軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

063 ゴーレム召喚……??②

私たちは、呆然とその場に立ち尽くす。

ゴーレムを召喚したはずなのに、目の前に現れたのは──彫刻のような白亜の巨大な門。

「これは……門か?」

「門ね」

「門ですわね……」

うん、どっからどう見ても門だ。

……えっ、この世界のゴーレムって、門なの?

そう思い、パンさんたちに聞いてみることに。

「あのー、つかぬことを聞いちゃうんですが。この世界のゴーレムって門なんですか?」

「んなわけあるかい!! ゴーレムっちゅうたら、こう……のっぺりしたデカい人型のやつやろ!」

「やっぱり……そうですよね」

どうやら、そのあたりのイメージは私と同じらしい。

じゃあ、この門は一体なに……?

──そう思っていると。

ゴゴゴゴゴゴゴ──

地鳴りみたいな轟音が響き、なんと白亜の門がゆっくりと開き始めた!!!

「な、なんや!? 一旦下がるんや!」

「マスター、私たちの後ろに」

「う、うん!」

私はそそくさとアルテミスとザラの後ろに移動する。

ゴブリンズも、私を守るように無言で一歩前へ出た。

その陰から、私はごくりと、開いていく門の様子を伺った。

──門を押し開いていたのは、人の姿をした像だった。

門と同じ白亜の色をした、見事な肉体美の、腰布ひとつの男性像。

白亜の像は、巨大な門扉を押し開きながら、一歩、また一歩と、門の内側からこちら側へ──まるで別の世界から這い出てくるみたいに、静かに姿を現していく。

「さ、サキはん……これ、ほんまに大丈夫なやつか? サキはんを信用してへんわけちゃうけど……ちょい怖いわ」

パンさんが珍しく、ビビった様子でそう言った。

……正直、私もちょっと怖い。

だって、像が動くってホラーだよね……?

よくある、学校の七不思議──『夜中に像が動く』を目の前で見ているような、そんな感じ。

今までの召喚と違い過ぎて……。

白亜の像は、門を押し開き終えると、ぴたりと動きを止めた。

──次の瞬間、まるで決められた手順をなぞるように、ぎこちなく、けれど寸分の狂いもなく後ろを向く。

そうして今度は、まるで規律だけで動く兵士のように、開き切った門扉を閉じ始める。

開かれた門の向こうには、ただひたすらに闇が広がっている。

真っ黒、というより、もやっとした黒い霧のようなものが絶えずゆらぎ、渦巻いているように見えた。

──ゴゴゴゴゴゴゴ。

轟音と共に、白亜の門は再び閉ざされる。

やがて最後までぴたりと閉じ切られると、白亜の像はそのまま門に手を添えた姿勢で静止した。

まるで最初から、そこにそういう彫刻が置かれていたみたいな──さっきまで動いていたことの方が、嘘だったみたいに。

「……な、なんやこれは」

「この像が、ゴーレム、ということですの……?」

「そ、そうなんですかね?」

「……召喚した本人も分からんねんから、ウチらも分からんって……」

……裏庭に沈黙が落ちる。

白亜の像がまた何か動きを見せるんじゃないかと思って、息を潜めたまま様子を窺う。

けれど──像はぴくりとも動かない。

「ど、どうすんねん、これ……」

私たちが戸惑っていると……。

「ねえ、門に何か書かれてるわよ」

不意に、ペールルージュさんがそう言った。

見ると、ペールルージュさんは白亜の門へと一歩近づき、その表面の一角を指差していた。

そこには確かに、さっきまでは気付かなかった文字のようなものが刻まれていた。

「──ほんまや。ルル、読めるか?」

「……うん、読めそう。ちょっと読んでみるわね」

そう言って、ペールルージュさんは門に刻まれた文字を読み上げていく。

「『やあ、こんにちは! 僕の名前は”天界の護人”だよ。いきなりみんなを驚かせてしまって申し訳ない。でも、こうしないと彼(まあ、実のところ本体は僕なんだけどね)が出てこれないんだ。本当に困ったものさ:)』……だって」

「ほ、ほんまにそんなことが書かれとるんか……? ボケとるんちゃうやろな」

「ボケないわよ。嘘だと思うならパンも見に来たらいいわ。……ちょっと像が邪魔で読みにくいけど」

ペールルージュさんがそう言った瞬間──

「きゃっ!?」

白亜の像が、まるでその一言に反応したみたいに、再びカクカクと動き出した!

