軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

66.不死者の消滅

「後は、ここでお前を倒せば解決だ」

俺がそう宣言すると、ドラキュラは「ふっ」と笑った。

「私を倒す――果たして出来るかな」

「やって見れば分かる。念のために聞くけど……共存は考えてない――よな?」

「無論だ。全ての劣等種を喰らい尽くすまで、誰にも私を止める事は出来ぬ」

「そうか」

深呼吸して、憧れの歌姫達の名前を拝借した詠唱をする。

パワーミサイル19連を放った。

19発の魔力弾が一斉に飛んでいく。

ドラキュラは優雅なたたずまいを崩さないまま、パパパパパ――と魔力弾を次々と弾き飛ばした。

空中でなにかとぶつかって、はじかれて消滅する魔力弾。

ドラキュラが何をしたのかまったく見えなかった。

次の瞬間――殺気。

背筋が凍るほどの殺気が背中から伝わってきた。

「――っ!」

とっさの反応で、短距離テレポート。

立っている場所から二十メートル離れた場所にワープする。

俺が立っていた所を見ると、背後にいつの間にかドラキュラが回っていて、鋭い爪を俺の背中から腹に向かって貫通するように突き出していた。

「やっかいだな、その魔法は」

「アメリア・エミリア・クラウディア」

二種類の魔法を同時に詠唱した。

テレポートと、ホーリーランス。

9回、テレポートして。

9回、あらゆる方角からホーリーランスを放つ。

全方位からの聖なる槍がドラキュラに迫る。

――ドラキュラは二本まで防げたが、残りの七本がその体を貫いた。

内の一本に至っては、ドラキュラの右腕を肘ごとズバッと切りおとした。

「やったか!」

手応えを感じながら叫ぶ――が、次の瞬間目を疑う光景が目の前に起きた。

ホーリーランスが貫いた体は霧と化し、その霧が元の肉体に再結成した。

切り落とされた腕も、切断面の両方が霧化して、元のままくっついた。

肉体が再生した。

驚く事に、ドラキュラが纏っている、高貴そうな貴族の服も、何事もなかったかのように復元していた。

「つぎはこちらから行くぞ」

「くっ!」

ドラキュラは更に霧化した。

一部じゃなく、全身が霧になって、こっちに迫ってきた。

テレポートでよける――が。

それを先読みされたかのように、背中に霧が現われ、ガッチリ肩をつかんだ。

そして――首筋に噛みついてくる。

「――幻影!」

とっさに魔法を発動。

契約召喚:リアム。

自分の幻影を呼び出した。

背後にすぅ、とにじみ出るように召喚された俺の幻影に、ドラキュラが噛みついた。

噛みついている間に、つかまれてる腕を振り払って、距離を取る。

「ぐ、ぐああああああ!?」

俺の幻影が苦しみだした。

健康的だった肌の色がみるみるうちに青ざめていき、目から光が失って、牙が生えてくる。

俺の幻影が、吸血鬼化している!

「解除!」

ぽわん、と音を立てて、俺の幻影が消えた。

「ほう、なかなか多彩に魔法を使いこなす少年だ」

ドラキュラは感心していた。

俺は再びしかけた。

切り札は残っている。

ガーディアン・ラードーンの魔導戦鎧だ。

それを纏えば、瞬間火力はざっと三倍近くまであがる。

だから、それをつかうために、効果的にダメージを与える手段をまず見つけなきゃならない。

あれを使えば、俺は一瞬でガス欠に追い込まれる。

最後の切り札。

確実に決められると分かる様にならないと使ってはいけない。

通常の力押しは多分だめだろうと感じた俺は、詠唱無しの十七連で、様々な魔法を撃ってみた。

ファイヤボールやアイスニードルなど。

覚えている100を越えている魔法の中から、攻撃魔法をとにかくドラキュラに打ち続けた。

中には効くものもあった。

炎が肌をやき、岩の槍が貫いて骨が見える事もあった。

だが、それらのダメージは全て、霧化による再生で実質無効化されてしまう。

「無駄だ、私は不死身なのだよ」

「……」

「私は、この世の理から外れたる存在。命はなく、故に死も存在しない」

「命は……ない?」

「そのとおりだ」

ドラキュラはそういって、自分の腕を斬り落とした。

切断面は人間のものと変わらなかったが、血は一滴も出なかった。

「この体はただのよりしろだ。空気中に漂っている『命』を吸い取って動くためのもの」

「……」

「私は生きてはいない。しかしこの世界に命が有る限り、私は不滅。攻撃をいくらしてこようが無駄なのだよ」

「生きて……いない」

その言葉を舌の上に転がし、吟味する。

「安心しろ、その絶望も、わが眷属になれば跡形もなく消え去る」

ゆらりと、とドラキュラの姿が消えた。

今までに何度も見た、超高速移動だ。

次の瞬間、ドラキュラは俺のすぐ目の前に現われ、額をわしづかみにした。

口を開けて、鋭い牙を見せつけるようにして噛みついてくる――

「――ダストボックス!」

魔法をとっさに唱える。

箱が現われ――ドラキュラを吸い込んだ!

アイテムボックス同様、生命体以外のものを吸い込むダストボックス。

違うのは、箱の中で時間が経過する事。

そして、吸い込めないからこそ、箱の中にはあらゆる「生命」が存在しない。

アイテムボックスも、ダストボックスも。

出し入れできるのは術者である俺だけだ。

アイテムボックスと同じように、リストがあって、それに「ドラキュラ 一体」とある。

俺はダストボックスを出したまま、まった。

リアルの一時間が、ボックス内では一年経過する。

だから、まった。

十時間(十年) たった段階で、リストが「ドラキュラ(仮死) 一体」と変わった。

俺はこの時点で勝利を確信した。

そして、その通りになった。

五日ちょっと、百時間を越えた辺りで、リストがまっさらの――何も無い状態になって。

取り込める「生命」がないドラキュラは、跡形もなく消え去ったのである。