軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第9話

「……貴族的には、ってことは平民からしたら結構派手に感じるものですかね?」

「たぶん、そうじゃないかしら? あたしも平民の友人がいて結婚式を見たことあるけど、あれは本当に親しい友人を呼ぶくらいでしょ? だからその規模を想像していると腰を抜かすと思うわ」

「分かりました。それにしても……平民の方とも交流があるなんてシーフィさん、交流関係が広いんですね」

「まあ、たまたまその人と親しかっただけよ。とにかく、フェイクとアリシアの結婚式なら、ゴーラル様の親しい貴族とその跡継ぎが顔を出すくらいだと思うわ。結婚式して、夜に宴でも開いて食事を楽しんでってくらいで終わると思うわ」

「宴ですか……」

そこでももちろん貴族としての対応を求められるはずだ。

……大変そうだ。

表情に出ていたからか、シーフィさんが気合いを入れるように肩を叩いてきた。

「そんな顔するんじゃないわよ。宴のほうは無礼講……とまではいかないけど、みんな飲んで食べながら話したいだけなんだから。そういえば、フェイクってこの国の出身じゃないのよね?」

「はい。隣国の出身ですね」

「それなら家族とか友達とか呼びたい人がいるなら、早めに相談しておいたほうがいいわよ。旅費とかはゴーラル様に頼めば融通してくれると思うわよ?」

融通かぁ……。

そう言われて脳内に浮かんだ故郷について考える。

確かに、友人や知り合いはいるのだが……他国の結婚式に呼ぶほど親しい相手はいないんだよなぁ。

すでに俺を育ててくれた義父はなくなってしまっているし。

「……そう、ですね。ただ、家族はもういないですし……向こうに親しい人はいないんですよね」

宮廷に入る前の友人はいたが、それも宮廷に入ってからはあまり関わることはなかった。

むしろ宮廷には呼びたい人は一人もいない。

「そうなのね。まあ、必要があればって話だから、頭の片隅にでも置いておくといいわよ。それと、結婚式にはあたしも友人として出席するからね」

ふふんと笑みをこぼすシーフィさん。

アリシアの友人なんだし、当然だよな。

「それは楽しみです」

「あたしもよ。あー、結婚式羨ましいわねぇ」

ぽつりと漏らしたシーフィさんに問いかける。

「……そういえば、シーフィさんとリガードさんの結婚式はまだ行わないんですか?」

この前、シーフィさんを助けるためとはいえ、二人の関係は一つ進んだと思う。

なんなら、結婚式をあげてもおかしくはない程度の関係ではあるのだが……俺の指摘にシーフィさんはむすっと僅かに頬を膨らませる。

あっ、この話はしないほうがよかったかも、と思ったがもう手遅れだ。

「それがねっ。あいつ、いまさら『あの話は別に結婚するためにしたわけじゃないし』とかいってその話をなかったことにしようとしているのよっ。信じられなくない!?」

やはり、つつかないほうがいい話題だったか。

リガードさんの態度はあまりにも想像しやすかったが、ここはシーフィさんに同意見だ。

「そ、そうですね……ま、まあ、結婚となるとやっぱり緊張しますし、リガードさんもそのうちその話をしてくれるんじゃないですか? ほら、跡継ぎの子については前向きでしたし」

跡継ぎの子の話題を出すと、シーフィさんはぼんっと顔を赤くする。

それまでの態度からは一変し、いじらしい表情を見せる。

「そ、それなら、いいんだけどね。どっちにしろ、あたしたちの結婚だとリガードが跡継ぎってこともあるから……フェイクたちの結婚式よりもさらに大掛かりというか……面倒なことになっちゃうのよねぇ」

「面倒なこと、ですか?」

「そ。たぶん、フェイクたちの結婚式に参加する貴族は親しい人たちくらいで、わいわいがやがやって感じになると思うけど……公爵家の跡継ぎの結婚ともなると……かなーり、堅苦しくなるのよねぇ。ほら、想像してみてもなんとなく分からない?」

「……まあ、そうですね」

堅苦しい、というのは決して悪いことではないと思うが、大変そうなのは想像できる。

「それに、この国では基本的に跡継ぎの結婚式が一番派手になるのよねぇ。……まあ、アリシアも公爵家の長女だしそこそこの規模にはなると思うけどね」

俺は大丈夫か、と思っていたが最後にはきっちりと釘をさしてくる。

……結婚する上で俺が一番不安に感じているのはそこなんだよな。

アリシアに言い寄ってきた男性や、見合いの話は今までにもあっただろう。

結婚式にはもしかしたらそういう人たちだってくるかもしれない。

バーナスト家の人たちは認めてくれたが、やはり貴族と平民の結婚に思うところがある人たちもいるはずだ。

大丈夫だろうか。

「……そこが結構不安です。平民と貴族の結婚って多いものなんですかね?」

よくあることならば、皆の態度も柔らかなものになるはずだ。

俺の期待を込めた質問を、シーフィさんは首を横に振って否定する。

「多くは、ないわね」

「そうですよね……」

分かっていたことではあるが、仕方ない。

「でも、まったくないわけでもないわ。特に戦乱の時代なんかは、戦果をあげた人が貴族と結婚なんてのはよくあったみたいだし」

「それは、分かりやすい戦果があるからいいですけど、俺ってアピール難しくないですかね?」

「でも、エスレア魔鉄の加工をしたこともあるでしょ? それで街を救ったことだってあるじゃない」

「それは……戦果としてアピールしてもいいんですかね?」

結局魔物を倒したのは俺じゃないし。

「いいに決まってるでしょ。あたしだって、フェイクへの認識はそれが一番強かったんだからね。結構フェイクの噂は広まっていたのよ? バーナスト家に優秀な鍛冶師が入ったって」

「……そうなんですね」

「たぶん、ゴーラル様はそういうことも考えて噂話を流しているんだと思うわよ? できる限り、フェイクの評価を高めるためにね」

「それは……改めて感謝しないとですね」

俺がそういったところで、シーフィさんが笑顔を浮かべる。

「でも、まだ時間はあるんだし、それまでに準備すればいいんじゃない?」

「そうですね。できる限り多くの人に認められるように、頑張ります」

結婚式会場に来るであろう貴族の方々に幻滅されないようにしないとな……。