたのかい?」

軽やかな笑みを浮かべるアベル。

シオンと同じく、制服の上からエプロンを身に着けた彼を見て……、ミーア、思わず固まる。

そんなミーアを見て、アベルは一転、少しだけ不安そうな顔をしてから……、

「えーと、どこか、変だろうか? こういう格好をするのは初めてだから、どこかおかしいところがあれば、教えてもらいたいんだが……」

わずかばかり、頬を赤らめた。

美少年の、いかにも恥ずかしげな顔を見たミーアは、ただ一言……。

「…………い……、いい」

それっきり、言葉を失う。

「ミーア?」

怪訝そうな顔をするアベルに、ミーアは慌てて首を振った。

「だ、大丈夫。よく似合ってますわ……。あっ、でも……」

っと、ミーアはアベルのエプロンのひもが、背中のところでほどけているのを見つける。それを直してあげようと、彼の後ろに回ろうとして……、なにを思ったのか、正面から近づき、腕を背中に回して、抱きしめるようにして、直してあげた。

「はい。これで、完璧ですわ」

それから、上目遣いにアベルを見つめ、ニッコリ可愛らしい笑みを浮かべる。

……実にあざとい! まったく小悪魔の名に恥じぬ所業である!

不意打ちには弱いミーアであるが、自分からのアプローチに関しては、さすがは大人のお姉さん、余裕があるのだ。

美少年の照れる姿をじっくり眺めていたいという、悪い大人のお姉さん丸出しなのである!

「あ、ありがとう、ミーア。頑張って美味しいものを作るよ」

そう言いながら、アベルははにかんだ。

それを見て、ミーアは思う。

――や、やっぱり、いい……。ああ、過去のわたくし、よくやりましたわ!

そんな感じで、いろいろ満喫してしまうミーアなのであった。

……ちなみに、どうでもいいと言ったサフィアスも、制服の上にエプロンを身につけている。

まぁ、ミーア的には、どうでもいいことではあるが……。

「あら、うふふ。サフィアスさんもエプロンお似合いですよ。あ、そう言えばミーアさんに聞いたんだけど、今日のお料理会を男の子でやろうって言いだしたの、サフィアスさんなんですってね。ふーん、まぁ、別に、大したことじゃないんだけど、そうなの。へー」

「ひ、ひいいいいっ!」

などという、サフィアスの悲鳴が聞こえたような気がしたが、まぁ、どうでもいいのであった。