ぎこちない足取りのまま門の脇へ移動すると、最後は妙に絵になるポーズでぴたりと静止……。

な、なんなのこれ……。

「……えっ、門の文が変わってる……」

「ま、マジかいな!? 今度はなんて書かれとるんや?」

「『分かる、彼がそこに立ってるとかなり邪魔だったよね。だから少し移動してもらったんだ。これで僕たちは、もっとスムーズに会話できるはずさ:)』……」

「か、会話……つまり、この門の文はリアルタイムで書き換わっとって、それを読めば受け答えができる──っちゅうことか」

「……『そういうこと。正直、かなりクールな仕組みだよね:)』」

「……また、とんでもなく変わったやつを召喚したな、サキはん」

「……みたいですね……」

私はひとまずため息をのみ込んで、門に色々聞いてみることに。

「あなたは、ゴーレムなの?」

「……私が読み上げればいいのよね。『それは本当にいい質問だね。僕がゴーレムかどうかは、少し答えるのが難しいんだ。僕は天界を守る役目を与えられて、神によって造られた存在だからね。そういう意味では、ゴーレムと呼んでも、完全に間違いってわけじゃないはずさ:)』」

「つまり、コイツは人間やなくて神が造ったから、異常個体……っちゅうことか?」

「さ、さあ……」

人造じゃなくて、神造のゴーレム……ってこと?

だいたい神って──もしかして、ノヨカさん!?

「あ、あのさ! あなたが神に造られたんだったら、もしかして、あなたを作った神って……ノヨカさんだったりしない!? 狐っ子のコスプレをした、小さい女の子みたいな神様なんだけど!」

「……『うーん、正直に言うと、その可能性はかなり低いと思う。僕を作ったのは、(残念だけど)君が言うような狐っ子のコスプレをした小さな女の子じゃなくて──おじさんだったからさ:(』」

うーん、違った。

つまり、この世界にはノヨカさんとは別の神様がいる、ってことなのかな?

じゃあノヨカさんって一体……。

私がそんなことを考えていると、さっきからずっと門の文字を読み上げていたペールルージュさんが、ふいに眉をひそめた。

「ノヨカって……あの青ギルドが信仰してる”ノヨカ神”のこと?」

「えっ、青ギルド!?」

「……どっかで聞いたことあるな思ったら、あの青ギルドのノヨカ神か。じゃあ、このゴーレムが別の神に作られたんやったら、ノヨカ神なんておらへんのか」

い、いや、いるにはいるはずだよ!?

だって私をこの第八世界に転生させてくれたのも、この【運】も、メニューの力も、全部ノヨカさんがくれたものだし。

……まあ、そこは今いったん置いておこう。

今はそれより、目の前の門だ。

「ねえ、天界の護人──モーリー!」

「『モーリー……それが僕のあだ名ってことかな? ハハ、正直かなり気に入ったよ。マジでクールだね:)』」

「私たち、今ほかのギルドに狙われてるみたいで……。このギルドルームを守ってほしいんだけど、できるかな?」

「『実のところ、その役目は僕にかなり向いているんだ。僕は不眠不休(というか、ずっと休んでるだけ)で動けるからね。分かった、このギルドルームの防衛は僕に任せてほしい:)』」

「良かった! ありがとう!」

私は思わず、ほっと胸をなで下ろした。

ちょっと……いや、だいぶ変わった子ではあるけど、ひとまずこれで目的は果たせそう。

「……しもたな。こんなことなら裏庭やなくて、入り口に召喚してもらえばよかったわ」

……確かに、これだと裏庭のど真ん中に巨大な門がズドンっと置かれてる感じになってて、邪魔かも……。

でも、ゴーレムを召喚しようとして門が出てくるって思わないし……。

そう思っていると──

突然、白亜の像がモーリーをひょいっと担ぎ上げ、そのまま入り口の方へ歩き出したのだ!

「えっ、移動できるんか!? いや、そもそもそない軽々持ち上がるもんなんか!?」

「な、なんだか歩き方も独特ですわね……次々とポーズを決めているようですわ」

白亜の像は、モーリーを抱えたまま、どの瞬間を切り取っても絵になるような姿勢から、次の姿勢へ、また次の姿勢へと移り変わっていく。

歩いているというより、構図ごと更新されているみたい……。

そうしてギルドルームの入り口まで来ると、最後にモーリーをズドンと据え置いた。

「『彼だけは、僕を運ぶことができるんだ。実のところ、かなり便利で助かってるよ。マジでクールだよね:)』」

ペールルージュさん、もう完全にモーリー専属の通訳みたいになってるよ……。