軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第198話 タクマの店の再開

(マジか!? 頼む、教えてくれ!)

【一つは、冒険者ギルドに相談することです。A級冒険者であるミズトさんは、冒険者ギルドに対して絶大な発言権がございます。冒険者ギルド所有の建物でお店を再開させることが可能です】

(冒険者ギルドに借りを作るのか……。他には?)

【もう一つは、ミズトさんが住む屋敷の一階を、料理屋に改装することです。あの屋敷はシュンタさん達がギルドクエストを利用して、特例で手に入れた建物です。お店として開業することも認められており、もしシュンタさん達がお戻りになられても、事情をお伝えすれば納得されます】

(なるほど……たしかに店を始められるぐらいの広さがあるな……。どうせ毎日通ってんだし、近い方が……。改装を頼んだら、どのぐらいの時間が掛かるんだ?)

【ゴーレムに指示をすれば半日も必要ありません】

(…………)

「タクマさん、お店について一つ提案がございます」

ミズトはエイダをなだめているタクマに言った。

「提案……?」

「私がシュンタ・ナカガワさんからお預かりしている、クラン集会所として使用していた屋敷を改装するのはいかがでしょうか? 正式な所有者が 異界人(いかいびと) である私のため、タクマさんがお店を開くことに何の問題もございません」

「ミズトが所有する屋敷……? いや……でも……」

唐突な提案に、タクマは困惑している。

「敷地はここより一回り広くなります。誰も使ってはいませんでしたが、しっかりした厨房もありますので、料理屋として営業可能です。エイダさんも、少し遠くなりますが、あそこなら通えるのではないかと思います」

「それは名案だわ! ミズト君、タクマさんの次に好き!!」

急に元気を取り戻したエイダが、ミズトに抱きついてきた。

今のはタクマへの告白になっているけど大丈夫なんだろうか。

とミズトは少し心配したが、タクマの反応は店のことで頭が一杯だと分かる。

「ミズトは、それでいいのかい……?」

「もちろんです。所有者が私と言っても、あくまでお預かりしているだけ。より有効に活用した方がナカガワさんにも喜んでいただけると思います」

「しかし……そこまで甘えるわけには……」

「何言ってるんだ! せっかくの提案に乗せてもらえ!」

突然、そう言って一人の男が店の中に入ってきた。

「ウ、ウィルさん……」

「よ!」

ウィルは手を上げて、ミズトとタクマに笑顔を向けた。

「色々お任せしてすみません」

ミズトはウィルに頭を下げた。

「好きでやってるんだ、気にするな! それよりタクマ、いい提案じゃないか! さすがミズトだな!」

ウィルはミズトの肩に手を置いて言った。

(まさかこいつ……ジェイク系統じゃないよな……)

「ウィルさんがミズトを……!?」

「タクマ、お前の言ったとおりだったぞ! 俺は彼にガツンと目を覚まさせられた! きっとヒロたちも、ミズトならやってくれるだろう!」

ウィルがミズトの肩を軽く二回叩いた。

(だからヒトの肩を勝手に触るんじゃねえよ。エデンさんは何で『マジックシールド』を張らないんだ?)

【スキンシップに『マジックシールド』は不要です】

(…………)

「ミズト……やっぱり嫌なのか……?」

タクマが、不満そうなミズトの表情を見て言った。

「え? あ、いえ……お店のお話ですよね? もちろん大歓迎です」

「だとさ! タクマ、お前は協力することが大事だって、ずっと言ってきたじゃないか! ミズトの協力の申し出を断るのか?」

「…………ウィルさんの言う通りですね。ミズト、すまない! 屋敷を使わせてくれ!」

タクマはミズトに頭を下げた。

「はい、よろこんで」

ミズトから右手を差し出すと、タクマがミズトの手を握った。

タクマの店は、翌日から再開することになった。

エデンが言うように改装はゴーレムがあっという間に終わらせただけではなく、椅子やテーブル、どこから準備したのか皿や調理器具まで完璧に揃えていた。

「ミズト、君には世話になりっぱなしになっちゃったな。こんなに早く店を始められるなんて思ってもみなかった。家賃はしっかり払うから、安心してくれ」

開店の準備をしながら、タクマが様子を見に来たミズトに言った。

「家賃なんていただけません。ここはナカガワさんにお預かりしているだけですので、戻って来られた時にでも交渉していただければ」

「そうもいかないだろう……。――――じゃあ、こういうのはどうだ? ミズト専用の予約席を設ける。ミズトはどんな混んでいても、待たずにいつでもその席を利用できるってことで。前よりだいぶ座席が増えたことだし、店の営業にも問題ない」

