軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

86.道路の改良

街の中を一通り石の道に作り替えたあと、街の外にもそれを延ばすことにした。

むしろ、こっちの方が大事だと思った。

『どうした、やけに真剣ではないか。街の道を敷設している時よりよっぽど』

気になったラードーンが聞いてきた。

まわりに別の人間がいない時、ラードーンは前以上の頻度で話しかけてくるようになった。

彼女が少女の姿で俺の前に姿を見せるようになってから、明らかに頻度が上がったように感じる。

「街道の方が大事だからな」

『ほう?』

ラードーンの返事の語気に、称賛が混ざっていた。

『貴族の五男がそのような勉強をしていたとはな』

「むかし――」

俺は「住んでいた」という言葉を飲み込んで、代わりに

「――立ち寄った村でこんな事があったんだ。その村には定期的に訪れる行商人がいた。だがある日、いつもの予定をすぎても行商人は現われなかった」

『人語を解する狼にでも襲われたか?』

「そんな大層な話じゃない。村から半日くらいいったところで、行商人の荷馬車が道にできた穴にはまってたんだ」

『ふむ』

若干「つまらない」って感じでの返事をしてくるラードーン。

「その時は村人総出で、その行商人の荷馬車を穴から救出した。もうちょっと場所が悪かったら、荷物どころか馬車ごと諦めるハメになってたらしい」

『人間とは不便なものだ』

「だから、街の道路も重要だが、他の街、他の国と結ぶ道路の方が大事だと思ったんだ」

『うむ。それは正しい』

ラードーンに褒められながら、俺は石の道を延ばしていく。

ノーム召喚できっちり深く掘って、ギガースやヴァンパイア達、更に動員させた住人達に、岩を割ったり運んでもらったりして、掘ったのを埋めていく。

一通り埋めると、今度はサラマンダーで溶かして、平らにならして冷ます。

それを延々と続ける。

作りながら、その都度石の道を踏みしめる。

この石の道なら穴ができる事はないだろう。

よほど意図的に破壊されでもしない限り、はまるほどの大穴にはならない。

それをはっきりと確信してから、俺は更に道路の舗装に集中した。

途中から、これのきっかけはジャミールに対してのアリバイ作りだという事も忘れて、道を舗装し続けていた。

早朝から始まったそれが、昼くらいになると――懐いてるスライム二体が側にやってきた。

「りあむさま、りあむさま」

「きゅうけい、しよ」

みょんみょんと跳んで来た二体は、頭に器用に、バスケットと水筒をそれぞれ載せていた。

それを乗せて跳ね回ってもちっとも落ちるそぶりはない。ちょっと面白い。

「どうしたんだそれは」

「じょでーがつくった」

「りあむさまのおべんとう」

「へえ」

ジョディが作った弁当か。

それだけで美味しそうだった。

俺はお言葉に甘えて、一休みしようと手を伸ばしかけた――その時。

びくっと手が止った。

手を差し出したまま、スラルンとスラポンをじっとみつめる。

「りあむさま?」

「おなかすいてないの?」

二体の愛らしい顔の表情が変わった。

体に直接顔があるというスライムの姿だが、一目で「首をかしげている」とわかる、そんな表情。

俺は更にそんな二体を見つめた。

「……そうか、このままじゃだめだった」

『ふむ? どういうことだ?』

「スラルン、スラポン。後で食べる、そのまま持ってて」

「わかった」

「すらぽんここでまってる」

二体を待たせて、俺は一度引き返した。

舗装を終わらせて、完成した石の道を見つめる。

踏みしめて、観察する。

「やっぱりか……まあそうだよな」

『いったいどうしたというのだ?』

「このままじゃダメなんだって今気づいた。スラルンとスラポンのおかげで」

『どういう事だ?』

「実物を見てもらった方が早い」

『……ふむ』

ラードーンがそれにひとまず納得してくれた。

俺はサラマンダーとノームを召喚した。

まず、サラマンダーで舗装したばかりの道路、その表面を十センチくらい溶かす。

そして、ノームに命じて、形を整えてもらう。

「……よし。次は……アイテムボックス」

今度はアイテムボックスを呼び出して、適当に水をだした。

出した水を、道路にぶちまけた。

いま直したところと、直してないところ、両方だ。

「……よし」

『ほう、水はけか』

「そう、もともと舗装をやり出したのはスラルンとスラポンが汚れてるからだっただろ? 道のあっちこっちがぬかるんでたから」

『うむ、そうだったな』

「それでスラルンとスラポンをみて思い出したんだ。道路の表面を真っ平らにしたけど、それじゃ水はけが悪い。道路って、人が普通に通る真ん中から少しずつすり減っていく、石だろうがそれは変わらないはずだ。真っ平らにすると、そのうち水がたまる」

『なるほど、それでこっちか――』

ラードーンの意識が、新しく舗装し直した部分に向けられた。

やり直したところにぶっかけた水は両脇に はけて(、、、) 、最初の真っ平らのところははけたりはけなかったりしている。

『素晴らしい発想だ』

ラードーンに褒められて、俺はとりあえず、舗装した分も、水はけが良くなるようにやり直すことにした。