作品タイトル不明
第27話
午前の営業は終わり、午後となる。
午前は、それなりにお客さんが来てくれた。
イヴァスたちの後からちょこちょこと人がやってきて、色々と購入していってくれたのだ。
そして午後は……さらに人出が増えていた。
知り合いの冒険者はもちろん、初めて訪れてくれる冒険者もたくさんいたのだ。
そのせいで大忙しだ。午後は、鍛冶でもしていようかと思っていた俺の予想を打ち砕いたのだ。
アリシアだけでは人手が足りず、レフィも手を貸してくれている。
問題は……アリシアだ。
彼女の美しい容姿に釣られる人はたくさんいる。
そして、アリシアの存在について知らない人もわりといるため、カプリたちが店の手伝いをしながら目を光らせている。
もちろん、俺もだ。
アリシアに何かをしようとする不届きものがいれば、すぐにでも駆けつける。
そんな気持ちで見張っていたが、とりあえず大きな被害はなかった。
アリシアに手伝ってもらえるのはありがたいのだが、やはり彼女を店に出すのには不安もある。
難しいところだな。
一番忙しかったのはお昼明けで、今は落ち着いている。
午後から冒険者活動を行う人もいるので、きっとそういう人たちが店に足を運んできた結果、お客さんが増えたんだろうな。
ひとまず、奥の部屋にしまってあった剣を出しておく。
わりと売れてしまったので、また追加で作らないといけないな。
……今日だけでも30本くらいは売れたんじゃないだろうか?
一日に作れるかずはおおよそ15本程度なので……このままのペースで売れてしまうとどんどん減ってしまうな。
まあ、休日は店を開く予定はないので、そこで補充しないとだ。
大変だけど、売れるということはそれだけ人気ということでもある。
頑張りたい、という気持ちが沸き上がってくる。
「結構お客さん来てくれたね」
こちらに気づいたアリシアが額に浮かんだ汗を拭いながら微笑む。
客が増えたのは、市で知り合った冒険者がさらにその知り合いを連れてきてくれたのも大きいな。
初日からここまで繁盛してくれるとは思っていなかったので、嬉しい限りだ。
「売り上げはどのくらいだったっけ?」
「たぶん、80万ゴールドくらいはある……かな?」
「そっか」
かなり売れたよな。
もちろん、いつも売れるわけではないだろう。
武器を購入する場合、多くても月に一度程度だろう。
ただ、俺にはエンチャントの仕事もある。今日購入していった人が、今後エンチャントを頼みにくることもあるだろう。
お客もいないのでアリシアとのんびりを話していると、お客さんが来た。
「フェイクさん、お久しぶりでーす!」
入ってきたのはアルメだ。
明るい調子で声を上げる彼女の後ろには、リグもいた。
こちらに気づいた彼が軽く会釈をしてくれたので、俺も同じように返す。
「久しぶり。今日は何か仕入れにきたのか?」
答えるとアルメがにこっと笑う。
「はい! それはひとまず置いておいて……見ていましたよ! かなり人の出入りがあったみたいですね!」
「え、知っているのか?」
「午前にも一度来たんですけど、忙しそうだったので。また後で来ようとお父さんとは話していたんですよー」
「余計なことは言わなくていいですよ」
リグがたしなめる。
忙しい時間を外してきてくれた、ということか。
視線をリグに向け、問いかける。
「何か話でもあったのか?」
「そうですね。よく市であなたの商品を買っていたと思いますが、それを今後も継続できないかと思いまして……それって可能ですかね?」
思ってもいなかった相談だ。
「別にいいけど……いつも思っていたけど、あれで儲けはあるのか?」
「ええ、もちろんありますよ。仕入れ値よりも高く売っていますから当然です」
「そうなんだな」
「オレは別の街にお店を持っているんですが、そこにフェイクさんの商品を置いているんです。これが人気でして。置くとだいたいすぐに売れてしまうんですよ」
「……そうなのか」
少し不安だった。
俺は適正価格で販売しているつもりだが、リグは俺から購入して利益が出ているのか、と。
「そういうわけでして、お願いできますか?」
「分かった。その代わり、商品を売る時に俺の名前を出すこともできるか?」
リグの店で商品を並べる時に、『フェイクの武器』とか言ってもらえれば俺のお店にお客さんが来る可能性も増える。
俺のお願いに、リグは満面の笑みを浮かべた。
「ええ、いいですよ。その代わり、多少仕入れ値を安くしていただくことは可能ですか?」
なるほど、そう来たか。
宣伝費として見れば安いものだ。
「分かった。製品はどのくらいのランクの剣を用意すればいいんだ?」
「オレの店は結構高ランクの冒険者も来ます。だから、ディーレア、シーレア魔鉄辺りの製品をお願いすることはできますか?」
「分かった。金額についてはまた出来上がってからでいいか? 一つ一つ、品ごとに変わってくるしな」
「ええ、そうですね。その辺りに関してはアルメに引き継がせます。この街での仕入れはすべてアルメにお願いしようと思っていますので」
リグがちらとアルメを見る。
アルメはサムズアップしながら、笑顔で言う。
「そういうわけです! よろしくお願いしますね、フェイクさん!」
「ああ。よろしく」
その話がしたくてここに来てくれたのか。
それも、わざわざ忙しくないだろう時間を選んでだ。