軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第211話 ジンの言葉

ジンたちに続いてミズトとウィルはテントを出ると、魔王軍と黒いローブの集団の戦闘が目に入ってきた。

地下三階の戦場が、ここまで移ってきたようだ。

どちらも日本卍会のことは無視し、お互いだけをターゲットに戦いを繰り広げている。

日本卍会のメンバーは、突然の戦場化に戸惑い、ただ傍観しているだけだった。

「こいつあマジか。ノワールの連中と戦ってんの……ホントに魔族じゃねえか!」

「どういうことでしょう? ノワールは魔族と敵対してんですかね?」

ケンスケがジンに尋ねた。

「さあな。んなことはどうでもいい。こんなチャンスは滅多にねえぞ! クソ面白えことになってきたぜ!!」

ジンはそう言って、戦場を横目に日本卍会のメンバーを招集した。

ケンスケを中心に何人かのメンバーが陣地内を駆け回ると、十分ほどで日本卍会のメンバーがジンの前に集まった。

ジンは、メンバーの前で台のようなものに乗り、大きな声をあげた。

「てめえら、見たか! 今まで一度も会ったことがねえ魔族が、こんなとこにいやがった! 魔族とやれるなんて、俺様たちはツイてるぜ!!」

日本卍会のメンバーは、ジンの言葉に呆然としているように見える。

「ま……まさかジンさんは魔族と戦うって言ってんのか……!?」

「む……無理だ……魔族なんて……」

「ノワールだって……結構やっかいだぜ……?」

そんなメンバーの態度を無視してジンは続けた。

「いいかあ、てめえら! これから日本卍会はこの戦場に参加する! いけ好かねえノワールの連中も、レアな魔族の連中も、全員ここでぶっ殺す!!」

皆、ジンの言葉に戸惑っている。

「どうした、てめえら! 返事が聞こえねえぞ!!」

「は、はい!」

何人かがジンに応えた。

「おう、てめら、俺様がやるっつってんの聞こえてんだろ? なあ?」

「はい!」

応える人数が増えた。

「安心しな。今回はクランスキル『血戦』を使う。てめえらは好きなだけ暴れてこい!」

「『血戦』って……クランポイント結構使うんじゃ……?」

「すげえ……『血戦』なんて『もふもふ横丁☆』戦以来じゃねえか……」

「『血戦』有りならいけるじゃん……!」

日本卍会の空気が変わった。

「てめえら、もう一度言う! 魔族もノワールも、全員ぶっ殺す!!」

「おおおおぉぉぉぉぉっ!!」

ジンの言葉に、日本卍会のメンバーが大きく応えた。

【クランスキル『血戦』とは、クランメンバー全員が一時的に性格が好戦的になり、クラン補正の能力上昇量がアップするスキルです】

(…………俺は聞いてないが?)

ミズトは唐突なエデンの解説に言い返した。

【申し訳ございません、知識としてお伝えしました】

(興味ねえし……)

ミズトとウィルは、そのままジンのテントの前にいた。

ミズトとしては、ケンスケとの戦いが流れたのは有難いことだったが、本来の目的が果たされていないので、どうするべきか様子を見ていたのだ。

「彼らはとても好戦的なようだな。まさか自分からあれに参戦しようとするとは……」

ウィルが呆れたように隣で言った。

「はい、 異界人(いかいびと) の中では珍しいタイプです」

ミズトは争い好きなジェイクを思い出していた。

「オラァァァァ、血戦起動だぁぁぁぁ!!」

ジンがそう声を上げると、日本卍会のメンバー全員が赤い膜のような光に包まれ、少し能力が上昇した。

皆、興奮しているのがミズトに伝わる。

「てめえら! 目の前に楽しい戦場があんのに、ピヨってる奴いるか? いねえよなぁ!!?」

ジンはメンバーを見回して少し様子を見てから、再び怒鳴った。

「全員殺すゾ!!!」

「おおおおぉぉぉぉぉっ!!」

ジンの言葉と同時に、日本卍会は戦場に突撃していった。

(……………………)

ミズトは見ていて恥ずかしくなってきた。

戦う前の陳腐な演出はさておき、クランスキル『血戦』の効果は大きいようだった。

先ほどまで尻込みしていた日本卍会のメンバーが、魔族を相手にしても引かずに戦っている。戦うことを少し喜んでいるようにさえ見えた。

「日本卍会というのは、頭の悪い連中ばかりのようだな」

その様子を見ていたウィルが漏らした。

「成熟する前にこちらの世界に来たので、価値観が幼稚のままなようですね」

ミズトもウィルの意見に同意した。

「ああ、とくにジンという男は、ただのガキ大将のようだ。力でしか物事を測ることが出来ず、自分の力を過信し、誇示することだけを考えている」

「はい、身体だけ大きい、中身が空っぽのただの子供です」

「だが……力を持っていることは確かなようだな。黒ローブの連中だけではなく、魔族でさえあの男と戦える者は少ないようだ」

ウィルの言葉どおり、目の前の戦場にいるジンの強さは圧倒的だった。

数百人が入り乱れる戦いの中で、笑いながら戦うジンの姿は突出していた。

「ガーハッハッハッ!! オラオラオラァ! もっと俺様を楽しませてみせろや!!」

ジンのクラス『インパクトマスター』は武闘家系統のようで、彼は何も武器を持たずに戦っている。

いかにも喧嘩好きなチンピラらしいクラスなのだが、その一撃は武器を持つ他の者より強力なようだった。

彼と戦うほぼ全ての者が、一撃で倒されていく。

しかも、ジンの攻撃は必ずと言っていいほどエデンが『マジックシールド』でダメージを減らしているのが見える。

ということは、エデンがいなければ相手を殺しているということなのだ。

魔族は百歩譲ったとしても、ノワールと呼ばれる黒いローブの連中は、種族はほとんどが人間。

ジンという男はこの世界の人間をこうもあっさりと殺そうとしているのだと思うと、ミズトにはとてもじゃないが受け入れがたい男だった。