軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第173話 世界を救う勇者②

しかし、リアンの思い通りにはいかないことを、ミズトには分かっていた。

力は堕レイヴンをリアンが上回っている。だが、このままではリアンが勝利することはない。

化け物の肉体再生は、ダメージを負えば負うほど早くなり、いつしかリアンの攻撃と堕レイヴンの再生が平衡状態になっているのだ。

リアンが勝利するには、さらに圧倒的な力が必要だった。

「く、くそ……! まだ足りねえのか! 師匠はいったいどれだけ遠いんだよ!!」

リアンは、このままでは結果が見えていることを理解し、焦りの色を見せた。

それから、何の進展もない戦いを数分続けると、何かに気づいたように手を止め、ミズトの元に戻ってきた。

「師匠!」

「ど、どうされました……?」

ミズトは訳もなく叱られたような気分になった。

「どうしたもこうしたもねえよ! なんで師匠は応援しねえんだ!」

(ん?)

【勇者のスキル『真の勇者』は、誰から応援を受けているか感じ取ることができます】

(そうなのか……)

「私の応援などリアンさんには不要かと思いまして」

「何言ってんだ! 誰に応援されるかってのも、超重要なんだぜ! 師匠の応援がなきゃ、せっかくの能力も半減するじゃねえか!!」

リアンはミズトに向かってまっすぐ人差し指を向けた。

(それは言い過ぎだろ……)

ミズトはそう思ったが、応援すれば納得するだろうと、少しだけ心を込めて声に出した。

「失礼しました。リアンさん、頑張ってください」

「!?」

するとリアンを覆う金色の光は大きく膨らみ、それに併せて大幅に能力が上昇した。

「す……すげえ……。こんなにすげぇのか……。やっぱ師匠はとんでもねえな……!」

リアンは、自分の能力を噛みしめるように、両手を見ながら呟いた。

(勇者のスキルか……)

ミズトも同じようにリアンの能力に驚いていた。

ただ応援されただけで、能力が上昇する。

しかもその上昇量は、ミズトが堕クラリス戦で見せた『界』よりも大きいのだ。

まさに世界を救う勇者にだけ許された、特別なスキルだった。

「師匠、これならいけるぜ!!」

リアンはそう言って、再び堕レイヴンに向かって飛び出していった。

すでに大部分の再生を終えた堕レイヴンは、リアンに対して触手で迎撃するが、今度のリアンには無意味にすら見えた。

瞬く間にリアンは堕レイヴンの本体に辿り着き、人体と思われる部分以外を消滅させた。

「今だ、オーレリア!」

リアンの合図で、聖女オーレリアは膝をついて祈りの体勢をとり、浄化スキルを使用した。

(なあ、エデンさん。ここで聖水を掛けた方がいいんだっけ?)

【いいえ、レベルの上がったオーレリアさんなら、聖水を使わず解呪可能です】

エデンの言葉を証明するように、オーレリアが使用した浄化スキルにより、堕レイヴンの中にあるどす黒い力が消えていくのを、ミズトには感じ取れた。

そして辺り一帯を包んだ白い光が収まると、元に戻った黒騎士レイヴンの姿が現れた。

「よし、すぐに捕らえよ!」

その機を逃さないよう、紅蓮騎士シェリルがすぐさま周囲に指示をすると、帝国軍たちが気を失っているレイヴンにローブを着させて両手を後ろで縛り上げた。

「へえ、手際がいいじゃねえか、な、オーレリア」

その様子を見たリアンは、剣を納めながらオーレリアに言った。

「ええ、これで私たちの役目は果たせました」

「だな! 師匠、譲ってもらって悪かったな。これも勇者の役目ってやつだ!」

「いえ、別に構いません。どうせなら勇者に戦っていただいた方が助かります。そういえばギルバートさんはご一緒ではないのですか?」

ミズトは、ジェイクに聞いた話を思いだした。

「ギルバート? ああ、あいつはお留守番さ。武闘大会で負けてから落ち込んでて、役に立ちそうにないからな」

(落ち込んでるのかい)

「 異界人(いかいびと) の女剣士ってやつですね。ギルバートさんでも勝てないほど強かったのですか?」

「ん~、いや、さすがにまともにやればギルバートの方が強いと思うぜ? ただ、あいつが油断しすぎたってのもあるし、ユニークスキルで意表を突かれたってのもあるかな。ま、たしかに 異界人(いかいびと) にしては強かったとは思うけど」

リアンはあまり関心がなさそうに答えた。

「なるほど、そういうことでしたか」

「師匠が気にするようなほどじゃねえよ――――。じゃ、俺らはそろそろ行くぜ。次があるんでな」

「引き止めて申し訳ありませんでした。お二人ともお元気で」

「ああ、またどこかでな!」

「ミズトさんもどうかお元気で。ごきげんよう」

勇者リアンと聖女オーレリアは、そうミズトに笑顔を向けると、首都セルタゴとは違う方向へ去っていった。

「そういえば、まだ怪我人がいたようでしたけど、治療しなくて良かったのでしょうか」

ミズトと別れて少し歩くと、聖女オーレリアが思い出したように言った。

「あそこは師匠がいる戦場だからな。これ以上、手出しなんてしねえで任せればいいんじゃね?」

「…………そうですね、あの方がいらっしゃいます。私たちは私たちの役目を全うしましょう」

リアンとオーレリアは、一瞬だけミズトたちがいる方向に振り返ると、またすぐに歩き出した。