軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第21話

廊下に出たところで、アリシアがじっとこちらを見てきていた。

視線が僅かに外される。その際、アリシアの頬が僅かに赤く染まっていることに気付いた。

よく見れば照れた様子であり、俺は思わず問いかけた。

「アリシア、どうしたんだ?」

俺の指摘に、アリシアは恥ずかしそうに唇を少しだけ尖らせる。

ちょっとだけ不満でもあるかのような仕草だ。

「……いきなり、あんなこと言うからちょっとびっくりしちゃった」

「……それは、悪かったよ」

アリシアにも相談くらいはしておくべきだったかもしれない。

ただ、それだとアリシアの手を借りることになるかもしれないし……ちょっと違う気もする。

あの場で、俺自身の気持ちでゴーラル様に伝えたかった。

アリシアはしかし怒っているということはないのか、すぐに柔らかな微笑とともに首を横に振った。

「でも……凄い嬉しかった」

「……そ、そうか」

「うん。……一緒に、幸せになろうね」

「……ああ」

心底嬉しそうな声音のアリシアに、俺は今更ながらに照れてきてしまう。

確かに、いきなりあんなやり取りをすればこんな気持ちにもなるか。

笑顔をかわしあったところで、俺はアリシアとともに歩いていく。

「そういえば、フェイク。儀礼剣の話を引き受けていたけど、作ったことはあるの?」

ゴーラル様からの依頼であった儀礼剣。見栄え重視のその剣について、俺は今までに見たことのある剣のいくつかを脳内に浮かべながら首を横に振った。

作ったことがある、と言えればアリシアを安心させられたかもしれないが、彼女に嘘を吐くわけにはいかない。

「ないんだよな。だから、ちょっと不安はあるけど……作ってみたいんだ」

「そうなんだ。なら、見本とか見に行ってみる?」

「そうだな。街とかに行けば見られるかな?」

「それもいいけど……この屋敷に保管されているから、それを見に行くほうが手っ取り早いと思う」

アリシアの思いがけない一言に、俺は思わず聞き返す。

「……もしかして、今までの結婚式に使われた儀礼剣が残っているのか?」

「うん。地下倉庫にしまわれている。一応週に一度は掃除もされているくらいには手入れはされている」

「そっか。それなら見に行ってもいいか?」

「分かった。でも、今日は旅をしてきたあとだし、また明日にしない? 時間もあるし」

「そう、だな」

長旅の後だから、できる限り休みは多めにとったほうがいいだろう。

アリシアの言葉に頷いた後、俺はアリシアと別れ部屋へと戻った。

儀礼剣か。

結婚式の場で使うのだから、立派なものにしなければならないだろう。

緊張はある。だけど……それ以上に感じていたのは高揚感だ。

立派な剣を作り、皆に見せる。

最高の物を作らないとな。

次の日。

昨日話していた通り、俺はアリシアとともに屋敷の地下へと向かっていた。

これまで、何度か散歩というか散策がてらに屋敷内をみて回った俺だが、屋敷のどこから地下に続いているのかは知らなかった。

ただまあ、この屋敷は広い。

俺の知らない部屋の一つや二つあってもおかしくはない。

俺を案内するためスタスタと前を歩いているアリシアの背中に声をかける。

「アリシア、ちょっといいか?」

「どうしたの?」

「俺地下に行ったことなかったんだけど、どこから行くんだ?」

呼びかけると、アリシアは足を止めて振り返る。

「いくつかの物置部屋から地下に行くことができるんだけど、まだ案内してなかったね」

物置部屋……。確か屋敷の地図を渡された時にそんな部屋がいくつかあったような……。

脳内で思い出しながら、問いかける。

「いくつかの入り口があるんだな」

「正確には、別の地下に繋がってるから入り口は一つだけ、なんだけどね」

「別の地下?」

どういうことだろうか?

アリシアの言葉に俺は首を傾げる。

建物の構造上、一階や二階のように地下に降りれば地下のすべての部屋にいけるんじゃないだろうか?

俺が首を傾げたからか、アリシアが苦笑を浮かべた。

「えっと、屋敷に万が一のことがあったときのために、地下通路から避難できるようにいくつかあるんだ」

「……なるほどな」

僅かに状況が想像できた。

地下の全てがつながっていると、何かの危機から逃れる際に追われる可能性がより高まるということだろうか。

繋がっていたらいい部分もあるのかもしれないが、バーナスト家ではこちらを選んだのだろう。

「それに、いくつかの地下には貴重品も管理してあるから、あんまり知っている人は多くないかな」

貴重品、か。

アリシアの言う通り、下手にたくさんの人に教えてしまうと確かに問題が出てきてしまうだろう。

例えば、使用人が貴重品を盗み出すなんてことだってあるかもしれない。

もちろん、バーナスト家の使用人たちはかなり厳正に選ばれているのだろうが、魔が差さないとも限らないよな。

俺がそんなことを考えていると、アリシアが慌てた様子で首を横に振った。

「フェイクを信頼してないから教えてなかったわけじゃなくて、必要もないのかなって思って教えてなかっただけだから……」

アリシアの突然の言葉に、俺はその意味を理解した。