軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第227話 仕掛けられた盤上

雲一つない青空が広がっている。

城のように大きな建物のテラスで、世界最強の騎士アレクサンダー・ストームハートは無表情のまま眼下を見下ろしていた。

視線の先には、若者たちが訓練に励む姿がある。

「アレクサンダー様。『洗礼の儀』に、例の冒険者が同行する情報が届きました」

彼に話しかけたのは、同じ蒼い鎧を装備した女性騎士だった。

「そうか」

「はい。 異界人(いかいびと) のA級冒険者が神楽のように秩序を乱す存在か、これで直接判断できるというものです。それからB級冒険者に昇格した『閃光の天使』についても、うまくハイデルンに誘導できたようです」

「神楽以外の懸念材料が二つ揃うか。神楽と合流する前に、場合によっては処理しておけばよいだろう」

「は、仰せの通りに。して、日本卍会についてはいかがいたしましょう?」

女性騎士は胸に手を充てながら頭を下げた。

「あれは 異界人(いかいびと) 同士の潰しあいに丁度良い存在だ。放っておけ」

「承知いたしました」

女性騎士は、さらに深く頭を下げると、テラスから去っていった。

「エサは撒いた。さて、何が釣れるか楽しみだ」

アレクサンダーは誰もいないテラスで、そう呟いた。

「八人目の到達者なんてどうでもいい! それより世界騎士団だ! やつらが来るならカズキの行方が分かるかもしれねえ! ヒロさん! 行こうぜ!!」

旧エルドー王国の王城内にある議会室で、一番身体の大きなコウダイ・イワミが声を荒げた。

議会室内には『神楽』のクランマスターであるヒロ・ヤマガミを含め、六人の幹部が揃っていた。

話題は千年王国ハイデルンで行われる『洗礼の儀』についてだ。

「コウダイさん、発言はもう少しお待ちください」

有能な女性秘書のような雰囲気のミオ・シライが、コウダイを制止するように言った。

「なんだミオ、てめえはカズキの捜索に反対なんかよ!」

「そうは言ってません。カズキさんは我ら『神楽』を支える四団長の一人。クラン創設からいらっしゃる大事な仲間です。何としても見つけ出さねばなりません」

「ならよお」

「そこまでにするんだ、コウダイ」

コウダイの言葉を止めたのは、底の知れない痩せた男ヤスノリ・クロカワだった。

エリートサラリーマンのような知的な雰囲気を持っていたが、他者を刺すような冷たい視線は、善人には程遠い印象を誰もが受ける。

「ヤ、ヤスさん……」

「ミオさんは捜索しないと言っているのではない。話を最後まで聞けと言っているのだ。さあミオさん、続きをどうぞ」

「え、ええ……そうですね」

ミオは仲間であるはずのヤスノリの奇妙な笑顔にゾっとしながら、話を続けた。

「その『洗礼の儀』についてですが、執り行うのは世界騎士ロードであるアレクサンダーで、他の世界騎士もほぼ全員ハイデルンに揃うようです。また、同時に世界騎士団主催の武闘大会も開催されることで、かなりの人々が千年王国ハイデルンへ集まってくると思われます。紅蓮騎士団と聖銀騎士団はさすがに来ないでしょうが、賢者クローイは例の彼女を連れて来る可能性は高いでしょう。なお、八人目の到達者は冒険者であること以外、何も公表されていません。以上が諜報部隊による報告内容になります」

「アレクサンダーも来やがるのか……どうすんだ、ヒロさん?」

発言のタイミングを計っていたコウダイが、先ほどよりも低いトーンで言った。

他の幹部も、発言を待つようにヒロに視線を集めた。

「……これほど捜索してもカズキの行方を、手がかり一つ掴めない。そろそろ世界騎士団と接触するほかあるまい。それにアレクサンダーが珍しく出てくるのだ。俺との差がどれほどのものか、直接試すいい機会だろう」

「ヒロさん!? それは危険です!!」

ミオが思わず声を上げた。

「大丈夫だ。こちらには奴らの知らないイベントアイテムがいくつもある。いざとなればどうとでもなるはずだ」

「しかし……」

「そう心配するな、ミオ。俺には『神楽』を立ち上げた責任がある。無謀なことはしないさ」

「ヒロさん……」

ミオは優しいヒロの笑顔に、顔を赤らめた。

「ヒロさん、じゃあ!」

「ああ、コウダイの言う通り『洗礼の儀』が行われる千年王国ハイデルンに、我々『神楽』も向かう。八人目の到達者の顔も拝んでおくのも悪くないだろう」

「よっしゃ、久しぶりの遠征だ! 腕が鳴るぜぇ!!」

コウダイは左掌に右拳を叩きつけた。

「コウダイさん、まだあなたがメンバーと決まったわけではありません」

「ちょっ……ちょっと待ってくれよ、ミオ」

ミオの発言にコウダイは怯んだ。

「心配するな、コウダイ。世界騎士団との衝突もありえる。『神楽』の全戦力で向かうぞ」

「だよな! そうこなくっちゃよ!!」

議会室にコウダイの大きな笑い声が響いた。