軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

064 更なる備えを……!

「よし、これでひとまず、警備役は確保やな」

パンさんが腰に手を当て、”天界の護人”ことモーリーを見上げる。

白亜の門がうちの入口に鎮座している光景は、どうにもこのギルドルームには立派すぎて、少し場違いな感じもする。

でも、ギルドルームとしての箔がついたかも……?

「モーリーはんの実力はまだ分からんけど、サキはんの召喚獣やしまあ大丈夫やろ」

「どこかで力を試してみてもいいけど……今は、それより他の防備を固める方が先よね」

「他の防備……ですか?」

「ルルの言う通りや。直接乗り込んでくる輩への対策はできたわけやけど……ほんまに厄介なんは、魔法の方や」

魔法……そういえば私、この世界に来てから、いわゆる”普通の魔法”ってほとんど見たことないかも。

なんとなく、火の玉を飛ばしたり雷を落としたりするイメージはあるんだけど……。

「魔法でどんなことができるんですか?」

「今回みたいな話やと、盗聴や盗み見はもちろんやな。使えるやつは滅多におらんけど、転移で中に入り込もうとするやつもおるかも分からん。ゼブラスみたいな精神干渉もあるわな。……下手したら呪われるかもしれんで?」

「そ、そんなことまでできるんですか……?」

盗聴に盗み見、転移、精神干渉、呪い……。

確かに対策しとかないとヤバいやつばっかり。

やっぱり魔法って怖いんだ……ちゃんと学んどかないとマズいかも。

「……まあ最後のは冗談やけど、他はだいたいそんな感じや。別に悪いことにだけ使える魔法やないで? 周囲の音を拾って索敵や状況把握に使うたり、先の様子を探ってダンジョンの地形を把握したり──まあ使い方次第っちゅうことやな」

「なるほど……」

確かに、ダンジョンでめちゃくちゃ使えそうかも。

そんな魔法があれば、次の階層まで最短で進めるだけじゃなくて、魔物のいる場所を把握して効率よく倒すこともできそう。

……ちょっと興味が出てきた。

召喚士やめて魔導師になろうかな?──なんて。

「とにかく、そういう魔法がある以上、対策しとかなアカンわな。今までは弱小野良ギルドやったから、わざわざ盗聴なんてされへんと思っとったけど、もうそうはいかんしな。──ドルトステラのギルドルーム、覚えとるか? 壁一面に魔法回路が彫ってあって、鍛冶場の音を遮断しとったやろ」

「あ! ありました! 部屋に入った途端に、鍛冶の音が聞こえなくなったやつ!」

「そう、それや。あれはな、外の音を聞こえなくする以外にも、中の音を外に漏らさん役割もあるわけや」

「なるほど……。じゃあ、私たちもギルドルームの壁一面にあの術式を彫り込むんですか?」

「まあ、それも出来んことはないけど……死ぬほどめんどいで。ウチのギルドルーム、他のギルドが使っとったもんを、そのまま使っとるだけやからな」

パンさんの話では、壁に術式用の魔法回路を彫るだけじゃダメなんだとか。

そこへ常時魔力を流し込むための仕組みまで、一緒に作らなきゃいけないらしい。

つまり今のギルドルームには、そもそもその前提がない。

下手をすると壁の中身から作り直すことになって、大改修どころか、最悪ほとんど建て直しみたいな話になるらしかった。

そうなると、手間も時間も凄くかかっちゃうよね……。

「じゃあ、どうするの?」

「そこで登場するんが、魔法障壁や」

「いやでも、それって……ああ、そういうことですの!?」

「せや。せっかくあるんやから、使わん手はないやろ」

事情を察したらしいリンドールさんに、パンさんがニヤリと笑う。

「すみません、何を言っているのか全然……」

「ああ、サキはんにも分かるように言うとやな……魔法障壁っちゅうのは、魔法を遮断する結界みたいなもんや」

「超強力ですわ。ただ……桁違いの魔力を消費するのです」

「せやから、普通は常用なんてできへん。ギルドバトルとかで緊急時に短時間だけ展開する、とかな。でも魔法障壁やったら、壁一面に術式を仕込んだり、そこへ魔力を流す設備を作ったりせんでも、ギルドルームの外周ごと魔法障壁で包んでまえばええやろ?」

「えっ、でも……魔力をめちゃくちゃ消費するんですよね? それはどうするんですか?」

「サキはん、もう忘れたんか? ウチらには魔石の代わりどころか、下手したらそれ以上の代物があるやないか!」

「──あっ、魔力の結晶体!?」

私がそう言うと、パンさんがニヤリと笑った。

そうだった……。

ガラスラくんが生み出したあの塊は、神々の古代魔石とかいう国宝級の魔石に匹敵するかもしれない──なんて言われてたんだった。

結局、ゴーレムは魔石無しで動いたけど、確かにあれなら使えるかも。

「どれくらい持つかはやってみな分からんけど、あの塊の魔力量を確かめる意味でも、試してみる価値はあると思うわ」

「確かに、それなら壁中に術式を彫るよりラクそうね」

「せや。それにウチらには、 黄歯車団(イエロー・ギア) っちゅう建造魔法のエキスパート連中とも繋がりがあるからな!」

なるほど……。

物理的な侵入にはモーリー、魔法による干渉は魔法障壁で対策するってことだね。

「これでギルドルームの守りはだいぶ固まる。……せやけど、まだ足りへん。次は“表”の対策も打っといた方がええわ」

「表の対策?」

「せや。前にも言うたやろ? 人数が少ない、ランクも低い、そのくせギルドポイントだけは持っとる──そういうギルドは、どうしても“狙い目”に見えるんや。ウチら──サキはんの実力を知っとったら簡単には手を出せないやろけどな。要するになめられんように、表で実績積んで、手を出せん! と思わせるんが大事なんや」

「なるほど……」

「評議会も同じや。舐められとったら面倒ごとばっか押しつけられるし、発言力がないとこっちの都合も通らへん。実際、ザラはんには指名依頼がぎょーさん来とるやろ?」

「そうなんですよ~……。おかげで、マスターや師匠と一緒に居られる時間が減っちゃって……」

「ザラ……ごめん、そうだよね……」

「いや、マスターのお役に立ててるのは嬉しいんで全然大丈夫なんですけど~、よくわからない依頼ばっかりで、本当に役に立ててるのかな~って」

「かなーり役立っとるんやで? ザラはんのおかげで、グランベルジュはどんどんコネを作っとる。有力なギルドや権力者、商会とも繋がれる土台ができとるんや。こういうんは後々めっちゃ効いてくるで!」

なるほど、ギルドもただ強いだけじゃダメで、政治みたいな側面があるってことか……。

うん、やっぱり私にはギルドマスターは無理。

そういうの苦手だし……。

「財産の面でも、サキはんたちのおかげでレアドロップがぎょーさん、ほんまぎょーさん溜まってきとる。あと表の面で言うと──昇格してもらうんがええわな」

そう言うと、みんなの視線が一斉に私へ向いた。

「……えっ?」

「えっ?やないわ、サキはん。いつまで第三天位やねん、15万ギルドポイントも持っとるんやから、はよ第六くらいまで昇格してや!」

「ええええええ!?」

わ、私的には第三天位で十分──というか、高すぎるくらいなんだけど!?

だって私のステータス、相変わらずほぼ1なんだよ……!?