軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

五百四十三話

「クラウス。しっかりしろ。こんなところで死ぬなんて許さないぞ」

アンジェリカがたどり着いた時、クラウスと呼ばれた男性騎士は心肺が止まっていた。

周囲の騎士が必死に呼びかけているがもはやどうしようもない状況だった。

己の不甲斐なさに震えているアンジェリカの脇を年老いた老人が通る。

その老人には見覚えがある。

クロードの師匠でありアンジェリカも何度か治療の手ほどきを受けたことがある。

「ネツァル様。彼はもう・・・」

「いいや。まだじゃ」

そう言ってネツァル様は何かを振りかける。

そして心臓に手を当て回復魔法をかけつつ心臓マッサージを開始した。

死者を蘇らせる方法など存在しない。

しかし、ネツァル様は諦めず体を動かし続けている。

どれだけの時間が経っただろうか。

信じがたいことにクラウスと呼ばれた騎士はかすかに心臓が動き出していた。

そこでネツァル様は慎重に何かを少しずつ飲みこませていく。

自分は奇跡をみているのだろうか。

そうとしか表現できない現象が起きていた。

「ふぅ。これで何とかなるはずじゃ」

ネツァル様はそう言って床に座り込む。

「ネツァル様。先ほどの液体は一体・・・」

「あぁ。クロードの奴から預かっていた世界樹の雫じゃ。奴も家族を救うために使ったのなら文句をいわんじゃろう」

世界樹の雫。

知識としては知っていた。

どんな状況でも治癒できる伝説のアイテム。

入手方法など誰も知らない幻の秘薬。

「はは・・・。クロードってば何でもありなのね」

クロードはいつでも自分の想像を超えていく。

今、この場にいなくてもそれは健在らしい。

「って。この方、クロードの身内なのかしら」

「奴の兄じゃて。知らんかったのか」

どうりで顔がクロードに似ているはずである。

「ファールハイト様には何度かお会いしたことがありますけど他の方は知りませんでした」

「あぁ。学園を卒業してすぐに騎士団に入ったからのう。それも仕方ないかもしれんの」

クロードの家族は皆、優秀らしい。

学園を卒業してすぐ騎士団に加入するなんて名誉なことだ。

「すまんが後を頼めるかの。儂はしなければならんことがあるかの」

そういってネツァル様は去っていった。

アンジェリカは近くに椅子を持ってきて座り容態を見守る。

ネツァル様が繋いだ命を決して絶やさない。

そう決意して座っていたがその後は非常に安定していた。

何度か寝落ちを繰り返し、容態を確認して安堵する。

朝を迎え、他の患者を診る為に離れるまでそれを繰り返していた。