(お気に入りの店に俺専用の予約席…………? 悪くない!)

「まあ、それぐらいでしたら……」

「なら決まりだ。どうせ毎日来るんだろうから、美味いもん毎日食べさせてやるからな!」

「はい、ありがとうございます」

(ひゃっほーーー!!!)

ミズトのニヤニヤが止まらなかった。

それから少しして、開店直前に訪問者が現れた。

「よ、タクマ、ミズト! 早速来たぜ!」

昨日の今日で、採掘場が休みのウィルが店に入ってきた。

「ウィルさん、いらっしゃ……アレックスさん!?」

「よお、久しぶり。本当にタクマが帝都で店をやっていたんだな」

ウィルが、アレックス家の三人を連れてきた。

「アレックスさん、お久しぶりです。リンジーさんも元気そうで何よりです」

タクマはアレックスたちに歩み寄り、穏やかな笑顔で挨拶をした。

「タクマ君、立派になったわね。あの頃はまだまだ若者だったけど、今はすっかり大人って感じだわ」

「ママぁ。この人だあれぇ?」

アレックスの娘リリーが、母リンジーの裾を掴んだまま、タクマを見上げた。

「この人はね、パパとウィルおじさんのお友達!」

「パパとウィルおじちゃんのお友達ぃ? あたしリリー! よろしくね!」

「そっか、あの赤ちゃんか……。リリーちゃん、俺はタクマ! こちらこそよろしく!」

タクマはしゃがんでリリーの頭を撫でた。

(元エルドー王国騎士?)

そんな様子を見ていたミズトは、アレックスのステータスを見て少し気になった。

アレックスのクラスが、ウィルと同じ 元(・) エルドー王国騎士なのだ。

(なあ、エデンさん。ウィルもそうだが、会社と違って王国騎士なんて簡単には辞められないよな? 二人揃ってってことは、まさか逃亡者とかか?)

【とても面白い発想です。さすがミズトさんと言わせていただきます。しかし、ウィルさんとアレックスさんは王国騎士を辞めたのではなく、エルドー王国が滅んだため、エルドー王国騎士団そのものが解散しております】

(王国が滅んだ……? なるほど……そりゃあ国が出来たり滅んだりすることもあるんだろうけど……。アレックスって奴の脚は、もしかして王国が滅んだことと関係あったり?)

【とても素晴らしい洞察力です、さすがミズトさん。アレックスさんはエルドー王国が滅ぶ発端となった五年前の事件で、片脚を失っております】

(まあ……国が滅ぶような出来事なら、戦争みたいなことがあったんだろうな……。あ、エデンさん、俺の評価はもういいし、この情報ももういい!)

ミズトは、エデンの言いように嫌な予感がして、話を切った。

【承知いたしました。なお、エルドー王国を滅ぼしたのは、ヒロ・ヤマガミさんが率いるクラン『神楽』です】

(神楽!?)

何が承知いたしましただ、という思いより、『神楽』が関係している事の驚きが上回った自分の反応に、ミズトは腹が立った。

【はい。五年前、エルドー王国内で『神楽』が大きな事件を起こし、その混乱の中で『神楽』メンバーの一人がアレックスさんの脚を斬り落としました。そして、エルドー王国と『神楽』の戦いは二年続き、三年前にエルドー王国が滅んだのです】

(日本人が異世界に来て、一つの国を滅ぼしたってことか……)

『神楽』はこの世界そのものと敵対しているんだ。

ミズトはシュンタの言った言葉の重みが、一段と増した気がした。